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引き際を間違えなくてよかった話


 勘が鈍けりゃ察しも悪く、二択で必ず間違えるような人生を送ってきたけど、これだけは正解だったなってことがある。

 4年ほど前、とにかく知らん人と話したくてたまらなくて、試しにすかいぷちゃんねる(掲示板形式で話し相手を募集するサイト)やってみるかって思い立った。

 平日の深夜0時とかに新しくスカイプアカウントもとって掲示板を物色し始めたら、なるほど色んな人がいた。私と同じく、社会で生きづらそうな人だらけだった。
 悩んだすえ、共通の趣味が有れば話がもつだろうと、アイマスに詳しそうな人にダメ元で連絡をとってみた。チャットでの挨拶もそこそこに「通話でもいいですか」って厚かましくきいたら二つ返事で快諾。数分後には通話が始まった。

 万が一出会い厨だったらやだなーというのは杞憂に終わり、関東でバーテンをやってるらしいその相手は愉快で話が上手く、なにより良い奴だった。そりゃそうだPだもの。
 アイマスの話から始まり、お絵かきの話、実体験の怖い話、メンヘラにストーカーされたらしい話とか。お互い悪いインターネットのノリだったので、掲示板の書き込みを鑑賞して笑い転げたりもした。
(「寝落ち通話しよ」と「人体改造に興味ある人おいで」っていう書き込みがめちゃくちゃ印象深い)

 日が昇って大分経った頃、時計を見たら開始から8時間も経っていた。「よかったらまた話そう。この界隈面白い人もいっぱいいるし」と言ってもらえて嬉しかった。
 でも掲示板鑑賞会でこの界隈の底と闇の深さをかんじて怖気付いてしまったのと、ここでは無傷のままではこれ以上良い人と出逢うことなんてできないだろうなという直感から、「よし辞めよう」と決めた。ここでの思い出を愉快なままで残しておきたかった。
 「こういう理由で、始めたばっかだけど引退します。アカウントも消します、すみません」と伝えると、相手は「英断だわ」って笑ってくれて、さよならした後にそのままアカウントを消した。人生で一番綺麗な引き際だったかもしれない。

 あの時の相手が今も日本のどこかで元気だったらいいなとおもう。