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作り手目線のボカロ曲の楽しさ

いよいよ『ボカコレ2024冬』も間近というところで、曲がすっかり仕上がったので、清水藍からの調声済みミクさんとビジュアルが届くのを「マダァ?チンチン」と待ち構えているアテクシです。

この1年を振り返ると、ボカコレの開催月が変わったり、『1枚絵動画投稿祭』があったおかげで、投稿祭向けに4曲も書くことになりました。

みそみそうみゃあ」を作り始めたのが昨年2月12日で、新曲ができたのがちょうど1年後の2月11日ですからね。
ずいぶん前のことのような気もしますけど、我ながらよくやってると思います。誰か褒めてえ。

総合芸術だ爆発だ

新曲の制作経緯は投稿後に詳しく書く予定ですが、楽曲にそのものは(今のところ)あまり苦労せず、実質1日半であっさり作りました。
それには理由があります。

前作まではいろんなことを計算しながら作っていたんですよね。
「同じような曲を作ってる人はいないか?」とか「聴いた人にこう思わせよう」と考えるのも計算のひとつです。
特に「楽耳未来神社」「Peppermint Rainbow」には緻密な設計図(妄想)がありました。

しかし、今回注力したのは「聴いて(自分が)楽しいか」の一点のみです。

今回はメロディを考えず先にバックトラックを作り、ボカロエディターで音符を取っ替え引っ替えしながら、同時に詞も作る手法にしました。

その結果、ボカロ曲は「サウンド・歌詞・シンガー」の3要素が絶妙に絡み合う総合芸術だ!爆発だ!と悟った次第です。

ボカロだからできる歌詞作り

シンガーは出来上がった詞とメロディを歌う役割です。
人間であれば、節回しや表現を詞の内容に自然と合わせて歌うと思うんですね。
悲しい歌詞には目を閉じて悲しみを増幅するとか、明るい曲調なら笑顔を作って歌うとか。

バーチャルシンガーは目を閉じることはできませんが、調声によって、人間の感情表現をある程度シミュレートすることはできますし、その卓越した技術によって生まれた名曲も数多くあります。

今回、アタマに浮かんだフレーズを初音ミクでベタ打ちしたところ、ニュアンスが変わって聴こえた言葉がいくつかあるんです。
想定より可愛くなって、歌詞の意図がオブラートに包まれちゃったという。

普通なら調声を足していくところを、今回は、ミクの無邪気な声に寄せて歌詞をどんどん差し替えてみたんですね。
それで歌詞全体のイメージが大きく変わってしまったんですが、特に訴えたいことがあるわけでもなく、流れにまかせてなんとなく仕上がりました。

プレイバックしつつ、「この声なら納得できる言葉」となるまで試行錯誤を繰り返すわけですが、クサい言い回しで言えば、「ミクと何十回も対話して完成させる」というイメージですかね。

もちろん人間相手でも同じことはやれるとは思うけど、都度歌わせるとなると体力も根気も要りそうです。
こういう作業では、ストレスのかからないボカロが最適解だと思います。

このニュアンスの差、実はキャラクターごとに大きくて、ミクだとコミカルに聴こえる言葉なのに、KAITOが歌えばなんか情けなく、MEIKOならイラっと憤りを込めた雰囲気になる、という場合もあります。

だから作り手として「この歌詞を歌わせたい」と確固たる信念があり、調声でなんとでもできる自信がなければ、シンガー選びは慎重にした方がよさそうです。

アレンジやサウンドにも影響

そして出来上がった詞によって、アレンジも少しずつ変わります。
今回は久々にハードウェアシンセも入れたので、歌詞と連動するサウンドに差し替えることも多く、結局ミクの声に歌詞も音も、相互に影響されているわけですね。

ちなみに作曲で使ったミクは、iPadのMobile VOCALOID Editor用のV3準拠のもので、このVSQXデータを使って清水藍が書き出したV4Xでは、ニュアンスがまた変わってしまうことが稀にあります。
それもまあ、ボカロの面白いところですけど。

なお、実際出来上がったものには、チーム内でも物議を醸してますので、念のため。

現場からは以上です。

ラジオ局勤務の赤味噌原理主義者。シンセ 、テルミン 、特撮フィギュアなど、先入観たっぷりのバカ丸出しレビューを投下してます。