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品品喫茶譚第76回『京都 出町柳ゴゴ 奈良 奈良蔦屋書店』

先月、古本屋弐拾dBの発行している雑誌『雑居雑感』第三号の刊行に合わせて、奈良蔦屋書店で記念フェアが催されることになった。
棚には『雑居雑感』に加え、店主である藤井氏の著書『頁をめくる音で息をする』をはじめ、彼の選書も置かれた。のみならず、藤井氏と雑談ユニット「凡夜READING CLUB」を組む私もフェアの一角に著作を置いてもらうことになった。のみならず、二人が京都で茶をしばく際によく訪れる出町柳ゴゴのお豆さん、つまり珈琲豆もゴゴ店主の了承の元、置いてもらうことになった。のみならず、凡夜でイベントも催すことになって、これはいよいよ奈良蔦屋書店を我々が占拠じゃ、完全封鎖じゃ、と息巻いていたかどうかははっきりとしないにしても、かなりの御厚意で迎えられることとなった。

当日、それはそれは風の強い日じゃった。京都から電車をはしごしながら新大宮という駅に着くと、そのまま風の強い街を会場まで歩いた。
藤井氏と合流し、近くの複合施設みたいなところのフードコートで飯を食い、十六時より出張販売のある藤井氏の準備を手伝うような手伝っていないような素振りをしながら、行き場を失くしていると、蔦屋書店の中にあるスターバックスは長蛇の列、段々、外も暗くなってきて、もう一度、件の複合施設に行って、さっき藤井氏が食していたのと同じフライドポテトを注文し、しばしフードコートで憩った。私はポテトが好きである。
戻ると、イベント開始に近い時刻。なんとなく話すことを共有していたこともあって、本番は何度か敢行されている凡夜READING CLUBの中では一番受けが良く、このユニットも段々研ぎ澄まされてきたなと思った。
トークの後はライブだった。生音で静かな書店に響き渡るストロークと歌声といった感じで、またお客さんもスタッフさんも終始温かく聴いて下さったので、本当に楽しくやらせてもらった。


ところで前日、私は出町柳ゴゴに挨拶も兼ねて独りで茶をしばきに行ったのである。
普段からよく訪れているものの、店主と気安くしゃべったりはしない。
私は九年前くらいにここで『喫茶ボンボン』という曲のMVも撮らせていただいたことがあり、何度か挨拶もしているので、気楽に入っていったところ、店主から

「二十歳は越えていますか?」 

と聞かれ、激しく動揺し、思わずおもむろにマスクを下げてほうれい線を見せそうになったが、

「はい! もちろんです」

と、答え、いそいそと奥の席に座った。
ハムサンドと珈琲をいただき、店内には数人のお客さんと常連と思しき女性がいたが、まずは数人のお客さんから一人また一人と帰路につき、いよいよ常連さんが席を立ったので見ていると、すごい勢いでまた戻ってきて、雨が降るとか降ったとか言って、また座った。
ちょっとしてその方も帰られ、一人になったので、そろそろかと腰を上げ、会計時に恐る恐る名乗ってみる。ちゃんと分かっていて下さり、ほっとする。さて雨は降っていたのか、この後降ったのだったか。

イベント終了後、藤井氏と電車を待っていると、彼が不意に撮って載せた私の写真が非常にくたびれた顔をしており、またその老け込み具合が面白かったと見えて、ツイートが氏の投稿したほかのものよりややほんの少しだけ伸びていた。
次にゴゴに行った際にはその写真を見せれば年齢確認は早そうである。

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