中心に立つ最も力強く、最もはかない存在…★劇評★【ミュージカル=Endless SHOCK(2018)】

 「どうやら永遠を目指して歩き始めたようだ」と昨年の劇評で書いたミュージカル「Endless SHOCK」。しかしその「永遠」は決して同じことの繰り返しでもたらされるものではない。果てしない新陳代謝と、重要部分を含めた見直し、気の遠くなるようなブラッシュアップによってもたらされるものだ。東京・帝国劇場で幕を開けた今年のミュージカル「Endless SHOCK」はそんなことを最も感じさせるものになっている。屋良朝幸や内博貴が長年務めてきたライバル役に今年は若手のホープ中山優馬を大抜擢し、植草克秀、前田美波里らのイメージが強いオーナー役には日本演劇界の至宝、久野綾希子を、主人公コウイチを慕うリカ役には既に映像界で確固たる位置を占めている瀧本美織を充て、数年ごとの変更は珍しくはないものの、一気に主要キャスト3人を変更するという新手に出てきた。しかしそれは浮ついた冒険や挑戦ではない。「Endless SHOCK」の世界をさらに広げるための覚悟の決まった改革なのである。そこで見えてきたものが何かは後程詳しく書くが、最も大きいのは、ライバル役の変化によって、コウイチ自身の苦悩がより鮮やかに浮かび上がってきたこと、そしてリカやライバルやカンパニーのみんながそれぞれの心の中で見せる成長が絡み合い、それが全体の求心力となって、芝居やダンス、パフォーマンスの熱量を押し上げていること。そしてその中心に、最も力強く、最もはかない存在であるコウイチという人物が確かに立っていること。それらのことどもが私たちの心を一層締め付けてくるという事実だ。
 ミュージカル「Endless SHOCK」は2月4日~3月31日に東京・丸の内の帝国劇場で上演された。

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