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人生に信念はいらない~読書記録297~

臨済宗妙心寺派の故・松原泰道師のお孫さんの細川晋輔僧侶が2018年に書かれた著書である。

著者の紹介
禅僧。龍雲寺住職。1979(昭和54)年、東京生まれ。佛教大学卒業後、京都にある臨済宗妙心寺の専門道場にて9年間の修行生活をおくる。祖父は名僧・松原泰道。NHK大河ドラマ「おんな城主 直虎」禅宗指導を務める。本書がデビュー作となる。
東京都世田谷区野沢3-38-1 臨済宗妙心寺派 大澤山龍雲寺の住職である。

禅と仏教を学んで、より自由に、軽快に――。
「スタジオジブリ」鈴木敏夫氏、推薦!
人生をより豊かなものにするためには、強固な〝信念〟よりも、柔らかな〝心の柱〟を見つけよう――。9年に及ぶ厳しい修行を経験、1000を超える公案に取り組んだ禅僧が、禅と仏教の魅力をわかりやすく語る。
「坐禅は心のゴミ捨て場」「見返りを求めない」「波なきところに波を起こす」「本当の自分を見つけるコツ」など、日々の迷いや苦しみに向き合い、より自由に軽快に生きるためのヒントがいっぱい。これからの日本仏教を背負って立つ、注目の禅僧のデビュー作!(出版社紹介より)


良い意味で、これまでの私の先入観を失くしてくれた本であった。
日本のお寺は明治5年に、僧侶の結婚が許され、以来、世襲制が当然となっていく。それは政治家もそうで、日本は世襲文化なのかもしれないが。
周りをみても、家が寺だから後を継いだのような、そんな人ばかりなのだ。
浄土真宗の僧侶のTik Tok、You tubeなどを視ているからかもしれないが、10日くらい京都の本願寺で修行して、家の寺を継いで自分の好きなように出来るんだ。で、殆ど、寺ではなく自宅なのに固定資産税は免除?などなど。
そんな事も思っていた。
浄土真宗だけではなく、実家菩提寺の坊さんを観ていても、生臭坊主さんで尊敬は出来ないし。

この本で書かれていた京都・妙心寺での修行というのは、一般人には耐えられない厳しいものであった。
座禅、指導してくださる老師との禅問答、托鉢、交代制での仕事。
食事にしても、これだけ?と思うようなものだ。
お粥だけであるとか、夜は基本的に昼の残りとか。

托鉢にしても深い意味があるのを知った。
人間は自分1人で生きていくことは出来ない。沢山の他者によって自分は生かされている。このことを身をもって教えてくれるのが托鉢なのだそうだ。

現代の格差社会に於いては、上の方にいる方は、そういうことを全く感じないであろう。だが、普段食べている野菜にしても、通販で買うものにしても、どれだけ多くの人が関わっているのか。むしろ、自給自足が出来た昔よりも現代の方が強いかもしれない。

臨済宗、曹洞宗は、基本となるのは座禅だ。
調えなければならないものが3つある。
「調身」「調息」「調心」だ。

座禅は「心のゴミ捨て場」です。何かを求めて行うものではありません。座禅をいくら組んでも、何ら得るものはないのです。それでは、なぜ座禅をするのか。それは「捨てる」ために他なりません。心の中にある色々なものを捨てた先に、私たちが生まれながらに持っている「幸せな心」があるのです。(本書より)

さすが!松原泰道師のお孫さんだ。仏教、お寺が生きる為の支えとなるべく、考え、実行しておられる。
修行僧が行うような厳しい座禅ではなく、初心者でも出来るような座禅会などもそうだ。葬儀の時しか行かれないようなお寺に足を運べるのは良い事だと思う。
座禅会はもっと沢山の寺院で行われると嬉しいと個人的には思う。

「葬式仏教」などと揶揄され、何かと批判の多い日本の仏教界ですが、私もやはりこのままではいけないと思います。
もちろん、お葬式やご法事が大事であることは間違いありません。ただ、2500年前にお釈迦様は、葬式や法事をするために仏教を説かれたわけではないのです。悩み苦しむ人たちが、少しでも幸せになるために立ち上がれたのです。(本書より)

著者はまだ若い。このように若く、志のある方に期待したいと思うのであった。



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