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No.09【配布前に先読み】もう1人のお母さんがここにいる

こんにちは。陰山です。
夏休みが終わり、9月に入ったところで暑さは変わらず…。
一体いつになったら秋が来るんだ…と思いきや、セミの声が聞こえないことに気づきます。
もしかしたらもう秋は目の前に来ているかもしれない、と感じた今日この頃です。

さて、お待ちかねの先読みです。
9月28日発行の世田谷十八番No.09では、和光幼稚園の3才児担任・藤田尚子さんのインタビューをお届けします。
私自身が昨年度まで幼稚園生だった息子と、今年度から幼稚園生となった娘の二児の母。
幼稚園に通わせる保護者、当事者として。また、私が一番尊敬する仕事である「保育者」の、とても興味深いお話を聞かせてもらいました。

園舎裏に広がる森。
山は想像よりも高く、見晴らしが良かった。

自然と共存する和光幼稚園

幼稚園と小学校が同じ敷地にある和光学園。
取材日は夏休み中ということもあって、子どもたちの姿はもちろんない。
身体中の水分が奪われるような暑い日であることは間違いないのだけど、
最初に案内されたのは園舎の裏にある生い茂った森。暑い…暑い…。
暑いんだけど、なんで藤田さんは涼しい顔をしているんだ…と思って辺りを見渡すと、
そこには小高く盛り上がった山があり、保護者の方たちが作ったという木製のテーブルやすべり台もある。

保護者の方たちが作ったすべり台は、大人も登れる頑丈な作り。滑ってみたけど怖かった!



大きな樹木のアーチのお陰で直射日光を浴びることもなく、なんとなくここの周りだけ暑さを凌げるような気もする。

コロナ禍以降、砂場で遊ぶ経験の少ない子どもたちが増え、幼稚園に入って恐る恐る砂や水に触れる様子を目撃することも少なくないそう。
藤田さんはできるだけ土や水、砂や草木など、自然と触れ合う機会を設けているとのこと。
毎日この森の中で過ごすうちに、藤田さんはこの溢れる自然から涼をとっているのかもしれない。


そんなことを考えていたら編集長が蚊に刺されているではないか!
でもさすがは保育のプロ。すかさずキンカンとムヒの両方を持ってきて「キンカンの匂いが苦手な子どももいるからね~」と一言。
どちらか好きな方を選べるように、選択肢を用意する…。インタビューが始まる前から藤田さんの細かい気配りを感じた一コマでした。

屋上には立派な畑も。ここで採れた野菜は子どもたちと食べるそう。見事なきゅうり!

決断する力、その決断を発信する力を作るために

好きな方を選べるように、というのは藤田さんの愛称である「ふじふじ」に通ずるものがあるかもしれない。
”少しでも子どもたちの身近な存在でいたい”という気持ちで、子どもたちに自ら「ふじふじって呼んでいいよ~!」と話したけれど、無理強いはしない。
それは子どもたち自身が決めること。
うーん。深い。

こちらはふじふじの教室。天井から吊るされたブランコは子どもたちに大人気。遊ぶだけでなく、順番を学べるのもこのブランコのすごいところ。

子育てをしていてもしていなくても、毎日何かしらの決断の連続だ。
今日はあれを食べよう。天気が悪いから洗濯は明日にしよう。ここまでやったら休憩にしよう、など。
ただ、大人は過去の経験からその決断を選ぶことができるけれど、子どもはそうはいかない。
答えにたどりつく一歩手前まで導いてあげないといけないし、場合によっては答えまで順を追って説明しないと理解してもらえない。
自分で考えて決断してほしいけれど、親の思う通りにいくことなんてほとんどないと言ってもいい。

どの教室も担任の先生と子どもたちが自由に作り上げる、園舎が丸ごと美術館のような感じ。
子どもたちの作品が生き生きとして、本当に素敵だった。


ふじふじのすごいところは、子どもたちが自分で考える土台、決断したものを安心して発信できる環境を作っているところ。

自分の考えを発信し、受け入れてもらうことで安心感が生まれる。
安心感が生まれると、また次も発信してもいいんだという自信が生まれる。
その小さな決断の積み重ねが成功体験となり、子どもたちが安心感や達成感を感じられるように、と強く意識されているように感じる。

忘れていたシンプルな夢

ふじふじの言葉の中で私が一番好きなのは
「子どもはみんな大きくなりたいと思っているから」という言葉。
稲妻に撃たれたと思うほど、私にとっては衝撃的な言葉だった。
一年生の息子は「早く大きくなりたい」が口癖だし、年少の娘は「大きくなりたい」とは口にしないものの、
自分のサイズ感にもどかしく感じているであろう場面をよく目にする。

かくいう私だって子どもの頃は大きくなりたかった。
牛乳をたくさん飲んだし、一日10時間は寝てた。笑っちゃうけど、中学を卒業するまでずっと大きくなりたいと思っていた。

大きくなってこうしたいとか、〇〇だから大きくなりたいとか、理由は何もない。とにかく「大きく」なりたい。
こんなにシンプルなことをどうして忘れていたんだろう…。と考える帰り道。
あの言葉を発せられるのは、ふじふじが本当に子どもたちと同じ目線で生活しているから、これに尽きる。

ふじふじの愛を目一杯受けて立派に育ったきゅうりたち。
子どもたちが大きく立派に成長することは言うまでもない

子どもの成長を願うのは親だけではない

私はどう頑張っても保育を仕事にすることはできない。子ども相手に本気で怒ることもあるし、何気ない一言に心を痛めることもあるし。
だからこそ、保育を仕事にする方全員を常に尊敬してはいたものの、ふじふじの言葉を聞いてからというもの、よりその思いが強くなった。

親は常に子どもの成長を、あわよくば少しでもその人生が幸せなものであるようにと願うもの。
自分の子だから当然と言ってしまえば当然だけど、保育の現場に立つ大人は皆、保護者の気持ちと同じように子どもの成長を見守ってくれる。
声に耳を傾け寄り添ってくれるし、無償の愛で包んでくれる。

いつも、私たちと同じように子どもの成長を願ってくれてありがとう。
今日も皆様のお陰で私の心は健康です。

和光幼稚園、3才児担任「ふじふじ」こと藤田尚子さんのインタビューを収録した「世田谷十八番」No.09の配布場所はこちら↓


世田谷十八番
世田谷に暮らす先達から十八番を見出し、次世代にお届けするインタビューマガジンです。もっと自分らしく生きるためのヒントを、先達の十八番から見出す活動をしています。
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