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今年もこの日、この場所で―BUCK-TICK『ABRACADABRA THE DAY IN QUESTION 2020』(随筆編)


はじめに


皆様こんにちは、せつなです。


今回は、BUCK-TICKが2020年12月29日に東京・日本武道館で行なったコンサート『ABRACADABRA THE DAY IN QUESTION 2020』について書こうと思います。

タイトルに随筆編とつけたのは、今回の記事はライブレポートよりも自分の記憶や感じたことを書き留めておきたいと思ったからです。
コンサートの内容にフォーカスした記事は次回上げられればと考えております。


※この記事には『ABRACADABRA THE DAY IN QUESTION 2020』の演出やセットリストなどのネタバレが含まれています。ご注意ください。




幕が上がるまでの葛藤


昨年の12月29日からちょうど一年ぶりの開催となった有観客でのコンサート。
私は現地に行って参加しました。


正直、この状況で東京に行くということにはどうしても不安がありました。
感染者数の拡大やGo Toトラベルの中止なども重なり、ギリギリまで本当に行っていいものか悩みました。

ですが、一年ぶりのコンサートであり12月29日という毎年恒例のコンサートを見届けたいという思いも強く、できる限りの感染防止対策をとって参加することを決めました。


29日が近づいてくるにつれて楽しみな気持ちも高まっていきましたが、自分にはあまり期待しないように言い聞かせていました。
というのも今年の2月、参加する予定だったコンサートが直前で中止になりかなりのショックを受けたことがあったからです。

現在の状況ではいつ中止になってもおかしくない。当日コンサートの幕が上がるまでは信じないようにしよう。
そう思っていないと、いざコンサートが行なえないとなったときに自分自身大きなダメージを負ってしまう。

そんなことを考えていたからか、当日になっても「今日がコンサートなんだ」という実感はほとんどありませんでした。
武道館へ向かう道中も。開場を待っている間も。


そんな中、公式Twitterでリハーサルなどの状況を教えてくださったり、ユータさんがブログをこまめに更新してくださったことで、コンサートの準備が着実に整っていることを知れたのはとても有難かったです。
そこでやっと実感が湧いてきました。
「この一年間、夢にまで見たコンサートに参加できるんだ」と。


入場時、検温や顔認証といった入念なコロナ対策が行われていて、去年までとは状況が何もかも変わってしまったんだな…と思いました。
気軽にコンサートに参加できていた頃が懐かしくて。
でも、こうやって対策をとりながらでもコンサートが開催できるようになったのも大きな進歩ですよね。
今後どうなっていくのかまだまだ先が見えませんが、少しずつでも希望が見えたらいいな…。


会場に入って席について、ようやくコンサートへの期待が高まってきました。
もうすぐ始まる。
どうか無事に幕が上がりますように、そして何事もなく終われますように。
開演を待つ私の気持ちは、ほとんど祈りに近いものでした。

そういえば、2年前の武道館の時にも同じようなことを思った気がします。
2018年12月29日、日本武道館。『TOUR No.0 -FINAL-』。
櫻井さんの急病からの復帰公演。
その日も私はあの場所にいました。
私にとって武道館は、約束の場所であり祈りの場所でもあります。


そしてついに場内が暗転し、コンサートの幕が上がりました。


コンサートってやっぱり楽しい


最初に流れてきたのは『THEME OF B-T』。
これまでのコンサートでも、印象的なアレンジで会場を沸かせてきました。
今回のアレンジはダイヤモンドがキラキラと輝くようなイメージのサウンド。
『ABRACADABRA』の世界観と『THE DAY IN QUESTION』のワクワク感が融合したオープニングに期待感が高まります。

そして、紗幕越しにメンバーの姿が見えて。
それだけですごくうれしかった。
元気でいてくれたこと、いま同じ場所で同じ時間を過ごしていること。
とても安心しました。


1曲目は『月の砂漠』。
本編はフィルムコンサートのセットリストを踏襲したもので。
全国を周った『ABRACADABRA ON SCREEN』ツアーのファイナル。
それが今回の武道館公演でした。

本来なら、『ABRACADABRA』を引っ提げて全国ツアーに出るはずだった。
そして、公演を重ねる毎に進化し、成長した楽曲たちと共に武道館のステージに立つはずだった。

しかしコロナ禍の影響でツアーの開催が難しくなり、代わりにフィルムコンサートツアーという形で『ABRACADABRA』の世界を全国に届けてくれた。

今回はいつもとは違うかたちにはなりましたが、武道館でフィルムコンサートの完成形を見せてくれたことがとてもうれしかったです。


また、今回印象的だったのが観客の拍手の音。
今回のコンサートは飛沫感染防止のため声が出せず、メンバーに何かを伝える手段は拍手だったり手を振ったりといったことに限られていました。
そのため、あの拍手の音には、コンサートを開催してくれたことへの感謝、会場の盛り上がり、熱量、愛…いろんな想いが乗っていたと思います。
曲が終わる毎に巻き起こる、割れんばかりの拍手。
それが会場の一体感を高め、観客とステージをつないでいました。


大好きなバンドのコンサートで大好きな曲を聴く。
今まではそれが当たり前のことのように思っていました。
でも、この状況になって、改めてそれがいかに貴重な時間だったか痛感しました。

そして同時に、コンサートという場所を、バンドもファンも一番に求めていたんだなということも感じました。
お互いが想いを伝え合い、つながる場所として、コンサートはとても大切なものだったんですね。


一曲演奏が終わる度に、櫻井さんが「ありがとう」と仰っていて。
私たちの「ありがとう」も、拍手の音と共に伝わっていればいいな、と思いました。


祭りのあと


楽しい時間はあっという間に過ぎ、気づけばアンコールも佳境に。

今回のアンコールの選曲は、どれも「未来」を感じさせるようなものでした。
先の見えない状況でも、BUCK-TICKは常に「未来」を見据えている。
それが本当に心強くて。
MCで櫻井さんが仰っていた「来年はたくさんコンサートができるようになったらいいなと思います」という言葉は、暗い世界に差す一筋の光のようで。

必ず、またどこかで会いましょう。
その約束があるだけでこれからも生きていける。
私にとってBUCK-TICKがいかに心の支えになっているか、どれほど救われているかということに改めて気づきました。


終演後ホテルへ向かう道のりで感じたのは、無事に終わって良かったという思いと、夢のように過ぎ去ってしまった祭りのあとの切なさでした。


ホテルに帰ってすぐ、公演のアーカイブ放送を観ました。
ついさっきまで参加していたコンサートの映像をすぐに観られるなんて、便利な時代になったものです。

ただ、映像を観ているうちに、さっきまでのことは全部夢だったんじゃないかという気になってきました。
私は本当にここにいたのだろうか?と。
というのも、コンサート中の記憶がほとんど飛んでしまっていて。
あるのは、「楽しかった」という漠然とした記憶だけ。
私は本当に観たのだろうか?聴いたのだろうか?
あれは幻だったのだろうか?



いや、違う。
だってこんなに腕が痛い。
夢のように過ぎた時間の中で、身体に残った筋肉痛だけがコンサートに行ったことを証明してくれているようでした。


おわりに


ということで、私にとって長く短かった2020年12月29日は無事に終わりを告げました。
この日コンサートの幕が上がったこと、何事もなく終えられたこと、本当に良かったです。


アーカイブ映像も、あれから何度も見返しています。
見返す度に少しずつ、あの場所にいたんだという実感が持てるようになってきました。
本当に素晴らしい、愛に溢れたコンサートに参加できたことがとても嬉しいです。


最後に、コロナ禍で先が見えない中、武道館公演の開催を決めてくださったことに心から感謝します。本当にありがとうございました。
どうかメンバーさん始め、スタッフの皆さん、会場に足を運んだ方たちなど、この公演に関わった全ての方がこれからも何事もなく過ごされますように。
そして、2021年は安心してコンサートが開催できる世の中になりますように。


コンサートの後に発表された秋の全国ツアー、そして一年後の武道館。
その時はまた笑顔で会いましょう。
それはバンドとファンを繋ぐ約束。

暗い闇の中で迷っても、BUCK-TICKからもらった約束があればきっと大丈夫。

だから。


「行こう!未来へと―――」


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