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【#青山学院】5年無期転換逃れの雇止め撤回を求めて青山学院を提訴!

 無期転換直前での雇止めに遭ったAさん(青山学院高等部非常勤講師)が私学教員ユニオンに加入し、雇止めの撤回を求め、青山学院(法人本部)と団体交渉を行ってきました。

 青山学院が雇止め撤回要求を拒絶したため、2024年3月21日、Aさんは、雇止め撤回を求めて東京地裁に提訴、同日、代理人弁護士や組合員とともに記者会見を行いました。
これまでの交渉の経緯は以下のブログをご参照ください。


◆なぜ私は裁判を起こしたのか


 私は、青山学院高等部で非常勤講師を5年間務めてきました。2023年12月、突然、電話1本で雇止めを通告され、生活の目途が立たない状態に追いやられてしまいました。あと1回契約が更新されると、無期労働契約に転換する権利を得ます。私の雇止めは、「無期転換ルール」適用前日での雇止めです。

 無期転換ルールとは、期間の定めのある雇用契約の労働者が反復更新されて通算5年を超えたときは、労働者の申込みによって、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換できるというものです。不安定な非正規雇用で働く労働者の保護のために作られた権利です。

厚労省HPの無期転換ルールの図


 私たちは、青山学院との団体交渉において、雇止めの撤回を要求しました。私は、同じ教科の専任教員から、非常勤講師の契約更新を5年上限とする学内ルール(不更新条項)が撤廃され、長期的に働ける環境だと言われており、それが記された業務上のメールも残っています。実際に5年間まったく同じ条件で働いており、私が契約更新の期待を抱く合理性が十分にあることを主張しました。また、そもそも人員整理の必要性がなく、雇止めの回避は可能なのに、なぜ雇止めを強行するのか問い質しました。

 それに対して青山学院は、非常勤講師の雇止めに関しては学校法人に「相当の裁量」が認められ、私の雇止めが不当・違法であるとは判断できないと主張しました。肝心の人員整理の必要性については説明が二転三転するなど曖昧な説明に終始し、雇止め撤回の要求を拒絶しました。

 ここで私には2つの選択肢がありました。1つは、青山学院が提示した解決金(半年分の給与)を受け取って和解すること、もう1つは、裁判を起こして司法の判断を仰ぐことです。 

 自分の生活のことだけを考えれば、解決金を受け取って、就職活動をする方がいいように思えました。でもそれでは、非常勤講師の雇止めに関して学校法人の広範な裁量を認めることになります。

 他方で、私の雇止めが無効であるという判断が裁判所で下されれば、その判断が元になって他の非正規教員の雇用に関してもいい影響を与えます。非正規教員の権利獲得を後押しできるのです。

 教育は人を育てる仕事です。そのためには、教員が長期的なビジョンをもつことが不可欠です。自分が次の年に同じ学校にいられるかどうか分からない。そもそも生活していけるかどうかさえ分からない。そういう状況で、熱意をもって教育に携わることができるでしょうか。

 青山学院は、団体交渉を受けた「回答書」(2024年2月27日)にて、次のように述べています。「2月19日の団交の際、A氏が言及した「長期的なビジョンが持ててこそ、その学校、生徒に対する熱意を持てる」という考え方は共感するところではありますが……非常勤講師の方は比較的短期間で契約終了となる場合もあると考えています」。 

 学校法人の経営を担う立場として当然とはいえ、教員が長期的なビジョンを持つことの重要性について労使で共有することができました。それならば、雇止めの不安を感じながら働く非正規教員の置かれている状況を改善し、長期的なビジョンを持って教育に携わる環境をつくることは、学校教育現場をよくすることにつながるはずです。こう考えて私は提訴に至りました。

 一緒に記者会見を行った代理人弁護士からは、訴訟の意義についてこう説明がありました。「非常勤講師の多くは原告のように複数の学校を掛け持ちしながら生計を立てている。非常勤講師は授業に不可欠な存在であるにもかかわらず、学校の都合で簡単に首を切られるという不安定な状況におかれている。その立場の弱さから声をあげることのできる非常勤講師は少ない。このような状況を変え、学校教育現場をより良くしていくために、非常勤講師の権利向上につながる司法判断を求めていく」。

◆非正規教員の増加と裁判の意義

 現在、教育業界全体で「非正規教員」が増加しています。公立学校では全体の約2割ほどですが、以下の図のように私立高校ではさらに多く、年々増加しすでに約4割(37,4%)が非正規教員となっています。

「学校基本調査」(文部科学省)から私立高校の非正規教員数を算出

 非正規教員は、低賃金かつ1年更新の細切れ契約で働き、「雇用の調整弁」として都合よく使い捨てられています。将来の見通しも立たない中では、目の前の生徒へ集中することもできず、教育の質の劣化にもつながっています。

 裁判での争点の一つが、青山学院による今回の雇止めに、私の無期転換申し込み権の発生を阻止する意図があったか否かという点です。私は、代理人弁護士とともに作成し、東京地裁に提出した訴状の中で、青山学院との労働契約が通算5年となりあと一回更新すれば無期転換申込権を得られる状況にあったこと、雇止め通告の際に次の次の年(2025年度)に再雇用の可能性があることを示唆されたこと、雇止めを回避することが可能であるにもかかわらず雇止めが強行されたこと等からすれば、青山学院には私の無期転換申込権の発生を阻止する意図があったと評価できると主張しています。

 この点について青山学院は、今回の雇止めに私の無期転換を阻止する意図はないと団体交渉では回答しています。

 教育業界全体で非正規教員が増加している現状に鑑みれば、非正規教員の無期転換を積極的に進めたり、非正規教員を正規化したりする労務管理を広めていくことが大切ではないでしょうか。 

 教員に限らず、今年も年度末で多くの非正規労働者が雇い止めされます。つい先日も、大手アウトドアメーカー「パタゴニア」が行っている、5年上限契約という「無期転換逃れ」の労務管理が問題となっています。非正規労働者の通算5年での雇止めは、事実上の「脱法行為」です。

 私たちは、青山学院のみならず、非正規労働者全体の待遇改善をめざし、世論の理解と支持を得るための取り組みも行
いながら、裁判をたたかっていきます。 オンライン署名も集めていますので、ぜひご協力ください。


◆記者会見に参加した組合員の声(1)

 私は現在、埼玉県のとある私学で非常勤講師として勤務しております。今年度でこの学園に5年目の勤務になり、当然来年度も勤務を続けるつもりでいましたが、昨年末、私には来年度の雇用継続の確認がありませんでした。

 私は無期転換直前の雇止めかと考え、人事担当に直接問い合わせをしましたが、曖昧な返信しかもらえず、12月末に突然「来年度はないかもしれない」という大変不安定な状態に置かれました。

 教員を消耗品のように扱う学園に一人で抗議してもまともに回答を得られないと考え、非正規雇用者でも一人から加入できる労働組合であるユニオンに加入し、団体交渉に臨みました。1月半ばの団体交渉で、学園からは、「生徒数の目途が立ったので、来年度も雇用を継続し、無期転換を受け入れる」との回答を得ました。

 青山学院では非常勤の先生に「長く勤めてほしい」と雇用継続の期待を持たせ、長期的ビジョンを持って現場で教育に情熱を注いできた先生を、その熱意を利用するだけ利用して、無期転換直前に電話1本で、「ありがとう、でも来年はありませんから」と、いとも簡単に切り捨てようとしています。団体交渉に参加し、無期転換逃れの雇止めではないかと私は思いました。このような卑劣なことが許されてよいのでしょうか。

 教育現場で非正規雇用の非常勤講師は、雇用の調整弁として扱われ、大変不安定な身分です。そしてこれと同じことは今日本全国で起きています。長期的な視野がなければ質の良い教育を行うことできません。この度の青山学院の対応は、教育の質を低下させ、社会の根幹を崩すことにつながる大変残念なものです。

 青山学院のような名のある教育機関が社会に与える影響を十分認識して、この無期転換直前の雇止めを直ちに撤回してください。

◆記者会見に参加した組合員の声(2)


 私は、東京都港区にある広尾学園で非常勤講師として勤務いたしております。広尾学園は、約半数が非正規教職員です。そして、毎年、20人程度の教職員が非正規教員を中心に入れ替わっている現状です。

 非正規教職員は、1年ごとの有期契約で不安定な労働環境の中で、働いています。また、非正規教職員の収入は、学校から求められる授業の持ちコマ数の増減によって、毎年変動するため、不安定です。

 中高一貫の私学の良さは、6年間という長いタイムスパーンで、生徒たちに対して教育活動を行っていけるところにあると私は思います。しかし、非正規教職員が増加したため、じっくりと継続的に生徒たちに寄り添って、育てていけるような教育の実現が困難となっています。

 青山学院においても、非正規教職員の雇止めや使い捨てを回避し、無期転換を図ることで、労働環境の安定と教育の質の向上を目指していけるよう、多くの皆様のご支援を賜りますようお願い申し上げます。


※なお、会見はメディアでも注目され、以下の報道がされています。
①Yahoo!ニュース記事(今野晴貴さん)「非常勤講師が青山学院を提訴! 「無期転換逃れ」の雇い止めか?」

②東京新聞「「ルール適用直前の露骨な雇い止めだ」…非常勤講師が青山学院を提訴」

(2024/3/22 朝刊3面 にも同様の記事が掲載)

◆教員の労働環境、生徒の教育環境を一緒に変えていきましょう

 私たち私学教員ユニオンでは、教員の労働環境・生徒への教育環境を変えたいという教員を募集しています。私たちは、学校や雇用形態の垣根を越えて、教育業界全体を変えるために活動しています。互いの学校の問題改善を互いに支援して取り組んでいます。
 
 また、私学教員の方以外でも、教員の働き方や生徒への教育環境の問題に関心を持ち、活動に関わってみたいという学生・教員のボランティアの方も募集しております。興味を持った方は下記の窓口までお気軽にご連絡ください。

電話番号 03-6804-7650
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