TVの音量について
僕らはTVの音量について、他愛ない、噛み合わない会話を交わした。見たいTV番組で言い争った訳では無い。僕らはただ他愛ない会話をしただけだ。だけど僕は、この会話が、いずれ訪れる僕らの破局を予言しているかの様に感じた。
君は、テレビの音量は20が良いと言う。19や21は絶対に嫌らしい。それならいっそ18や22のほうがマシと言う(仮に18だと聞こえにくい場合でも、19よりはマシらしい)。
要するに、君はテレビの音量が5の倍数になってないとソワソワし、2の倍数ですら無い場合は急いで音量を調整するタイプの人間ということだろう。
でもさ、音量の19と20の間には無限の音量があると考えたことは無いかい?僕らが発したり、耳にしたりする音はあくまで連続的な量なんだ。テレビの音は、そういった、本来は連続的な音を0,1,2,3...でサンプリングして出力しているに過ぎない。そういう意味では19だって21だって、本来の連続的な音の中ではキリがいいんだよ。
君はひとこと、なんか難しくてよく分かんないと言った。僕は作り笑いをすることにした。
この事、つまりテレビの音量に対する僕と君との間に生じたこの不理解は、やがて大きな溝になって僕と君を分断するような、そんな予感がしている。
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