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新婦が神父と逃げ出した ~雨と泪

「そんなに泣かなくていいよ、そばにいるよ。だから自分の足で歩こう」
そう君は言ってくれたのに、今日こんなふうにクリスマスの夜を一人寂しく過ごしているのはなぜ? なんで……?

同僚の結婚式に出て、突然新婦が来なくなったトンデモサプライズがあった日、アタシたちは出会った。
彼は当日チャペルで讃美歌を奏でるはずだったオルガニストだった。
髪の毛がジェルでベトベトに固められてとても清潔感があるようには見えなかったけれど、優しそうで憎らしくもある笑顔に惹かれた。
「新婦さん。――ウチの神父さんと駆け落ちしたらしいです」
雨が滴る喫煙所で教えてくれた。
本来、スタッフは喫煙所を使ってはいけないけれど、異常事態。カオスだったからアタシたちの出会いも許された。
「シンプ?」
「あ。あの。神にチカイマスカ、のほうです。ウィリアムズっていうんですけど」
「……そうですか」
新郎である同僚は泥人形のような顔をしてアタシたちに謝罪してくれたが、アタシにとってはどうでもよかった。
ご祝儀、カムバック、ハッピーくらい。

帰り道。駅前のカフェでそのオルガニストと再会して、なんやかんやで付き合うことになった。
それから2年。
大雨の日に、今度は彼が出ていった。仕事も知らない間に辞めていたらしい。アーメン。

アタシはたくさん泣いたけれど、翌日にはけろっとした顔で出勤した。例の同期は気まずさもあってか、数か月後には退職したが、アタシはもうここで勤続10年になった。

「そんなに泣かなくていいよ」

「泣いてないし、そんなに」


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