私たちはブルース
Netflixで始まった「私たちのブルース」がとんでもない。
まず最初、イ・ビョンホン、シン・ミナ、チャ・スンオン、キム・ウビン、ハン・ジミン、イ・ジョンウンって全員超主役の俳優を並べてなんじゃそら、と思った。
さらに、チェジュ島を舞台にして回によって主人公を変えながらオムニバスでって、一体どういうこと!?
きわめつけは脚本がノ・ヒギョンだ。
もう、その時点でとんでもないのが来るのはわかってる気がしたが、でもなんとなくこんな感じかな、なんて僭越にも予想して楽しみにしていた。
それが、はるかに飛び越えていた。
まだ2回までしか放送(配信)されてなく、「ハンスとウニ」という二人の男女の関係を描いているのだけれど、これが抉る。
ハンス役は個人的に「最高の愛」トッコジンのイメージが強いチャ・スンオン、どんな作品でも顔・性格の濃さが印象に残る彼が、今回はなんともいえない悲哀に満ちた役を演じている。
ウニは「パラサイト」で恐怖を植え付けられた、追い出される家政婦といえばわかりやすいか、桃アレルギーの人といえば思い浮かぶか、韓国ドラマにも出まくっているイ・ジョンウン。
この二人の時を超えた切ない関係が極めている。
ハンスは高校卒業後、チェジュ島を出てソウルで銀行マンとして働いているのだが、転勤で(40過ぎ?)チェジュ島に支店長として戻ってくる。
ウニは高校卒業前に親が亡くなり、中退して働き出した。
二人は高校の同級生で、ウニの初恋の相手がハンスだったのだ。
その二人が、ハンスが島に戻ってきて再会し、色々あって修学旅行先にもう一度行くことになる。二人だけで。
ウニは本当に、名演とかそんな言葉では表現しきれない、こんな可愛い人がいるのか?というくらい、実らなかった初恋をずっと抱いて育んできた女性として存在している。
そんなウニのダダ漏れの気持ちを痛いほど感じつつも、全く違うことで追い詰められているハンスが利用して旅に誘う。
2話のラスト、フェリーのデッキでウニが自分の好きな曲を聴かせた。
二人はイヤホンを片方ずつつけて、繋がる。
嬉しそうに愛おしそうにハンスを見つめるウニ。
でも二人は違う時の中にいて……。そこで2話が終わる。
私も高校時代、島に住んでいて、フェリーで毎日高校に通っていた。
だからフェリーに乗って“友達として”旅行に出かける二人が、こんなにも切なく物哀しく、記憶をえぐってくるのかもしれないが、
もうそれぞれの表情を見ているだけで込み上げてくるものがある。
それにしてもこのイヤホン片耳ずつシーン、漫画や映画などで繰り返し見てきたけれど、どんどんワイヤレスになり、今後全く味気ないものになってしまうのかしら?
イヤホンで繋がり同じ曲を聴きながらも、高校の修学旅行と変わらぬ時に心があるウニと、結婚子育を経て、心を失いそうなほど追い詰められているハンス。
二人を乗せた海の青さが痛いほどにブルース、とそうかこういうことなんですね。と唸ってしまった。
ちなみに脚本のノ・ヒギョンは、あの「大丈夫、愛だ」の作家なのだが、今回の作品でもあの時と同じ、高校時代の自分、が同じ空間に存在している。
「大丈夫、愛だ」ではドギョンス演じる“別人格”と、お互いだけが存在を認め合っていたのだが、今回は、高校時代の自分だけが今の自分を見つめている、という構造だ。
今夜3話でハンスとウニを主人公としたストーリーが終わるということで、
どう決着してくのか、船の到着を待っている。
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