見出し画像

DXを進める日本のモデルはエストニア

デジタル庁が発足し、政府が力を入れるデジタル化、DX。一体どのような変化を政府は求めているか、「国家丸ごとDX]を実現するエストニアの姿から考えていきましょう。


新型コロナウイルスの感染が広がって以降、初めてとなる全国規模の選挙が先月末に行われました。これまでも選挙の度に導入が議論されてきた「電子投票」ですが、3密回避の必要性から以前にも増してその是非が問われました。
一方で、世界には電子投票を導入している国が数多くあります。中でも世界に先駆けた「電子政府化」の取り組みの一貫で2005年から電子投票を導入しているエストニアの事例からは、その紙ベースのアナログ選挙・行政では享受できないメリットがあることがわかります。
日本でも今年9月にデジタル庁が新設されましたが、わが国が目指していく姿のモデルの1つに「エストニア」があります。遠くない未来に我々も目のあたりにする可能性のある日本の姿として、本記事では紹介をさせていただきます。


「国家丸ごとDX」エストニア

「DX」という言葉が声高に叫ばれるようになったのはいつからでしょう?
おそらくここ2年以内ではないかと思いますが、その言葉が生まれるよりもずっと以前から国家としてデジタル化を押し進めた国があります。
それが北欧・バルト三国の1つ「エストニア」です。

画像1

エストニアは元々旧ソ連の一部でした。1989年に独立をしたものの、さしたる産業もない人口わずか130万人の小国に過ぎません。次またいつ隣国から侵略されるかわからない中でも、国家を富ませていくために、旧ソ連のIT開発本部があったという唯一の産業の芽を開花させるべく「IT立国」を目指します。
これがエストニアの国家丸ごとDX化の背景ですが、具体的には国の行政機能のほぼ全てをデジタルに移行しています。その一例として2005年から導入されている「電子投票」について紹介をします。
東欧の小国、エストニアでは国政選挙・地方選挙ともに電子投票が実施されています。まず地方議会選挙で導入され、2007年から国会議員選挙で実施され、いまでは完全に定着しています。エストニアでも先月中旬に国政選挙がありましたが、電子投票率は約半数に上ります。電子投票(e-vote)は以下のような様々な工夫がなされて定着していったと考えられます。


①リアル投票も残す
直近の選挙では30%ほどが投票所での投票となっています。デジタル弱者に対しての対応策と言えます。
②国外に居ても投票できる
エストニアが電子国家になろうとした大きな動機は、かつて支配されていたロシアに対する防衛です。ロシアが圧倒的に勝る軍事力で攻めてきて物理的に支配されても、電子国家エストニアは生き残ると想定しているのです。だから国外に居ても投票できることはとても重要なのです。
③期日前投票として行われる
投票日当日はリアル投票だけです。期日前投票ならシステム上のトラブルがあっても対応できます。
④期間内なら何度でも投票を変えられる
買収対策です。期日前投票だからできる策でもあります。
⑤本人確認が厳格
マイナンバーカードのようなIDカードと電子署名を連動させて投票します。
エストニアの電子投票による選挙制度は、国家丸ごとDXの一例にすぎません。

エストニアでは政府、行政機関が先導してDXを推進し、民間に追随するように促しているのです。元々共産主義国家で、資本主義の経験が乏しいために政府が主導する必要があったとも言えます。
法人設立が電子化しているのはその一例です。エストニアでは司法書士に法人登記を依頼する人はいません。エストニアでの法人登記はパソコン上で10分で完結します。設立費用もクレジットカードでその際に支払います。
その恩恵により、エストニアは世界有数のスタートアップ大国となっています。国際送金をローコストで実現するワイズ(旧社名トランスファーワイズ)などの有力企業が育っています。
土地登記簿も電子閲覧できます。役所に行く必要がないのです。行政効率もビジネス効率も高まります。役所に来る人が少ないので、コロナ以前から役人も多くがテレワークしているそうです。結婚離婚以外の行政手続きは全て電子化しています。
DX化は個人情報への配慮と並立で進展させなければなりません。医療・介護サービスを効率化させる電子カルテもエストニアでは普及しています。自らの電子カルテに、いつ誰がアクセスしているかが本人に公開されるという策によって、個人情報を保護しています。
1991年のロシアからの独立以降、試行錯誤して構築されたのがエストニアの国家丸ごとDXです。日本のDXの「モデル事例」として大いに参考になります。
エストニアのスゴさを動画でも解説しています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?