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【エッセイ】mono消しゴムを買っとけよ

当たり前に使っている物のよさって、気づかない。小学生から高校生までずっと使ってきた消しゴム。monoも使ったし、レーダーも使ったし、まとまるくんも使った。他にもいくらか使ったけれど、〇〇〇〇最安値! みたいな物は会社に入るまで使ったことはなかった。

学生にとって、受験生にとって、文房具は商売道具。大事な試験に臨むとあれば、使いやすいもの使い慣れたものを準備していくのが当たり前。弘法筆を選ばずというの、あれは嘘ですよ。大学受験を控えていた頃、疲れにくく書きやすいシャーペンと大きくてしっかり消える消しゴムと、楽に素早くマークシートを塗り潰せる鉛筆を忘れないでいることは非常に重要なことだった。
大学生以降、ボールペンや万年筆をメインに使うようになってからも同じだ。(筆者注:法学部はテストの解答にペン書きが指定されている)
疲れにくく書きやすい筆記用具は、やはり商売道具である。

というのに、だ。会社に入って驚いた。支給の文房具はどれも〇〇〇〇最安値の製品ばかり。比べればどんな鈍感な人でも気づく。芸能人格付けチェックに使えもしない安かろう悪かろうの品が溢れていた。
シャーペンの芯はものすごく脆い。折れまくる。こんなに折れて使えない部分が多いんじゃ普通以上に芯を消費してしまうので結局高くついているのではないかとすら思えてくる。
付箋の粘着力の弱さ。3M社のポストイットとはわけが違う。書類じゃなくモニタの周辺などに貼り付けるとよくわかる。徐々にずり落ちてくるので、付箋に書き出した3日以内にタスクを片づけるのにはちょうどいい。
ある時から、同じ商品でも注文時に色の指定ができなくなった。4色アソートだったはずの付箋のセットは、端から端までピンクしか入っていなくなり、疑問はピンク、その答えはブルーなどと色分けしていた資料のメモをどうしたもんかと悩むことになった。ちなみに、総務課から次回何色が届くかは開けてみてのお楽しみ。じゃかましいわ。
ホチキスの針、折れる、ジャムる。結構な確率で、2本同時に出ようとしてうまく打てずに紙に傷だけつけて中途半端に止まる。
この記事でも書いたけれど、修正テープは半年ほど経ったら下の文字が透けてくるんだから、驚くしかない。ここまでくると使いにくいというレベルではなく使い物にならないと言った方が正しいのではないか。

それでも社会人になって消しゴムを使う機会は減っていたから気づかなかった。〇〇〇〇最安値の消しゴムの使いにくさに。
あるとき、会議室のLAN線をぐるぐる巻きにして回収していたら、ころりと現れた落とし物のMONO消しゴム。ここは学校じゃない。名前が書いているわけでもない。この会議室はいろんな部署の人が使うから、本人が探しに戻って来なければこの消しゴムは誰のものかわからないままになる。数日その会議室に置きっぱなして誰も動かしている様子がなかったので、その消しゴムは私の引出しに出向してきた。
すいすいと、消してみて、最初の一回で気が付いた。消しやすい。力がいらない。何度も往復させなくていい。
〇〇最安値と、全然違う。まるで違う。これが消しゴム。あれはたまたま字が消える白いゴム。

安物買いの銭失いとはよく言うけれど、安物作りの銭失いの方が酷いものである。使い物にならないような安物を作って売って、一体社会に何の貢献ができるというのか。国中の事務職の仕事効率を下げて、国全体を更に貧しくさせているのではないか。ゴミみたいな商品を作るくらいなら何も作らない方がましですらないのか。大きな会社がまとめて買ってくれるだろう、安物を。その会社の中で、これじゃだめだ、自分が気持ちよく仕事できないと思った社員は自腹で文房具を買っている。会社としては経費が下がったように見えている。その会社は〇〇〇〇最安値商品を買い続けるだろう。社員がそれほど使っていないとしても。ゴミを買うのにお金を使っているのだと気づかずに買い続けるのだ。

ちなみに、〇〇〇〇でMONO消しゴムを買っても、小さなサイズならひとつ40円程度で買える。小学生でないのだから消しゴムをちぎって同僚にぶつけて消費する社員はいないだろうし、こっちを買ったって大した経費ではないだろうになぁとブツブツ思う日々である。

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