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品品喫茶譚第88回『京都 茶の間 カレーは辛い』

今年、スケジュール帳を購わなかったことを結構な頻度で後悔している。
スマホを駆使してスケジュール管理しているわけでもないので、結局、細かい紙のメモを仕事机のところに阿呆のように貼りまくる、という愚行に及ぶことになってしまっている。しかも思いついたときにまたメモり、何度も同じようなことを書いて貼ってしまう。
しかし同じようなことを何度もメモることによって、そのスケジュールを都度確認できるという意味にもなっているかもしれず、結局良いのか悪いのか分からない。とにかく私はいまやらねばならないことがとても多く、頭がラりっている。そんなときは喫茶店に行くのがいい。そんなときでなくても喫茶店には行くのだが、ここぞとばかりに喫茶店に行く。

「茶の間」はよく行く喫茶店のひとつ。ここの名物はカレーである。
ビーフカレーとバターコーンカレーの二種類があり、もちろん辛さも選べる。私は大抵ビーフカレーで辛さは普通をチョイスする。
おいおい、辛さは普通かい!という突っ込みが虚空から聞こえてきたので補足するが、ここのカレーは結構辛いのである。私は齢を重ねるたびに辛さに対しての耐性が弱まってきていることを自覚しながら、ことさら辛いものを摂取したい気持ちばかり先立つことの多い気持ちになかなか折り合いをつけられないでいる。いつも中辛くらいが目の前をかすめるのだけれども、食えるはずがない。でも少しでも辛いのを食べてみたい、みたいな妥協の上で現実的に普通をチョイスしているのである。そして、ひーひー言いながら馬鹿のごとく汗をかきかきそれを食っている。
おいおい、もう見てらんねえよ。お前さん、もういっそマイルド(と言っても結構辛いよ)くらいにしたほうがいいんじゃねえか、というアドバイスが虚空から聞こえてくるが、もうよく分からない。
とにかく辛さは普通!これがいつもの私のチョイスである。
ちなみにルーのお代わりは一杯までは無料なのだが、私は頼んだことがない。元々、カレーをかき混ぜずに、極力セパレートしたまま食することの方が多いし、比率で言えばルーに対してライスが多い方が好きなのだ。ライスのほうを足したいときはある。
それにしてもカレーを食った後の珈琲の破壊的なうまさといったら。珈琲とカレーの組み合わせというものの理想形、味の向こう側、食のリトルコスモスである。

雨が降っている。ちょっと大丈夫かというくらいの路上駐車をしていた老夫妻が店を出る。妙に童顔の背広男は、どこか有名人風を吹かして愛想よく出ていったが誰だったのだろう。
路地を抜けて街を巡る。いまだにこの街のことが分からない。というか、いままでどの街のことも確かに掴んだことはない。街は生きているし、それだからこそ面白いのだろう。
猫がいる。競輪選手みたいな漕ぎ方でママチャリが北へ向かっていく。206、204、65、市バスが通る。
夕食はびっくりドンキーに行った。あのくそでかい木製のメニューって廃止されたんだって、とか言いながら、席に向かうとテーブルの上にあのくそでかい木製の奴が佇んでいるのが見えた。

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