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映画

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公開中の映画評、過去作とかもたまに書く。
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ハロプロファン歴半年の僕、映画『あの頃。』を飛行機で観て、むせび泣く。

まずは皆様、ご起立頂き、ご唱和ください・・・ 松浦亜弥さん!! 山﨑夢羽さん!! 石川梨華さん!! 藤本美貴さん!! ハロー!プロジェクトに関わるすべてのアイドルの皆様!! 生まれてきてくれてありがとうございます!!! そして、 つんく♂さん!! 生き抜いてくれて、ありがとうございます!!!(ギャン泣き) とまぁ、この世に存在するすべてのハロー!関係者たちに感謝を爆音で届けたくなるこの映画、『あの頃。』をついに観ましたよ。U-NEXTでね。 まったく関係ない話をし

【映画:PEARL パール】私をここから出して、それから愛して。

 この映画がなければ、前作の『X』(2022)はただのよくあるホラー映画として消えていったかもしれない。この世の続編映画は2種類しか存在しない。「産んでくれてありがとう!」という母の日のような続編映画と、「なぜ俺を産んだ…!!」というミュウツーのような続編映画だ。  わかりやすい例では、前者では『エイリアン2』や『ターミネーター2』などが挙げられ、後者では『エイリアン3』や『ターミネーター3』などが挙げられるだろう。  あ、ちょっと待って。もう一つありました。「誰も覚えて

【映画: Red Rocket】人生は近くから見ると悲劇だが、遠くから見れば喜劇である。(短め感想)

 故・立川談志の弟子、テレビでもよく見る立川志らく師匠が「談志の凄さ」について語る動画をいつだか見たことがある。その時に語られた談志の「落語とは何か」ということに関しての独自の見解が面白くて今でもそれが脳裏に染みついている。以下に引用しよう。  「人間の業の肯定」、この「業」という言葉の解釈だけで記事が一つ書けそうなので、ここでは一般的な意味合い、「人間の行為」と解釈してみましょう。談志師匠が言うには、落語とは「基本的にクズな人間を美化することなく、そのクズさをありのまま肯

【映画: The Whale】慈愛をもって救済に向かおう。平和はその後に続くから。

 ある少年リバー・ジュード・ボトムは、1970年8月23日に「神の子供たち」というカルト宗教の家に生まれた。両親が宣教師だったため幼い頃から宣教活動に協力し、南アメリカを転々としていた。  しかしそのカルトは幼児にすらセックスを推奨するような集団で、それに嫌気が差したボトム家は1977年にアメリカ合衆国に帰国し、それからは「再生」の意味を込めて、家族全体で「フェニックス=不死鳥」という本姓に変更。そこから彼はリバー・フェニックスと名乗ることになる。  彼は『スタンド・バイ

確かにあの頃、(ほぼ)僕ら全員の全てが、あの狭い校舎に詰まっていた。〜映画『少女は卒業しない』〜(ネタバレ)

 今でも『桐島、部活やめるってよ』を観た時の衝撃を覚えている。  朝井リョウ原作の小説を映画化した、『桐島、部活やめるってよ』(2012)を初めて観たのは大学2年の春。パンデミックの最中、何もすることがない自分はひたすらに映画を観ていた。その中でもこの映画は僕の中で強烈な印象を残している。  邦画に限って言うと、「高校生活」という題材は本当に描くのが難しいと思う。日本人のほとんど誰しもが経験し、そして人によって面白いほどにその捉え方が大きく異なるから。  それ故に、あま

『カモン カモン』/"対話"だけが世界を、未来を、そして家族を救う。(ネタバレほぼなし)

 アメリカの映画監督、マイク・ミルズの映画を観ると、いつも母親に会いたくなる。それは当然、彼が常に「家族」というものを主軸においた映画作りを徹底しているからだといえるが、ただそれだけではない。ミルズの作品は、親や子供、そして家族全体の本質をバシッとついてくるからだ。  どこの国にも家族がいる。誰しもが親を(生死を問わず)持つ。親に愛される子供もいれば、愛されない子供もいる。しかし、人は本質的には愛を求める生き物であるから、家族関係を「血縁関係を持つ人」と限定することなく、様

映画『ナイトメア・アリー』/神話のようなエンディング、今年一恐ろしい。

 僕が大学で学んで一番よかったことは、大好きな映画における、宗教や神話的な引用を理解することができるようになったことかもしれません。  当然、本作『ナイトメア・アリー』のように、一般層にも受け入れられうるエンターテインメント映画であれば、そのような背景知識がなくても、十分楽しめるようにはなっています(対して、本作にも出演しているルーニー・マーラが同じく出演している『マグダラのマリア』などはキリスト教に関する知識がなければ、理解が追い付かない部分があるとは思います)。  し

映画『抵抗 (レジスタンス) - 死刑囚の手記より』/これは映画ではなく、ある種、傍観である。

 『抵抗 (レジスタンス) - 死刑囚の手記より』(1956)は、フランスの映画監督であるロベール・ブレッソン監督の作品である。  以下、あらすじです。MOVIE WALKER PRESSより引用。  そう、こちらの作品、実話なのである。  第二次世界大戦時のドイツに占領されていたフランスのリヨンで、ある一人の男が監獄に捉えられていた。彼はフランスの諜報員で、橋を爆破した罪に問われていた。それがドイツ側からも認められてしまい、彼は死刑判決を下される。その執行前になんとか

映画『十二人の怒れる男』/部屋に充満する熱気、偏見、そして怒り。

 映画史に輝く、永遠の傑作。『十二人の怒れる男』(1957)を観ました。やはりとんでもない映画でした…  以下、あらすじです。Wikiより。  非常に優れた脚本と演技、そして演出でも有名な映画ではありますが、社会史的には、アメリカの陪審制度の是非を描いたものとしても認知されているっぽいです。  ところで、陪審制度とはなにかと言いますと、コトバンクによると「法律の専門家でない一般市民の中から選ばれた一定数の陪審員が審判に参加する制度」というもの。  この制度、アメリカで

映画『隣の影』/面白いけど、二度と観たくない映画きた~~;;

 アイスランド映画を見たのって、もしかしたらこれが初めてかもしれないです。これが初めてでよかったのだろうか…  観たぞ!『隣の影』(2017)!!以下はFilmarksより引用したあらすじです。意図的に一部だけ引用しています。  この映画はTwitterで誰かがおすすめしていて知ったんだけど、これがまぁとんでもない映画でしたよ。  今までいろいろサイコパスが出てくる映画とか見てきたけど、これはちょっと度肝を抜かれちまいましたね。  そもそも、なぜアイスランド映画の本作

映画『マイ・ジェネレーション』/可能性に満ちた「若さ」の街。

 ずーーーーーっと観たかった映画!!  『マイ・ジェネレーション』をついに観ました!!!  本作のあらすじです。(映画.comより引用)  「スウィンギング・ロンドン」というのは、「1960年代のロンドンで生まれた、新たな若者文化。音楽やファッション、映画やライフスタイル」のことを指す。ロンドンは60年代には、間違いなく世界で最もクールで、夢見る若者がこぞって集まった街だったのだ。  この映画はその時代を彩った複数の才能ある人物たちが登場する。聞き手・プレゼンターは、

映画『サムサッカー』/不良にもマザコンにもなれない、男の子たちに捧ぐ。

 映画『サムサッカー』(2005)(原題:Thumbsucker)を観たぞ!!以下あらすじです。Wikiより引用。  そもそもタイトルである「サムサッカー」ちゅうのは、英語で"Thumbsucker"、つまり「親指吸ってる奴」という意味なんですわ。  親指を吸ってる高校生は正直、ちょっと変。それはやっぱり親指を吸うのは普通は赤ん坊がやることだから。  だから主人公のジャスティンもそれをやめたい…というのは無理な話だったんです。だって彼は赤ん坊特有の素質をまだ持っていたか

ついに観た。超問題作、THE BATMANを語り尽くす。

 バットマンは紛れもなく、僕が世界で一番好きなヒーローである。  はじめて『ダークナイト』を観てから、僕の人生は「ダークナイト以前」と「ダークナイト以後」に分かれてしまった。それくらいの衝撃だった。  マーベルでは決して体感できないあの感じ。無頼派というべきか、決して他のヒーローの助けを借りようとしない(というかできない)バットマンは、あくまでチームとして立ち向かうマーベルヒーローたちとは、決定的に違っていた。  しかし、その後に誕生した、DCEUと呼ばれる、DCコミッ

シラノに見る、人間ができる最大の自己犠牲。【映画:『シラノ』評】

 映画『シラノ』、今日観てきましたよ~~!!  ミュージカルというか戯曲の名作だったんだよね、全然知らなかった。まだまだ知らない教養ばかりですわ、ほんとに。  エドモン・ロスタン作の本作は、初演が1897年12月28日にフランスのポルト・サン=マルタン座で行われた。  そもそも、この戯曲の主人公のシラノ・ド・ベルジュラックっていうのは、17世紀を生きた実在の人物で、剣術家であり、思想家であり、作家であった。映画にも登場した戦争で大けがを負ってからは、退役して作家に転向し