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僕たちは何のプロフェッショナルなのか。

放送業界から著名社員が退社することについて、立て続けに記事が出ています。

普段めったにテレビを観ないものだから、こういう人たちにどのくらい才能があるのか、正直よくわかっていません。

そんなテレビ離れしたボンクラから見て、脚本家やドラマの演出、ITツールを駆使した映像表現ができる人なら、映画やサブスクサービスといった活躍の場は、ぼんやりと想像できます。

一方で人気芸人をアサインするタイプのバラエティ番組のプロデューサーにとって、結局放送局が最も稼げて、仕事も続けられるメディアじゃないかと思うわけです。

多少名が売れていたとしても、制作費削減の折、独立して社員時代以上の仕事が安定して得られるのかな、とか余計な心配をしています。
またお子ちゃまの憧れ・ユーチューバーも、あまりに乱立し過ぎたのと、悪質な広告も増えてトレンド媒体でもなくなり、配信者が得られる広告費も減っています。

そもそも放送業界の社員が独立してまず問われるのは「あんたは何のプロなの?」だと思います。

放送のディレクションやプロデュースという仕事は、入社してたまたまそういう部署に配属されて得たスキルです。
就活を経て入社する時にはスキルがゼロで、先輩にしごかれながら、スタッフやキャストの使い方を覚えてディレクターとして成長します。

さらに、プロデュースはディレクションを経て得た人脈と会社から与えられた予算でチームを編成し、仲のいい芸能事務所からタレントをブッキングすると同時に、社員としてコンプライアンス等のリスクマネジメントを、社が主催する研修等で身につけていきます。

その意味で、放送局に勤務する人間は、仕事の環境こそクリエイティブではあるかもしれないけど、当人はたいしたクリエイターではないと考えています。

こうした経緯で得たスキルは、しきたりの異なる他社の現場ではあまり活かされません。
とても冷たい言い回しをすると、●●テレビのプロデューサーは●●テレビでしか仕事ができないんだと思います。

実は僕自身、ラジオのいち社員として、ずっとそのことを意識しています。
みくばんPという人物は、現在の職場の社蓄に過ぎず、音声メディアのプロフェッショナルでもなんでもないと自覚しています。

以前ある仕事を通じて「うちに来ませんか?」と声を掛けられたこともありますが、丁重にお断りしました。
僕が仕事をできているのは、制作費を稼いでくれる自社の同僚や協力スタッフ、さらには常設された機材などが組み合わさった偶然の産物に過ぎません。

自分の腕一本で他社の仕事が出来るとは到底思えないのです。

放送業界に入社して得られるのは、自社の名刺を差し出して培った人脈と、会社から与えられた予算の執行権と、失敗しないためのマネジメント能力くらいです。

観る者・聴く者の魂を揺さぶるようなクリエイティブ能力とはほど遠く、とりあえずキャリアを積めば、社内で問題視されない限り誰でもやれる仕事です。

属人性も多少はあるもの特殊技能ではないため、制作現場からの異動はごくごく自然なことです。

それを嫌って独立したとしても、よほど特異なパーソナリティがない限り、ずっと仕事を確保できるとも思えず、定年より早く寿命が尽きてしまう可能性は高いと思うわけですね。

僕は20代・30代の大半をたいして面白味のない部署で過ごした後、40代から制作、広報、Web、編成というクリエイティブに近い仕事を与えられたので、より社畜のありがたみを感じている次第です。

一方クリエイターとして、個人的に培ったスキルはあります。
例えば、自分の部屋で自分の買った機材だけで作っている音楽やクソコラ動画。

これなら定年退職しようと、どの街へ行っても同じようなクオリティで仕事できる自信はあります。

ただし、他社から声を掛けられる芸風でもなく、お金を払っていただけるスキルにも達していないということです。
悲しいのお。

結局のところ、クリエイター風情は、放送業界どころか他の映像業界でずっと活躍できる可能性が低いことも展望した上で、とりあえず定年まで働いてみるのもアリじゃないかと思いますけどね。

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