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★劇評★【舞台=バリーターク(2018)】

 「日常を繰り返すだけの何の変哲もない毎日」。よく充実していないことの象徴のように言われるそうした日々。しかしそれは人生そのものである。何も生きているだけで幸せじゃないかとか、日常の繰り返しの積み重ねによって人生はできているなどと身もふたもないことを言いたいわけではない。その日々の中にどんな意味を見つけるかが重要なのだ。そして、日常の外に非日常があるわけではないということも。草彅剛の3年ぶり出演となる舞台「バリーターク」は、そんな不可思議なこの世界の理(ことわり)を現代の寓話の中に落とし込み、日常から出発して最後には荘厳な真理にまでたどり着く衝撃的作品。迷宮の中に迷宮をつくり、もがき苦しみながらも最後には究極の突破口を見つけていくその物語世界が、新しい歩みを始めた草彅の姿と重なるとともに、かつて、つかこうへいの演出舞台で鍛えられるなど特別な意味を持つ舞台という場所はやはり草彅の戻って来るべき場所であったということを観客らに強く印象付ける舞台となった。演出はKAAT神奈川芸術劇場芸術監督で俳優の白井晃。(写真は舞台「バリーターク」とは関係ありません。イメージです)
 舞台「バリーターク」は4月14日~5月6日に横浜市のKAAT神奈川芸術劇場 <大スタジオ>で、5月12日~6月3日に東京・三軒茶屋のシアタートラムで、6月16~17日に兵庫県西宮市の兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホールで上演される。
 なお、本公演はKAAT神奈川芸術劇場(横浜)と世田谷パブリックシアター(東京・三軒茶屋)が共同制作・主催。

【注】草なぎの「なぎ」は弓ヘンに前の旧字体その下に刀。パソコンの機種によっては文字化けします。その場合はご注意ください

★舞台「バリーターク」公演情報
http://www.kaat.jp/d/Ballyturk

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