#168 皇居で育てられている生き物とは?

皇居内にある紅葉山御養蚕所では、明治時代以来歴代の皇后さまによって「蚕」が飼育されている。かつて日本の主要な輸出品であった生糸をつくる養蚕は日本の伝統文化と考えられ、養蚕業が衰退した現在でも日本の伝統文化を守るために皇居で養蚕が行われているのである。
皇后さまが皇居で育てられている桑の葉を蚕に与えることを「御給桑」、「天蚕」の卵をクヌギの枝につけることを「山つけ」、さなぎになった蚕のまゆを蔟(まぶし=蚕をいれている箱)から外すことを「繭かき」と呼び、それぞれ皇室の儀式として毎年行われている。

皇居で飼育されている蚕は日本古来の在来種である「小石丸」など。小石丸の糸は蚕の中でも最も細く、艶があって張力もあることから、小石丸からつくられる絹は最高級品とされていた。しかし、一匹からとれる繭の量が少なく、経済性にかけるという理由から次第に生産量が減り、「幻の絹」とよばれるようになってしまった。現代では古来の生糸に近い質の小石丸は、古来の織物や絵巻物の修復に用いられるなど、ふたたび注目を集めている。

養蚕業が衰退したとはいえ、養蚕と製糸業は日本の伝統文化として引き継がれている。

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