#178 「イートイン脱税」は罪になる?

令和元年(2019年)10月1日から、消費税率が8%から10%に変更になった。その際、「軽減税率制度」が導入された。
軽減税率とは、低所得者の負担を減らすために一部の商品については消費税率を8%に据え置きするという制度である。
対象となるのは、「酒類・外食を除く飲食料品」と「定期購読契約が締結された週2回以上発行される新聞」である。

「外食」の定義が難しい。対象となる外食の定義は次の通りだ。

飲食店業等、食事の提供を行う事業者が、 テーブル・椅子等の飲食に用いられる設備(飲食設備)が ある場所において、飲食料品を飲食させる役務の提供

国税庁パンフレト「よくわかる消費税軽減税率制度」より抜粋

同パンフレットによると、レストランでの食事はもちろん軽減税率の対象外だが、テイクアウト・宅配・出前は軽減税率の対象となる。しかし、ケータリング(業者が出張して調理・提供を行う)は外食とみなされ、軽減税率の対象外となる。

扱いが難しいのが、コンビニなどにあるイートインだ。消費税率が変更になった前後で、「イートイン脱税」という言葉が話題になった。テーブル・椅子があるイートインスペースで食事をする場合、「外食」扱いとなる。そのため、イートインで食べる商品に関しては軽減税率は適用されない。しかし、普通に持ち帰って食べる商品には軽減税率が適用される。
そのため、厳密には会計の際に持ち帰るかイートインで食べるのかを申告して税率をその都度変えてもらわないといけない。制度が変更された直後には、正しく申告した客から申告していない客(イートインで食べると言わずに8%の税率で購入した商品をイートインで食べる客)がいることへのクレームが相次ぐなど、一時的に社会問題となった。
しかし、実際にコンビニでイートインで食べるか持ち帰るかの確認をその都度行うのは煩雑だし、持ち帰ると思っていたのにイートインを利用したくなる場合や、その逆もあり得る。
この問題に対して国税庁は以下のように回答している。

大半の商品(飲食料品)が持ち帰りであることを前提として営業している コンビニエンスストアの場合において、全ての顧客に店内飲食か持ち帰りかを質問することを必要とするものではなく、例えば、「イートインコーナーを利用する場合はお申し出く ださい」等の掲示をして意思確認を行うなど、営業の実態に応じた方法で意思確認を行うこととして差し支えありません。

国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A Ⅲ 外食の範囲」

このように、イートインで食べるかどうかの確認は理想であり、義務化されていないため、「イートイン脱税」は罪には問われない。
税率の改正から数年が経ち、もはや「誰も気にかけていない」という表現が正しいのかもしれない。

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