★劇評★【舞台=そして僕は途方に暮れる(2018)】

 ぐたぐたでぐずぐずで、ぐらぐら。すべての人や物事から逃げ続けた男が主人公の舞台「そして僕は途方に暮れる」は、突飛なケースを扱っているようでいて、その実、人生とは案外こういうものかもしれないという達観さえ連れて来る作品。そこがたまらなくアナーキーだ。人間の醜さや愚かしさを残酷なほど突き詰めてさらけ出す劇作家・演出家、三浦大輔の真骨頂であるとともに、主人公とともに哲学的な真理を見つけるためのさすらいの旅に出ているような不思議な感覚が観客を支配する。藤ヶ谷太輔、前田敦子、中尾明慶ら若手の感度の高い俳優たちが等身大の演技から出発しつつ、とんでもなく遠いところへ物語を運んでいく奮闘ぶりもあって、忘れがたい感覚を心の中に植え付けていく作品になった。演出も三浦大輔。
 舞台「そして僕は途方に暮れる」は3月6日~4月1日に東京・渋谷のBunkamuraシアターコクーンで、4月9~15日に大阪市の森ノ宮ピロティホールで上演された。

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