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おしりの悩み ~痔ろうとボク~ vol.3

<あらすじ>

10年ぶりに感じたおしりの違和感。
どうやら肛門周囲膿瘍の発症原因は”痔ろう”であったことを告げられる。
痔ろうは自然治癒はしないらしい。
果たして、どのような処置が施されていくのか。


第三章:痔ろうと前哨戦

フラッシュバック

とりあえず、痔ろうを抱えていることは分かった。
とにもかくにも、まずは現状の痛みを除去してもらいたい。

ボクはおしりがパックリ割れたパンツを履き
診察台の上へと寝転がっていた。

(あれ…?まって。この状況なんか覚えが…)

悪寒というのだろうか。
ゾワゾワした感覚と共に10年前に味わった
痛み”の感覚が蘇ってきた気がする。

先生は手際よく準備を進め、尖った先端をためらうことなく
ボクのおしりぶっ刺した。

痛あぇぇええアアァ!!!!
完全に思い出したああぁぁァァ!!!
声出るよぉォォォォー!!ー!!声があぁぁぁぁー!!


なんでボクは麻酔のこの痛みを忘れていたのだろうか。
フラッシュバックが追い付かないほど、今が痛い。

閉じ切っていた穴を再切開され、
勢いよく排膿した。

そしてようやく、おしりの痛みとしこりは落ちついたんだ…

予告

当日の治療を終え、今後の予定を伺う。
状況から痔ろうの可能性は間違いないが、
痔ろうになると本格的な手術が必要で、この医院には設備がない。
大きな病院へ紹介状を出すので、
そちらで今後の痔ろう治療は継続することになるとのこと。

更に紹介状を書くにあたり、
いくつかの検査も実施するらしく、来週来るように言われた。

先生の診察後、看護士さんより検査の説明を受ける。
どうやら ”大腸内視鏡検査”を実施するらしい。

(え?大腸内視鏡検査ってあの・・?)

内心はかなり焦ってた。
だってぼく、胃カメラもまだ飲んだことない。
それなのに…初めてのカメラが おしりからなんて

思いがけない検査方法に戸惑いを隠せない。
しかし、トントン拍子に話は進む。

大腸内視鏡検査は、9時半に開始するので
当日の朝5時から1時間くらいかけ下剤を飲み
もろもろ出し切ってから、9時までに起こしください。

とんでもない激アツ予告きた。
なんだ朝5時って。
1時間かけて下剤飲むって。
出し切ってから来いっていうけど、
止まらなかったらどうするんだ?

いや、そもそもどんだけ出るんだ?←

この時ばかりは本気で震えた ー。

2リットル

小鳥のさえずりが聞こえる。
暦の上では初夏を迎え、とても暖かい5月の朝、
憂鬱な気持ちを抱え、ボクは目覚めた。

今日はいよいよ、大腸内視鏡検査の実施日だ。
不安が止まらない。

粉を水に溶かし、飲み干せと言われた下剤の総量、
なんと”2リットル”である。

尋常な量じゃない。
信じられない。
大好きなコーラだって
1.5リットルも一気に飲みほす馬鹿はいない。

早起きの理由がお分かりいただけたろうか。

更にお酒やジュースと違い、
相手は”下剤”である。
どうがんばっても美味しくなりようがないのだ。

無理ゲー

辛い辛い辛い…。
無心で、ひたすらにお腹へ溜めこむ。
がぶがぶがぶがぶ。

余計なことを考えたり、インターバルを空けたりすると
えずきそうな自分がいたので
本当に何も考えず、機械的に飲み続けた。

強制的に覚醒させられた腸内細菌たちは
持て余す力を解放し、
初めから全開で、すべてを焼き尽くした ー。


侵入

お腹に不安を抱えながら、おそるおそる車を走らせ
病院へと向かった。

どうにか病院へ着いたボクは
いつものように、おしり丸出しパンツに身を包んだ。

処置室の診察台の上で丸くなったボクは
小鹿のように震えた。

鎮静剤の注射が始まる。
もちろんコイツも痛い。いや、痛すぎる。
汗を流し、唇を噛みしめ耐えた。

この鎮静剤は所詮、雑魚にすぎず
後の大ボスが控えていることを知っているからこそ、
ボクの緊張は解けなかった。

鎮静剤の注射から、それほど間を空けず
大ボスの登場だ。
とはいえ態勢を変えることはできないので
どんな姿をしているのかは知らない。

ただ、視線の先にはボスの写し出すモニターが置かれている。
こいつでボクの内部をオンエアしていく構えだ。

メリメリメリッ…!

遂にヤツが侵入してきた。
入口を食い破って、こじ開けて来る。
ガチで身を引き裂かれる思いだ。

痛い…!こわい…!!

耐性のないボクは、ヤツの侵入を固く拒んだ。

でも…無理っ!止まらない…!その先端は容赦なく…進む!!

するんっ!

入口のピークを越えると、ボクの体はヤツを受け入れた。

あっ…!あっ…!あぐっ…!!

うめき声が漏れる。

…分かる。
お腹の中で突き進んでいく様子が。
進行の軌跡を感じる。

腸内のカーブや細道を通過するとき
チクチクとした痛みも覚える。

(やっぱり苦しい…!)

耐えられない程じゃないけど、
お腹の中をひっかき回されるような気持ち悪さ。

苦しむボクをよそに、
ポリープがあるので切っとくね。と先生。

とてもじゃなけど、モニタなんて見れやしない。

ポリープを切除されている感覚はなかった。
痛みがないことだけが救いだった。

そしてゴールへとたどり着いた先端は
再びもと来た道へと引き返していった。


苦しみに耐え、ボクは内側から丸裸にされたんだ ー。


このお話は、次回へ続きます。
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