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天才の苦悩の本質に鋭く迫る新鋭、古川雄大…★劇評★【ミュージカル=モーツァルト!<古川雄大・生田絵梨花バージョン>(2018)】

 現代ではベートーヴェンと並ぶ音楽の巨人でありながら、名声が長続きせず、その生涯は苦悩に満ちたものになったヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト。特に天才的な作曲能力を持っていた幼少時の自分と、才能が枯渇していく青年期以降の自分がどう向き合うかは生涯の苦しみとなった。その「才能の権化」である幼いアマデを擬人化するなど、モーツァルトの苦しみの本質に最も鋭く迫ったウィーンミュージカルの傑作「モーツァルト!」が新たなキャストを加えて上演されている。当時の人々の無理解や、権力者たちの支配欲、音楽家たちの妬みによる妨害、父との確執、自身の浪費癖なども何重にもモーツァルトを苦しめ、才能に見合わない不遇の人生を送った孤独な魂の叫びは、3度目となる山崎育三郎だけでなく、初モーツァルトとなる古川雄大にもより鮮烈な形で受け継がれている。自由へと飛翔する翼とそれに絡みつく数々の鎖。その両面を見事に表現しつつある古川の底力には目を見開かされる思いがする。2回目のコンスタンツェとなる平野綾、初参加の木下晴香も含め、公演ごとのさらなる成長が楽しみな再演公演となっている。
 ミュージカル「モーツァルト!」は、5月26日~6月28日に東京・丸の内の帝国劇場で、7月5~18日に大阪市の梅田芸術劇場メインホールで、8月1~19日に名古屋市の御園座で上演される。

 ミュージカル「モーツァルト!」の劇評に関しては、「note」で既にミュージカル「モーツァルト!」<山崎育三郎・生田絵梨花バージョン>を掲載しています。併せてお楽しみください。(内容が一部重複しています)
★note劇評ミュージカル「モーツァルト!」<山崎育三郎・生田絵梨花バージョン>劇評=2018.06.01投稿
https://note.mu/sevenhearts/n/n95169b2548a9

★ミュージカル「モーツァルト!」公式サイト
http://www.tohostage.com/mozart/

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