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アーティストと作品の関係について(※7/17加筆修正)

昨日は感情に任せて書いてしまったので、多少落ち着いた今、加筆修正をしたいと思う。(7/17 21:18)

こんばんは、ニートだよ。
すごく真面目そうなタイトルで話をしたいと思う。

昨日、7月15日。
遊戯王の作者である高橋和希先生が、instagramにある投稿をした。
遊戯王の主人公、遊戯(アテム)と、彼の代名詞、ブラックマジシャンとブラックマジシャンガールの3人のイラストだった。
私は中学1年生の頃からずっと遊戯王のファンで、理想の男性は城之内克也くんですと言い続けてきた。(城之内くんは遊戯の無二の親友)
高橋先生の生み出した遊戯王という漫画の世界観の大ファンだ。
なので、もちろん昨日の投稿にも喜び勇んで飛び付いたわけだが。

そのイラストの遊戯は、両手に「Let's vote!」と書かれたカードを持っていて、今週選挙だものな、と軽く思ったのも束の間。
ブラックマジシャンの吹き出しに「独裁政権」、ブラックマジシャンガールの吹き出しには「日本って住みづらくなっちゃった」
一瞬で頭が真っ白になった。
え?この2人がその台詞を言っているのか・・・??

そして高橋先生の投稿コメントが、
「本当に今の売国政権で日本の未来は大丈夫かと思うわ!ヤバイ〜〜!!」

高橋先生が今の政権にどんな不満を持っていようが、それを独裁政権だと売国政権だと揶揄しようが、個人の自由だ。
でも、それを既存の人気キャラクターに代弁させるのは暴挙ではないのか。
キャラクターの人格を無視した扱いを『国を憂いているなら』受け入れろというのは、まるで踏み絵じゃないか。

yahooニュースに取り上げられたが、この内容には反論をしたい。

たしかに自分の好きなキャラクターが、現実世界では自分と異なる思想を持っているとなるとファンの心境としては複雑だと思います。それは寄せられたコメントを見てもわかることでしょう。
好きな人に自分の思想を否定されたようで、ショックを受けるのだと思います。

これは大きな誤解があると思う。
キャラクターと思想が合わないからショックなのではない。
自分とキャラクターを同一視しているようでは、今回の高橋先生の暴挙と同じではないか。
遊戯王を愛しているから、ただの絵ではなく1人の人格を持った人間としてキャラクターを見てきた。どんな場面でどんな行動をし、何を口にするのか。
高橋先生が示してきたものを私は受け入れ、理解しているつもりだった。
そのキャラクターが持つ信念が大きく揺らぐような行動を、高橋先生自らが起こしたことにショックを受けたのだ。

ただ、筆者はキャラクターの政治的表現というよりも、その内容に問題があったことが炎上した一番の理由ではないかと考えます。
たとえば「Aという理由があるから政党Bを支持します!」という意見であれば、高橋和希先生の考えのひとつとして受け入れられる可能性はあります。

これも大きな誤解を呼ぶだろう。
何度でも言うが、高橋先生がどんな思想を持っていても、誰も咎める権利はない。高橋先生自身の言葉で発信することであれば、その思想を封じようとする者は非難されるべきだ。

すでに知名度が世界的にも高い遊戯王というコンテンツを、生みの親自らが『捻じ曲げて利用した』ことが悲しくて辛くて、どうしようもない怒りに心は支配されたままだ。
遊戯王を一番愛していると思っていた人が、遊戯王を単なる道具として扱う瞬間に出くわしてしまったと言ったところか。

多くのファンを抱える遊戯王のイラストに乗せて、『独裁政権』『売国政権』という、特定の政党に対しての強烈なマイナスイメージを帯びた言葉を発信する。これじゃまるで下手なプロパガンダだ。
若者に選挙への興味を持ってもらったという意義はある、という意見もあるが、それならば『Let's vote!』だけで良かったのではないのか。
もし、独裁政権という過激な台詞を敢えて使うことで気を引く意図があると言うなら、それこそ1人の大人として、あまりに危険な思考の入り口を若者へ示したことにならないのか。
特定の政党への投票は売国行為であるように印象付けたいのであれば、それは高橋先生の言葉で言うべきだった。なぜなら、ブラックマジシャンもブラックマジシャンガールも、そしてアテムもそんな陰湿な戦い方はしないから。いつでもライバルに真っ向から立ち向かったアテムと、それに付き従う2人の姿を高橋先生は描いできたし、それを私は見てきたんだ。
そんな3人をプロパガンダの広告塔にしたことに憤るのは、例え日本人として失格と言われたとしても、遊戯王のファンだからだと胸を張って言いたい。

件の投稿に対して、『独裁政権』や『売国政権』の言葉に喜んでいる人、『ネトウヨ』や『パヨク』といった特定の思想の人々を揶揄する呼称を使う人、そしてそんな人々を遊戯王の元に呼び寄せたのが高橋先生本人であること。純粋な遊戯王のファンにとって、この光景はあまりに悲惨だった。
だから「個人的な思想は既存のキャラクターではなく自分の口で言ってくれ」というコメントをしても、今度はそれを『表現の自由』で叩き潰そうとする人間も現れ、まさに地獄絵図と化した。
ここで私は「高橋先生も、賞賛のコメントを送る人々も、表現の自由を振りかざす人々も、"遊戯王の作者"というブランドを使いたいんだな」と思った。あの遊戯王の作者が現政権を『独裁政権』『売国政権』とこき下ろしてやったぞ!と大声で言いたくて仕方ないんだと。(一番悲しくなるのは、この独裁・売国という表現を「本当のことを言っただけ!」と反論する方。自分の怒りを表現したいがために選んだその単語は、受け手の気持ちをあまりに置き去りにしている)

遊戯王のブランドを使えばたくさんの人の目に止まる。
だから、キャラクターを歪めてでも、そこに高橋先生の思想を乗せたかったんだろう。それを『勇気ある行動』と捉える人の多さに目眩がした。
あの投稿で高橋先生が発した言葉のどこに、ポジティブな意図があったのか教えて欲しい。自民党政権とハッキリと表記せず、独裁・売国といった過激な言葉を選ぶ割に明確な悪事を提示もせず、まるでそれが秘密の暗号のように仲間内で笑い合う。
それを多くのファンがついている既存キャラクターに乗せて発信した。
炎上する危険を侵してでも発信したことは、幼稚な対立煽りの内容でしかなかった。それを見越しての投稿だったのかもしれないが、炎上して多くの人の目に止まるのがあんな品位のない内容で満足なのか。
高橋先生にとって、あのキャラクター達は『大いなる犠牲』たり得たのだろうか。

とにもかくにも、昨日の高橋先生の投稿を見て、私は成人して以降初めて声をあげて泣いてしまった。高校1年の時、自転車で帰っている際に耳に小さな蛾が飛び込んできて、焦って指で押し込んでしまった時以来だ。母親に泣き縋って救急病院で吸引してもらったのだが、先生が耳を覗き込みながら「あら(笑)こっち向いてますね(笑)」と言って更に泣いたことをはっきり覚えている。(耳の中で虫がばたつく音を聞いたことがあるか・・・?)
まぁとにかくそれ以来だ。
遊戯王のことを好きだ好きだと公言してきたものの、今回のことは自分でも驚くほどショックだった。自分のことを感情を失ったニートモンスターだと思っていたが、ただのニートだったらしい。

今日、高橋先生は、謝罪の投稿をあげた。
あくまで『キャラクターに政治的表現をさせてしまったこと』についての謝罪であり、先生自身の政治思想を発信したことに対してではない。思想は人それぞれ自由なのだから当然だ。
だが、昨日の投稿を消す気配はどうやら無い。とはいえ、「昨日の投稿はショックだから消してくれ」とこちらが言うのも、筋が違うように私は思う。その判断は自身でするべきだ。
だから謝罪した上で消去に至らないのは、ファンが多数ついている既存キャラクターを自分の思想の表現のために改変しても原作者の自由だし、それで傷つくファンよりも、同じ思想の味方に褒められる方を優先するよ、という高橋先生の無言の意思表示と受け取った。

そしてここで改めてきちんと言っておきたいのだが、私は『キャラクターに政治的表現をさせたこと』を批判しているのではない。高橋先生自らが『キャラクターの人格を無視した扱いをしたこと』が辛くて仕方がないのだ。なまじ政治的表現がセンシティブなものと捉えられがちだからか、一部の人からはまるで英雄扱いだ。その為に踏みにじられたものは、比べる価値もないと無視される。軽んじられる。
今回のことで「政治的表現をするとすぐ批判されるなんて、生き辛い世の中だ」と嘆く人々へ。私はあなた達が羨ましい。あなた達には政治的表現の自由という御旗がある。堂々と踏み荒らしていける。だってその主張はとても正常に見えるから。私の慟哭なぞ、日本の未来を考えていない1人のオタクの雑音としか思われていないのだろう。

遊戯王は好きだ。多分、ずっと一番好きな漫画だと思う。
それを生み出してくれた高橋先生には感謝しきれない。
これからもたくさん良い作品を生み出して欲しいと思う。
ただ、物語の中に生きた既存キャラクターのガワだけ利用するような真似は、もう二度として欲しくない。それだけを切に願う。

最後に
有権者の皆さん、選挙は行きましょう。
投票に5分もかかりません。当日は朝の7時から夜の8時まで受け付けています。当日の都合が悪い人は期日前投票もあります。
あなたが信じる人に、あなたの大事な1票を投じてくださいね。
私も朝一で行きますから。

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