目を開けてみる夢 -プロローグに参戦 3-

入場時にもらった透明のブレスレッドは電源を入れると色がついて、何色かに切り替わるものでした。
もう、既出ですが、これを入れたかった結弦さんは間に合わないかもよとスタッフさんに言われたようで、ちゃんとみんなの手元に届いて良かったなと。そしてその色を切り替えてやって欲しい曲をリクエストできるというものでした。

満席のアリーナに観客がつけたブレスレッドの光がキラキラとしてて、まるで光の海の中にいるような感覚になるような感覚に陥るくらいに綺麗で。
この場でこの光の中に包まれる感覚はとても幻想的で、青と紫が多かったから、そこで選ばれた曲はLet's go crazy。
この日の衣装はそれじゃなかったけど、白衣装に驚いたり、紫衣装に度肝を抜かれてルマンドを買った日々を思い出しました。

一緒にその時間を過ごしてきたからプログラムそのものにも思い入れはあるのですけど、観戦仲間やTLで一緒にワイワイと楽しんだり、悔しがったり、彼の言葉の全てを捉えようとしていた記憶が鮮やかに蘇ってくる不思議な感覚でした。

これはある種の追体験なんだと納得している自分もいて。
ファンが彼と共に過ごしてきた競技者としての結弦をもう一度、感じさせてくれる時間。
あんなことも、こんなこともあったね。
いいことばっかりだけじゃなかったけど、どれもかけがえのない時間だったともう一度、教えてくれた気がして、胸がいっぱいでした。
大粒の涙が出たわけじゃなかったけれど、ずっと決壊寸前でした。

ビデオで彼の生き様を伝えるにはどうしたって震災のことは避けられなくて。確かにあの映像を見ることを辛いと思った人もいたかもしれないけれど、その記憶はずっと彼の中には薄れずに今もあって、あの時間があったからこそ今の彼があるというのもやはり一つの真実で。
私は震災があった時、まだ羽生結弦という存在を深く知りませんでした。
だから、私にとってはあの映像は必要で、あの痛みの中から立ち上がった白鳥の美しさをより感じることができたし、そこからロミジュリにつながっていく時間がそこに存在したことを再認識できて良かったと思いました。

あのロミジュリを見なければ、私の人生は全く違った世界だったから。
とんでもない若い選手がいる、とテレビに釘付けになったあの日の演技はそういう全ての背景がもたらしたものだったんだなと。

画面越しにあんなに感情が持っていかれるという初めての体験をしたのも今では懐かしい出来事です。
私の羽生結弦物語はあの日に始まった訳ですから。

多分、彼を応援しているたくさんの人にとって存在する「あの日」を引き出してくれる演出だったように思いました。

(つづく)

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