白い紙に白印刷をした話(+孔版印刷で工夫したこと)
先日作った同人誌の印刷でためになる体験をしたので、せっかくなのでメモを残します。
1.白い紙に白印刷をした話
原稿を描き終わり、表紙のデザインを決め、さてどんな紙に印刷してもらおうかと紙見本を眺めていたところ「ゆるチップ」というクラフト感のある可愛い紙に出会いました。
裏がグレーのボール紙で、細かいチリがはいっているランダム性も魅力です
白以外にも、そら、もも、つきetcと色展開があり、ネーミングの世界観もぴったり・・・
自分の描いた絵がほぼ青のワントーンだったため、せっかくなので“そら(水色)“にしようかなと紙見本と表紙絵を見比べてずいぶん悩んだのですが、どうも色相が紙のそれとマッチしない心配が大きく、真っ白な“ゆき“を選ぶことにしました。
ふとした思いつき
(以下すべてオンデマンドの話)
実はこの表紙、白い紙でありながら絵の部分に白印刷を重ねています。
オンデマンド印刷はCMYKのインクが載っている部分がテカテカと光ります。
それをマイナスと捉える人もいますが、せっかくなのでその仕様を利用したいと思ったのがきっかけです。
イラストが陶器調のため地の紙のあたたかみのあるクラフト感と、イラスト部分のツヤ感を対比させると面白いかもと考えましたが、CMYKだけで刷ると白色部分にインクが乗らないため地の紙が透けてしまいます。
つまりインクの盛りによるツヤ感が出ません。
そのため、陶器人形部分だけ白版を追加印刷してもらうことを目論みました。
(いわば白地強化+擬似ニス印刷…というのもおこがましいような貧乏思考です。)
「一見玄人っぽい考えだけど、その必要ある?」
コレ、自分でも何度も思いました。
知見もないし、うまくいくかもわからなかったので発注する時に若干の恥ずかしさすらありました。
印刷所からの電話
案の定、入稿した翌日に印刷所から電話がかかってきました。
「恐れ入りますが、データ名が日本語のため文字化けしていて解凍できません。」
(やってしまった・・・)
「それと、ゆるチップゆきに白印刷とありますが、表の白い紙ですよね?」
ここで私は自分が考えていることを口頭で説明したのですが、なにせ先方はデータを開けていないので、想像できる限りでの最大限親切な対応をしてくれました。
手元で実際に“ゆき“に白印刷をしている現物を確認してくれて、
「多少は紙に入っているチリが薄くなって(隠蔽性があり)いるが、狙った効果が見込めるかはわからない」旨の最終確認のメールまでしてくれました。
印刷費用を節約できることと、奇跡の仕上がりとを天秤にかけた結果
「白印刷ありでお願いします!」
と最後の依頼メールをし、出来上がりをドキドキしながら待つことにしました。
結果、そして印刷所の神対応
予定より1日早く本が届き、現物を見て
「やった〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!!いい感じだ!!!!!」と喜びましたが
これはただの儀式であり、果たして白印刷が本当に必要だったのかは最早自己満足の範疇、終わったこと、迷宮入りするはずでした。
しかし。
想定外の紙の束が段ボールに入っていることに気がつきました。
なんと、白印刷なしバージョンの印刷見本でした。
寄りの写真がうまく撮れずにもどかしいのですが、白版ありのものに比べて明るい色の部分はマットな質感、かつ紙のチリも透けている状態です。
これだけで驚くにはまだ早くて・・・
なんと、白版だけのバージョンも!
どうして印刷所がこんな対応をしてくれたのか意図はわかりません。
「白がなくてもある程度は表現できるよ〜」という助言なのかもしれないけれど、
この印刷見本のおかげで私は「白印刷を頼んでよかった!」と自分の選択を肯定する材料をもらえたような気分になり、とても嬉しかったです。
実はコレだけではまだ終わらなくて。
なんと、ほかのゆるチップに同じデータで印刷した見本も3枚つけてくれていました。本来はこういった色紙で効果を発揮するような仕様なので、わかりやすい見本としてつけてくれたのかもしれません・・・
さすがに、こういった大サービスができる余裕があるかは向う次第だとは思うので、今回のパターンは幸運と捉えていますが、
こちらの興味や疑問に対してこんなにも親切に返してくれる姿勢に惚れてしまって、この印刷所を応援したいなぁと思いました。
もも、つき、そらの印刷見本をA3サイズで手にして、さらにゆるチップへの興味も湧きました。
2.孔版印刷で工夫したこと
今回、中身の印刷を孔版印刷でお願いするにあたり、
どのくらい細かい線が再現可能なのか?グレーはどのように印刷されるのか?不安な部分が大きかったので事前に印刷サンプルを依頼しました。
(基本的には印刷所のサイトにある注意事項を読み込みました、紙送りで汚れやすい箇所や再現が得意な色幅など)
元データと比べることで、飛んでしまっている部分や、思ったよりもぼやけてしまった線の表現について予測をつけることができました。
紙の端にはグレースケールのベタも添えてみたので、本文の色塗りはコレを参考にできて助かりました。
大きな失敗はありませんでしたが、やはりインク色によってイメージとのズレが発生したり、次に活かしたい反省点も見つかったので、トライアンドエラーが楽しい印刷手法だな〜とやりがいを感じて満足です。
これからも色々悩んだりしながら、楽しくものづくりを続けていきたいと思いました。
印刷所 Editnetプリンテックさん
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