見出し画像

断章

おはようございます!むっちゃ眠い。目をかっぴらいて、それから書く、今日は目を閉じても眠れない。とても窮屈だ、そろそろ立ち上がってもいい。立ち上がるか。

あぶねー。隣の車両に乗り移ろうとしたら秒速でドア閉められた。あ、これだめだと思いながらも体は動き続けていて、半分くらい閉まった、もはや肩幅は通りきらないくらいのドアに両手を差し込む。手の甲がドアに触れたあたりでドアはふたたび開く。ずいぶん必死な顔をしていた、乗ろうと必死だったのではない、こんなに早いの、ドアが閉まるの、とびっくりしたままことは終わった。乗り換えが盛んな駅でしかこの動きをやってはいけないのか、出て、二つ隣のドアから入るくらいなら終電とかそのくらいの時間の電車じゃなきゃできると思っていた。まあなんとか乗れた。この次のでも間に合っただろうけど、こっちのほうが楽だった。

今日と明日は出勤。そして今日がより大事な日。明日になったらそうではないかもしれない。ただ今日が大事だというのは、イベントがあるからそう言っている。あっくんへの借金の返済だ、そのフィナーレがもう目前に迫っている。24万円、去年の4月だか5月に借りた。2年経つ前に返し切れるとは思わなかった、少なくともアルバイトをしているあいだに返し切ろうとは、当初思っていなかった。思えなかった。いまはむしろ、というかむしろとかではなく、これが乗り切れたんであればアルバイトでできないことはないのだと思っている。今後使うお金が増えようがそれだけは変わらないような気がする。やることは一緒だと信じることができる。もうやり方がわかったから、具体的な不安に対処していけば大丈夫、応急処置の連続にみえて、僕は保存療法と緊急手術を8:2くらいの割合で使い分けているのである。

鼻毛が出ているような気がする。昨日長いのは切ったつもりだったんだけど。もう、指を折り曲げて、第二関節のところでぐっと鼻の穴を何度かおさえてやる。鼻をほじっている、と形容できるくらいにはしっかり鼻の穴に指は入っているから、電車内で鼻をほじっても平気なやつに僕は今なっている。でも気になるから。だいたい出てないんだけど、いや分からない、バイト中に出ている気がして隙をみて抑えたりしつつ休憩まで乗り切って、昼休憩なり鼻かんできます!とかいって後ろに下がったとき鏡をみて、鼻毛が出ていたことはない。抑えたら案外すなおに引き下がってくれるのが鼻毛でもある。それでも絶対的な長さというものがあって、それは定期的に切っておいてあげないとどんどんその場その場での処置の難易度はあがるし、出ているんじゃないかという不安はより冷気を帯びる、冷や汗が出る。鼻毛であまり冷や汗は出ないか、うわー、と色々なことを考えるがもう覚えていない。

眠いが息苦しくはない。決死の乗り換え作戦は全局面において成功といえそうである。一度も決死のものと意識したことはなかったが、振り返ってみればなかなかに健気で、おかしな出来事だった。最後に一度鼻毛をおさえて駅に着く。

腹が冷えるからコートのボタンを閉める。そういえばちゃんと鼻毛ようではないが小さなハサミは持ち歩いているから、鼻毛ようのはさみは失くしてしまったが裁縫ようの鋏をいま鼻毛ようにポーチに入れている、電車さえ乗り切ればあとからなんとでもなったのだと気づく。電車内でも誰が鼻毛に気がつくほど顔を覗き込んでくるわけでもない、偶然にしてはできすぎなほどドラマチックに目と目が合うことはよくあるが、それだけだ。第一そんな度胸があるやつがいたら、友達になるかまっさきに逃げたほうがいい。難しい判断になる。

寒いが、息は思ったほど白くはならない。信号に引っかかる。高ーい街灯がある。すーっと、上に向かって若干細くなっていく柱の上に甲虫の羽みたいな半球がついている。僕はあのフォルムがけっこう好きだ、特にあれを絵に描くときにそう思う。手数が極端に少ないのだ、あれを絵にするための。すーっと力みすぎずに上から下へ、ときに下から上へまっすぐ、別にまっすぐでなくてもいいという気持ちで線を引き、そのうえに、円をかいてやろうとすると途端につまらない絵になるから、なるべく点に近いようなかき方でかく。あるいは極めて短い、横方向の線をかく。それだけであの街灯をかくことができる。かくことができるのはあの街灯だけだけど、僕はそれをどこにでもかいていい。他の街灯だということにならなくてもいい。

書きます。今日は15時で終わりとかなんとか聞いている。寒いので日向を追いかけるかたちで居所を移ろってなんとかしている。昼休憩はあと15分くらい。休憩に戻ればあと4時間ほどの勤務だ、そう聞くとそこそこ長いようにもみえるが15時退勤なんてもう絶対短く感じるから。なんなら日によってはこれからピークに入っていくかな?今はちょっと落ち着いてるけどホットコーヒーのストック作っておこうかな?とびびっているあたりだったり、まさにレジ前に人が連なっているのと同時にさばききらない伝票もお渡し口まえに連なっていたりするあの時間に、僕は退勤する。4時でもあかるいのだ、3時なんてまだ昼だろう。休日はそう思ってそのへんの時刻を過ごしているような気もする。5時を目前にしてようやく、いまが夕方から夜にかけての時間で、ここまでしばらく夕方だったんだと受け入れることができる、昼から夜の間というのは曖昧だ。朝から昼も曖昧だが、あれは昼飯を食った時点で昼になる。あんまり昼を前倒しにするとおかしな体調になるから、11時になるまでは昼飯を食わないよう、休日は心がける。コーヒーを飲んだり、甘いものを少しだけ食べたり、妹用の弁当を作るついでに作ってもらったおにぎりだけ食べるとかして。マンションと、僕が働いていは商業施設のあいだにある空を見て、ようやくキタニタツヤの今も青はすんでいる、の意味がわかった。これであっているかなと歌詞を検索したら今でも青はすんでいる、で思ったより分かりやすいように書かれていた。しかも青が棲んでいると青は澄んでいるちゃんと言葉として、漢字も用いて使い分けられている。そうか青春の、というかあのときみた青の色はなにがあっても変わらないもんな、と澄んでいるとだけ書かれた文章を解釈したような気になっていたが、まあ別にいいのか、その必要がなかったわけでもない。ぼんやり、なんだこの歌詞わけわかんねえな、なんていってんだ、なにをいってんだ、のまま胸に留めて置く方が僕は好みだ、というかそれしか今はしない。ひょんとしたことから勝手にものの意味がわかった気になって、ここに書きたい。

おつかれさん、一月分アコム返済、このあとあっくんに返す用の35000円引き出し完了。ゆうちょに寄って、どうみてもアコムしかない二階建ての階段を駆け足で登る。一連の流れがスムーズすぎて、ちょっとバイト先に長居してしまったときと駅までの所要時間が大差なかった。いつも通りむじんくんが一台ぽつんとおいてあるあの部屋には、今度こそ誰かいそうだが誰もいないのだろうと本当にどちらかわからない状態でドアを押し込む。

しまった、もう体が慣れちゃって降りなくてもいいのに各駅停車から降りてしまった。今日急いで帰ったからなんだってんだ。なぜか今日はフルタイムから1時間短くて、7時スタートの15時終わり。涙の完済パーティのとの名を冠した地元でのイベント、内実はただそのへんの銭湯にいくだけのものだが、これが始まるのは20時前ごろ。あっくんが19:45くらいに迎えにきてくれるらしい。飯は先に済ませておこうと思うからそのゆとりだけ欲しいが、もちろん全く急いではいない。せっかく平井で座れたのに、あのままのんびり今日くらいは徒然なるままに書いていても良かったんじゃないか。快速も座れるやん。はあよかった。足がちょっと痛かったんだよね、まあ立って帰れと言われたらそうするんだけど、僕が息苦しい息苦しいとここに書いているときの苦しさに比べたらこんなの表面の表面、薄皮一枚をめぐる攻防にすぎない。そんなもんはいくらでも譲ってやる。

いつも通り僕はカードなし返済を選ぶ。結局、というかもともとアコムをリボ払いみたいな用途でも使おうなんて思っちゃいなかったが、たぶん返済時はカードがあったほうが名前、電話番号、名前の小さい文字、僕だったらュはなんでだかユって打たないと弾かれたりとか、単にあのATMの形をした機会にあんな量の入力をすることなんてそうないし毎度慣れたつもりで慣れない、つまりめんどくさい、といったこともいくらかなくなるのだろうが、作らなかった。だから今日も長々と、名前と苗字の間にこめじるしをいれたり平成11年5月云々を粛々と、多少は磨きがかかってきたような手つきで入力作業をしていると、この部屋に初めてが飛び込んできた。顔は確認していない。ん、んーっと何度か喉を鳴らしていたが、音の高さと柔らかさからして女性かな、と推測できた。さすがにそれで動揺することはなかった、びっくりはしたけど。その人は一度ここではなくて奥の部屋に行くんだよ、というそぶりをしたようにわき目には見えたが、そうではなく入り口の向かい側の壁に沿う形で、僕の作業が終わるのを待っているのだと、数秒経ってからわかった。まあ奥の部屋なんて新規でなにかしらの契約を交わすためのものだった気がするから、人が入ってきた時点で完全なる同志だなと8割がた確信はしていた。この部屋をいまからまっすぐ突っ切ります、と宣言されているかのような勢いとベクトルをその身体に感じたときは驚いた。でも結局僕と一緒だった。まあそうだろ。

返済額は思ったより少ないと先月計算し直したものより、さらに少ないようだった。アコムの利息の計算式が最後までよくわからないまま完済に至るのは名残惜しくもある。となるとどう返すのがよかったんだ、俺はどこでどう損をしていたのだ、とつぶさに調査するのはやめておく。

今日の詩3

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?