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6月号特集「コロナとスマートシティ」(前後編)

【ご挨拶】こんにちは、瀬下です。大変長らくお待たせいたしました。新体制を迎えて最初の座談会をお届けします。待ってくださった読者のみなさん、本当にありがとうございます……7月、8月分も急ぎ編集中です。一度購読停止された方も、これを機にまた読んでいたけたら嬉しいです。よろしくお願いします。既にお知らせしたように、瀬下は引き続き編集に関わっていますが、編集部・太田知也がお休みをいただいています。もちろん太田の代わりはほかにいませんが、新しい編集部の仲間として、スペキュラティブデザインやクリティカルデザイン、特にバイオ系の領域に強い青山新さん、さらに建築理論家でアルゴリズミックデザインや日本の都市・建築史に強い中村健太郎さんという、幅広い関心領域と専門知識を持つふたりに加入してもらいました。ふたりの力を借りて、国内外のオルタナティブなデザイン事例・言説について、テクノロジーやデザインドリブンのものからそれへの対抗的なものまでを紹介していきます。どうか、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

IoLTの世界

瀬下:さて、再出発1回目の特集は「コロナ禍と都市の新しいかたち」ですね。都市というテーマを今年はひたすら追いかけていますが、これまで見てきたようなケースがコロナ禍においてどのように変質しているか考えていきたいと思います。よろしくお願いします。

中村:読者の皆さん、はじめまして。建築や都市の理論を研究しています。中村です。よろしくお願いします。

青山:はじめまして。青山です。さっそくですが、まずはぼくから口火を切りたいと思います。ぼくは自己紹介的な意味も込めて、今回のテーマに絡めつつ、自分自身の研究とも近い、デザインとバイオに関する事例を紹介したいと思います。
The Internet of Living ThingsIoLTというコンセプトはご存知でしょうか。これは、全ての生物がインターネットに接続されている世界を意味しています。コロナは動物が感染を媒介しているという話がありましたよね。その真偽はともかく、人間が免疫を獲得していない動物由来の病原体に起因する感染爆発、いわゆる人獣共通感染症の勃発は現代社会において避けては通れない懸念になってきています。迅速な病原体の発見や感染経路の特定、高精度な治療の実現のためにあらゆる環境中の生体情報がセンシングされ続ける世界...... それがIoLTというわけです。
特に先のリンク先でも言及されている、個々のアクターの生体データを取得して、それを資源として感染モデルを立てるという発想などは、にわかにリアリティを帯びてきましたよね。ただ、結局人間を超えたすべての生物個体に関するデータを集めて分析するなんて計算資源を持ってるのはGAFAしかいないわけですが......。

瀬下:こういう議論が、特殊なプロダクトや特定の希少動物の保護というより、社会全体のための話としてなされるようになってきたと。まさにコロナ以降の話って感じですね……。

中村:どういうコンセプトかは理解できたのですが、具体的にこのコンセプトに近いプロダクトやサービスはありますか?

青山:たとえば、METRICHORというのがあります。これはOxford nanoporeが開発したMinIONと呼ばれるUSBサイズのポータブルゲノムシーケンサを使って、リアルタイムに生体データを取得し、それらをクラウド上で分析・管理するというサービスの構想です。今の所一番IoLTの世界観を表している事例かなと。

瀬下:すごいなあ。これまでだと監視社会批判という文脈が必ずついてきましたが、いまのような状況では意外とすんなり受け入れられるかもしれないですよね。

微生物による都市のデザイン

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