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パネルディスカッション:資源効率や循環型経済にアプローチする製品設計とは?ー日本の課題とプロジェクト事例から考えるー

コペルニク・ジャパンAlliance to End Plastic Waste(廃棄プラスチックを無くす国際アライアンス、AEPW)とのコラボで開催しているウェビナーシリーズ、AEPWの事例から学ぶ特別編「資源効率や循環型経済にアプローチする製品設計とは?ー日本の課題とプロジェクト事例から考えるー」にパネリストとして参加しました。この1週間で3回ほどプラスチック汚染関係のイベント等で話す機会があったので、頭の中もいい感じの準備ができていました。

今回のウェビナーの目的はAEPWと専門家が作成した今後公表予定の「Enabling Policies Framework」と名付けられたプラスチックの循環型経済社会構築を6段階に分類し、それを軸にして各国の状況を把握していくツールをベースに多角的な議論を行う事でした。僕の役割は、UNEPの廃棄物担当専門官として、廃棄物全般からの国際的なプラスチックごみ対策や、下流側から見たプラスチックのライフサイクルアプローチに関する専門知識の提供、関連するパネルディスカッションへの貢献でした。

僕からは自己紹介スライドに加えて、以下の2枚のスライドを提供しました。

「プラスチックごみ」をみて「ごみ全体」を見ずではいけません!!

1枚目はよく使うUNEP-IETCのイントロスライド件、ここで強調したのは、いつものごとく「プラスチック廃棄物は廃棄物全体の10%程度、木を見て森を見ず状態ではいけません→プラスチックごみをみてごみ全体を見ずではいけません!!」です。

2枚目は3週間ほど前にUNEPが公開した最新報告書、Turning off the Tap: How the world can end plastic pollution and create a circular economy「世界中のプラスチック汚染を止めて循環経済を作るにはどうすればよいか?」から、キーポイントを入れ込んだもの。僕の説明はこんな感じでした。

「世界中のプラスチック汚染を止めて循環経済を作るにはどうすればよいか?」、これが今我々が達成しないといけないことです。この50年間、人間社会はプラスチックがあるからこそここまで成長し、便利な世の中になりました。しかし、残念ながら我々人間は同じ過ちを繰り返しています。250年間二酸化炭素排出による気候変動、10数年高濃度の水銀・メチル水銀を垂れ流しによる水俣病、今回は50年間プラスチックを環境中に排出し続け、年間4兆ドル(40兆円)から5兆ドル50兆円)にも及ぶプラスチック汚染。

誰もが加害者であり、誰もが被害者であり、誰も逃れることができない状況を繰り返しています。

でも、まだプラスチック汚染を防ぐ可能性はまだ残されています。現在、UNEPが事務局となりプラスチック汚染対策の条約化交渉会議が進んでいますが、その目的はプラスチックを完全に循環型経済に組み替えること。最新の科学的な情報を集めてとりまとめたのが今表示されている数値。プラスチックの線形経済から循環経済にシフトするために、年間650億投資することによって、世界のプラスチック汚染、2040年までに80%削減可能と言う数値も出ています。

環境コストは外部不経済である、と言う時代はとっくに終わっています。その人間のつけが、人間の首を絞めています。地球環境は無料のゴミ箱ではありません。環境コストを経済のど真ん中に組込み、2020年代は持続可能な経済社会を作り上げる最後のタイミングかもしれません。これを逃すと、気候危機・自然危機・汚染危機すべてがもはや修復不可能なティッピングポイントを完全に超えてしまうでしょう。

本多メモ



そのフォローアップとしての質問、廃棄物処理に関して国際的枠組みが果たす役割とは?に対する僕の考えとしては、以下のような感じでお伝えしました。

一番重要なポイントは、異なる国から優良事例を学ぶことができる、支援や協力を得ることができると言う事でしょう。ゴミ問題は、基本的に各国・各都市の問題です。でも、いわゆる日本のようにごみを環境上適正な管路を実施できているのは少数派で、大多数は日本の50年前のような状況です、つまり単純に埋め立て処理処分するだけです。 
でもごみ問題と言うのは全世界人口80億人に共通している日々の問題です。と言う事は、国の状況に関係なく廃棄物管理を徹底する必要があります。
国際的な枠組みは、各国が廃棄物処理に関する情報やベストプラクティスを共有するためのプラットフォームを提供します。これにより、国々は相互に学び合いながら、より効果的な廃棄物管理戦略を開発することができます。

本多メモ

パネルディスカッションの後半では、プラスチック廃棄物のメカニカルリサイクルの議論が行われました。そこでの僕の発言はこんな感じです。

メカニカルリサイクルは非常に重要である。PETやその他モノマー系プラスチックのリサイクルは、水平リサイクルをすることが可能であるが、雑多なプラスチック、日本で言えば家庭系ごみの中のプラごみは、様々な種類のプラスチックが混ざっているので、日本の場合はメカニカルリサイクルやエネルギー回収、いわゆるサーマルリサイクルをしている。多くの国では熱回収やケミカルリサイクルなどの大型インフラ系リサイクルシステムの導入が難しいため、メカニカルリサイクルが当面の実際的なリサイクルオプションになると認識する。メカニカルリサイクルは様々なユニットが組合さることで、途上国における様々な状況にも対応可能である、しかもそのユニットごとに中小企業間のコラボも可能なので、途上国におけるリサイクルビジネス展開も期待ができる。

また、メンテナンスや中小企業独自に開発も可能と思うので、途上国におけるプラスチックリサイクルを支えていくための基幹産業になると期待していくところ。さらに、この手の技術は日本の中小企業も非常に強いところと認識。国内のリサイクルはより高度化・大規模インフラ系に向かうところであるが、日本が保有しているメカニカルリサイクル技術を、ESGの文脈から海外へ技術移転・ビジネス化するための仕組みを構築していく事も重要ではないか?

本多発言メモ


おわりに

今回のウェブナーは登壇者はオンサイトで、300名ほどの参加者はオンラインと言うハイブリッド形式で、オンサイトでのパネルディスカッションはオンラインで感じることのできないダイナミックなものとなりました。人と人が同じ思いで直接ディスカッションすることは、お互いの知識を共有しながら、新たな方向性であったり、新たな考え方やアイデアが好感度で重なっていく事をつくづく感じました。

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