阿部巨人は高橋由伸の二の舞にならないか?という不安

悪夢の由伸巨人

と、単純にインパクトのある書き出しを持ってきたが、私は巨人を2016~2018の3年間を率いた高橋由伸監督の采配云々が悪いと言いたいわけではない。
そりゃ当時は村田真一ヘッドコーチを重用したり、ずっとメモを取っているところが抜かれる(ちなみにメモの内容は愚痴不満だったと後年語られている)など隙があったのは確かだが、由伸巨人の一番の問題は球団、チームがゴタゴタの中にいたことである。

おそらくは元をたどれば一場事件による上層部の一掃、清武の乱など2000年代の巨人フロントの騒動やトップの交代をずっと引きずっていたのだろう。
笠原らの野球賭博問題が起きて、さらに原監督という重鎮が去ったことで、GM、オーナー、球団代表のドタバタにとにかく現場が振り回されたのだ。

今回巨人を5年間率いた原監督が退任し、阿部慎之助監督が誕生したわけだが、果たしてその由伸巨人の二の舞にならないか?ということを由伸巨人の3年間を振り返り、お気持ち表明したい。

2016 ドタバタで引退、監督就任

では振り返ってみよう。
2015年に2位で終わった巨人はCSで原監督が電撃辞任(事実上の解任)となり、後任探しで揉めに揉めた。
当初は松井秀喜監督に動いたようだが失敗し、最終的に次シーズンも選手兼任コーチとして現役を送る予定だった高橋由伸を引退させて監督とした。原監督も由伸をいずれはと考えていたようだったが、あくまで先のつもりだったのだろう。今回のような引き継ぎはなく、空白の期間が生まれた。

中心人物は新しくGMとなった堤辰佳。読売新聞出身で、慶應大学の野球部と新監督高橋由伸の先輩という経歴である。

彼は「新しい巨人を」「若手の起用を進める」「すぐには世代交代できないから当分は外国人に助けてもらう」という方針をたて、2015年オフFAへの参戦は人的補償からの復帰となった脇谷のみであった。
外国人で補うというだけあって、野手はまずギャレット、クルーズを補強。さらに保険で西武を退団したアブレイユ、キューバからガルシアを獲得。アンダーソンもまだいた。投手はまだ衰えてないマシソン、前年ローテを支えたマイコラス、ポレダ、あとキューバから来たメンドーサ。独立リーグからガブリエルという投手も補強して10人体制でした。コロナ前だから一軍では4人しか使えないのですが。

シーズン前には阿部慎之助、村田修一、内海哲也らベテランに対して、「打てなきゃ若手を使う!」という方針を打ち出しました。
ここまで良さげじゃないですか?
しかしシーズンが始まるとこのプランは完全に崩壊します。

マイコラスが怪我、ポレダも不調&研究が進んでともに先発ローテとして機能せず、即戦力ドラフト1位だったはずの桜井俊貴もキャンプで故障。
先発ローテが早くも崩壊したのです。菅野、高木勇、今村、田口、杉内とかだったかな。
阿部に代わり四番ファーストとなったギャレットの一塁守備は酷く、ミスを連発。ガルシアは「まだ若い留学生」みたいな感じで来たのですが、なんか帰国途中で亡命しちゃいました。ちなみに2023年現在大谷とホームラン王を争ってるとか。

確か開幕ダッシュには成功しましたがおれよあれよと由伸巨人は前半最下位を争うチームとなりましたが、後半は復帰した阿部慎之助、内海哲也ら若手と争わせる予定だったベテランの力で、なんとかこの年から3連覇するカープに続く2位になれました。

2017 迷走

さて2016オフに渡辺恒雄氏は怒るわけです。「補強戦力がほとんど働いてない」「由伸が可哀想じゃねぇか」と。
そこで堤GMは若手を育てて新しい巨人を作るという方針を撤回。後に30億補強と呼ばれる大補強を展開します。FAで山口俊、陽岱鋼、森福。新外国人のマギー、カミネロ。トレードで未完の大器だった大田泰示を放出し数年前のMVP左腕吉川光夫を日本ハムから獲得。またドラフトでも、崩壊した先発ローテの反省から立て直すべく即戦力投手をたくさん取ります。畠、谷岡、池田、リャオなんかもいましたね。

しかしシリーズが始まると獲得した山口俊投手は暴力事件を起こし、トレードした大田泰示は日本ハムで大活躍。慌てた読売本社から「クルーズ上げろ、カミネロ下ろせ」という介入もあったりして、悪夢の13連敗。
その責任を取り堤辰佳GMは職を辞しました。

読売のGMとはサラリーマンなんです。勝たないと新聞が売れないという上の指示通りに動く。一般的には勝ちを優先する現場と先を見据えるフロント、観客動員なんかも絡めて折り合いをつけていくと思うんですが、巨人はまず勝たなきゃ親会社の利益が損なうという特別な事情があります。(甲子園球場へのアクセスを考えると、阪神もかな?)
そこに長期的視点は生まれません。

堤辰佳GMは就任当時の「メジャーでは出塁率が」「投手はボールの回転率が」などとインタビューで話していました。その記事はまだ残ってますから、ぜひ興味があれば探してみてください。

2018 もう諦めた

2017年はその後なんとか盛り返すも4位に終わり、「読売一生Bクラス!」とDeNAベイスターズファンに煽られました。許さん。
またこの頃になると選手を引退させられて監督になった由伸監督への労りなどはなく、ファンからも「メモ取り地蔵」「無能の客寄せパンダ」などと暴言を浴びせられます。

2017年は前年度に大失敗した敗戦処理というかGMは鹿取さんがやっていたのですが、補強は中日ドラゴンズからホームラン王ゲレーロを引き抜き(山口球団オーナーはなぜか中日ドラゴンズにたいしては異様な対抗心を示す)、西武から野上をFAで取るくらいでした。

前年度4位のチームから先発3本柱のマイコラスが抜けて、相も変わらず広島カープは強くて、村田を自由契約にするなど、もう優勝は諦めてて、捨てシーズンにするんだろうなという気配が開幕前からしていました。

ドラフトで即戦力野手を大量に取り、そのなかの3位オールドルーキー大城や4年目の岡本が大活躍したり、もちろん良いこともなかったわけではないですが、3位に終わり由伸監督は今回の原監督と同じく任期を残して辞任(事実上の解任)となり由伸巨人は終わりました。ファンからは三度目の原監督就任に対する不満の声は出てましたが、由伸監督を惜しむ声は、あまりなかったように思います。

阿部巨人と由伸巨人の共通点、違い


さてこうして振り返ると、私が由伸巨人をどう見てるのか分かると思います。
チームの舵取りをする立場のGMによるチーム作りが一貫せず、FA・ドラフト・トレードが行き当たりばったり。方針は読売上層部の指示でコロコロ変わる。

阿部巨人もこの読売新聞が上にいる体質は何も変わっていないわけです。

ただ原監督が元々第3次政権を「次につなげる」というミッションをもって始めたこと(由伸監督の末路へは思うところがあったのでしょう)。これまで阿部慎之助監督に二軍監督→ディフェンスコーチ→ヘッドコーチと経験を積ませてきた点。任期を残した解任を受け入れたことで、阿部新監督と吉村編成担当などどうも原辰徳の影響が前回より残るものとなっているのは由伸巨人との大きな違いです。

また新しい巨人はもう原監督が道筋をたてているのも前回の2015年との大きな違いです。野手は門脇、秋広、浅野。投手は戸郷、山崎、大勢といった25歳以下の面々が各重要ポジションにおり、あとは阿部巨人が好きに補強や配置転換でチームを作っていける選手層になっています。

このように前回が球団フロントによる原派の追放という形だったものに対して、今回は禅譲といった意味合いが強く、オーナーも原路線を尊重している。

由伸巨人と同じことにはならない、そう信じれるかな思いますね、

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