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短編小説 砂漠の賢者


バララはラグランジュの塔38階層に住んでいる、太陽に焼けた肌を持つ若き冒険家だ。


彼女はこの階層で生まれ育っており、未知の世界への憧れに燃え、広大な砂漠を探検する夢を抱いていた。


ある日、砂の街の老人から伝説の賢者ラマールについて聞いた。ラマールは砂漠に生きる知恵を体得し、神秘的な力を持つと言われていた。バララは心踊らせ、彼を探し求める旅に出ることにした。

旅の手伝いをしてくれたのは、シャイという名の砂漠のラクダだった。シャイは優しい眼差しで人間を見つめ、しっかり者のバララを気に入ったようだ。

二人で水と食料を用意し、見知らぬ砂漠の旅に乗り出した。

日が過ぎるごとに、道中は厳しさを増した。砂嵐に見舞われ、水が尽きそうになるたびにシャイが水を分け与えてくれた。やがてオアシスを見つけると、二人で喜びを分かち合った。

旅の終盤、ついに巨大な砂丘の上でラマールに出会う。

ラマールは幾つもの人生を生き、砂漠の声に精通する老賢者だった。彼はバララに自然の尊さと人と動物の絆の大切さ、この巨大なラグランジュの塔の秘密を説き聞かせた。

バララはラマールから大切な教えを得て、シャイとの絆を深め、やがて故郷の街に戻った。

しかし、あの経験により、彼女の探求心は一層強くなり、砂漠とラグランジュの塔に対する畏敬の念を抱くようになっていた。

人は旅を通じて成長し、時に厳しい自然に学ぶのだ。バララの冒険は、そうした真理を体現していた。


バララの旅立ちの日は近い。



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