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風呂で食器洗うの最強説を唱えてみた

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食器を洗いたくない。ほんっっっっっとうにいやだ。なぜ食べる前はあんなに美味しそうだったのに、こんなにグチャグチャになるんだ。

だめだ、意思を強くもって、だましだましいこう。まずは洗剤を持ってみよう。洗わないよ〜全然大丈夫だよ〜と自分に言い聞かせる。次にスポンジを手に持ってみる。怖くないよ〜持つだけだよ〜。洗剤をスポンジにブチュっとしてみる。すごい!スポンジに洗剤たらせたね〜!そしたら箸だけ持ってみない?……洗えたね!!完全に食器洗い始まったね!そのまま続けてみようか!!!
……おわったー!!始めたら一瞬だったー!!よしNetflix見よ〜っと!!!

ふとふりかえると、ギトギトのフライパンと目が合う。
ワカメがこびりついた片手鍋もこっちを見ている。
そうかそうか、おまえがいたか。もう、あの……お、おめえの洗う場所ねーから!!!!!

洗う場所がないわけではない。引くほど狭いのだ。日々暮らしていると、ぼーっとして気づいたら1週間経っていることがあり、その時の食器の量たるやすさまじく、シンクから溢れかえっている。

ギリギリで生活している社会人初心者がとりあえず借りるワンルーム。キッチンをふりかえると風呂のドア。ここでひらめきが降ってきた。

風呂で食器洗いをすればよいと。

やばライフハック・風呂で食器洗うの最強説

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みなさんにこのとてもとても画期的で、デメリットしかないように思えるライフハックのメリットについてご紹介しよう(よい子は真似しないでね!)。

まずひとつめ、シャワーの圧がいい。空っぽの湯船に食器さん、鍋さんを並べ、洗剤をたらり。そこにポカポカのお湯で高圧洗浄。
ふたつめ、シャワーヘッドが自由自在に動かせるのでひとつずつ持ち上げたり移動させたりすることもない。
みっつめ、キッチンの床がビショビショにならない(もしかしてふつうはならない……?)。
よっつめ、とにかく広い。シンクに比べれば広く深いのでどんな大鍋をいくつためても並べてつけおきしておくことができる。ためにためた食器たちを仲良くならべていると愛しささえ感じてくる。「は〜いお風呂入りましょうね〜」と声をかけたくもなってくる。この様子を見た友達が私のことを宇宙人と呼んだけど、 これでも真面目に生きている地球人である。

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そして最後に、風呂には流したくないものを流さないようになる、である。これはすごいぞ、食べ物の残りやソースをそのままお風呂にインさせたくはないので、先にきれいに拭き取ってから洗うようになる。これ以上のエコがあるだろうか。

言ってしまえば大型の食洗機であり、むしろ手洗いも追加される、そして声かけまであるし食洗機に入れられない食器や鍋も洗える、ハイブリッド高圧食器洗浄器である。


お風呂食洗機説ができたきっかけ

これをやるようになったのは、東京地下ラボというプロジェクトに参加していて、「トイレと風呂とキッチンの排水は全部同じ」という衝撃の事実を知ったから。私だけだろうか、 なんとなく、キッチンの排水とお風呂は一緒でもトイレはなんか違う気がしていた。否、生活排水はすべて一緒だった。それなら、キッチンと同様にごみを流さないように気をつけて洗えば同じことなのではと思いついてしまったのだ。なんか本当にすみません、このプロジェクトは悪くありません、私が、 私が……

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ここでひとつ、大きな大きな懺悔をさせてほしい。
私はカップラーメンの残り汁をトイレに流していた。
というのも、1人暮らし1年目、カップ麺の残ったスープなど、排水口のネットに引っかからない液体をキッチンの排水口にそのまま流していたところ、当たり前のようにコバエが湧き、命が命を呼び大変なこととなり、 熱湯と歯ブラシと共に格闘した。それ以来どうしたらヤツらが好きそうなものを流さず済むかと考えていたのだが、契機はサークルの悪い先輩の家でカップ麺を食べ終わった時に訪れた。先輩は言った。「それ、トイレに流しといて」
なんて天才的発想なんだろうと思った。
(これは本当にあの、その先輩が悪いみたいになってるけど、その通りということでいいですか……?)

このプロジェクトに参加したことで、油は水の敵ということ、家庭から油が流されると下水道管内で冷えて固まり、下水道管の詰まりや悪臭の原因になるだけでなく、大雨が降ったとき、固まった油がはがれてオイルボールとなり、川や海に流出し、水環境を汚してしまうことを知った(これは雨水と生活排水が一緒に処理される合流式のばあい)。

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自分はなんてことをやっていたんだ、こうした自分の行動で川や海を汚してしまっていたら……なんて想像するだけでおそろしい。星新一のショートショートより怖い。それを日々下水道管を洗って綺麗な状態に保ってくれているのが下水道局さんの仕事だったんだ、本当にすみませんでした……となり、食べ物の残り油を拭き取ってから洗うようになった。この「油を流すな」メソッドに沿ってさえいれば、風呂で食器をあらうことなどなんのそのなのだ。(良い子は真似せず、食器を溜めず、キッチンで洗おう!)

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下水番長、ありがとう

1年を通じて参加してきた「東京地下ラボ by 東京都下水道局」も、成果報告会でついにフィナーレ。というわけで初都庁の中に入った私。ワクドキ…

中島さんの講演はこちら↓


プロジェクトに参加した学生が東京下水道について学び、その魅力を探し、制作した動画の魅力を熱くプレゼンテーション。
特別審査員として、ワークショップの講師を務めていただいたCMディレクターの中島信也さん。主催の東京都下水道局参加学生それぞれが投票を行い、優れた作品を決めるという流れ。

中島さん「どうなったかな、人間関係ぐちゃぐちゃになったんじゃないかな?僕基本的に甘いんで辛口なこと言わないけど……」

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グランプリをとったのはこちらの作品!

『水にアツいよ!下水番長』
“「下水番長」が下水道の役割をわかりやすく、アツく紹介します!”

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中島さんコメント:「リーゼントの先がマンホールという面白いアイディア。トップカットがマンホールが切れているのがもったいない。」

いやぜんぜん辛ロじゃないですか!ユーチューバーもCMディレクターもサムネイルには命をかけているってことか……!

(追記:これを受けてF班の皆さんなんと、しっかり作り直したのだそう!おかげでいまはマンホールが切れていないカットに変更になっている……賞をもらっても改善していく姿勢、見習わなければ……)

そして中島信也賞(審査員特別賞)はこちらの作品に。

『地下組織「東京都下水道局」』
“普段の生活であまり意識することのない下水道局を謎の地下組織に見立て、地下組織という不穏なイメージと、実はその正体はいつも支えている下水道局だったという安心感のギャップを演出しました。”

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中島さんコメント:「おじさんを怖がっている表現がよかった。男の子のリアクションが、じーっと考えて、おじさんがパッと浮かぶ、モンタージュという技法を取り入れてみてもいいね。また作り直してもいいし。」

めちゃめちゃ専門の世界に引き込もうとしてくる。

そして、私が特に気になったのは……こちらの作品!

『アンダーグラウンドワールド』
“下水処理の仕組みをファミコンゲーム風のドット絵でわかりやすく表現しました。”

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これがその作品を作ったグループのみなさん。


えっ、すごくない……?もうこのゲーム画面というのが、ミーハー流行り物大好き人間としてはね、 「こういうファミコンリバイバルみたいなの、これからのトレンドですから!!」って叫びたくなった。下水道局の皆さん聞こえてますか!これすごくうけると思いますよ!!アニメーションめちゃくちゃクオリティ高いし、個人的にはましゃか賞をあげたい!!(誰にも頼まれてないのにこの図々しさである)下水道局で働く人々が可愛くキャラクター化されていたのもよかった……。
ゲーム化してほしい、おうちから水再生センターに行って、水がキレイになるまでのゲームがやりたい!というかそういうCMに見えたし、開発してほし〜な〜!!


その他の作品はこちら。

『干せない日』
“「下水道は普段あまり意識せず、見えない存在だが、常に身近にある」ということをコンセプトに、「歯磨き」「トイレ」など、身近な水に関する表現を多用し、すっきりとした映像で表現しました。”

こちらは圧倒的映像美の作品!生活の美しい描写や動画のテンポもよくて、もし広告で流れてきたら最後まで見ちゃう気がする。光が結麗なの…

『名前変えます宣言』
“「東京都下水道局」の名前をまずは覚えていただくため、下水道局の名前をあえてポップな名前に改名宣言します!”

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この作品、「ハピハピウォーターファクトリー」というパワーワードをぶちこんできたり正気とは思えない登場人物が出てきたりと、あまりのシュールさにツボにはまってしまった。コアファンができるタイプ。好き。


おもしろいもの、かっこいいもの

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中島さんと話すチャンスがあり最近の広告の流れについて伺ってみると、「今はおもしろいものよりかっこいいものの方がすごいという雰囲気。前はおもしろい方がすごい!という雰囲気で、CMのセットも非現実的な、宇宙!南の島!が多かったけど、最近は現実世界のセットが多いね。」

とのこと。たしかに、『干せない日』のチームも、某ノーマークブランドとかをイメージしてやったと言っていたし、生活きちんと系のユーチューバーが話題になったり、インスタグラム調べると「#丁寧な暮らし」というハッシュタグで何十万件も投稿されているし、普通の生活をいかに美しく過ごすかって、今の時代のメインストリームな表現になっている気がするなぁ。

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仕事に専念するために自分の生活を犠性にするような働き方がずっと続いてきたから、今の「ふつうだけどかっこよく暮らしたい」という社会の欲求は納得がいくような気もする。

最初、下水道と聞いたときはどこか遠くの自分とは全く関係ないところで起こっている話だと思ったけれど、なんてことはない、生活の話だった。


生活の「くふう大臣」に出会った話

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友人のお母さまにとても生活が上手な人がいる。おうちもとっても素敵だ。こんな生活、私には100年かかってもムリかも……。でも、彼女は何かがこわれたりうまくいかないとき、新しいものを買うのではなくてすこしだけ工夫するのだという。たとえば少し服のサイズがあわないからここをピンで止めようとか、ほんの少しのことだけど、長年それを鍛えているため、そのアイディアがすさまじい、それを「くふう大臣」と呼んでいる。という話を聞いてメロメロになるのと同時に、あ、今、ものすごい知恵を与えられてしまったな、と思ったことがあった。工夫というのは、興味から生まれる。

「ザ・丁寧な暮らし」に憧れるも、お金やセンスがないからと諦めたり卑屈になりそうなときもあった。でも、「くふう大臣」の登場によってなんとなくわかったのは、自分のくらしに興味を持って関わろうとすることが、生活を良くしていくということ。近くを見渡すと、生活が得意な人たちはみんな、生活が好きで、工夫が上手だった。その人たちを観察するにつれ、私の生活は、少しへんだけど、少し素敵なものに変わっていった。(工夫すると、限界貧困でも遊べる。)

しかし、ここで満足はできない。今回のプロジェクトを通じて、自分の家さえよければいい、社会と家の中は全く関係ない、そういう風に思ってしまう暮らし方をしてはいないかと、じぶんに問いかける機会になったからだ。

どこまでが自分の家だと思えるだろうか。集合住宅なら、共有部分はどうか。排水口はどうか。ゴミ捨て場はどうか。

インテリアは素敵でピカピカに片付いているのに、ゴミは分別してないとか、排水口に油を流してるとか、そういうギャップって多分、ダサい。

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家は、絶望しそうになる社会から逃避するための防音室じゃなくて、たまに嫌気が差すけど参加すりゃ変わるかもしれない、そういう世界を思いっきり楽しむための秘密基地だ。と、いってもまだカーテンは布団カバーを代用したままだけど……


結論、「地球が家」説

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上京してきて、六畳一間の狭さに「自分の居場所はここだけなんだ」と孤独を感じることもあったけど、お風呂やキッチンの排水口から、下水道、そしてそれが海や川に直接繋がることを知って、

「あれ、私もしかして、この家だけに住んでるわけじゃない…?もしかしてこの街、東京、そして大海原が広がる、この星に住んでいる……??
つまり海は俺の庭、地球が家………??」という結論に達してしまいました。誰か助けてくれ。

家の拡張、一緒にやってみませんか。




この記事は「東京地下ラボ by 東京都下水道局」のPR記事として書かせていただきました!1年間ありがとうございました!

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写真:宮本七生
イラスト:HAMAMOTO NATSUMI
文・題字:はましゃか



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