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短編小説 勇気ある冒険の書初め


朝日が城塞の影を押しのけ、野を彩る一面の草花に命を吹き込んだ。レイナはワクワクした胸を抑えながら、大草原エリアの道を歩いていた。


昨夜、レイナは自分の冒険者としての第一歩を踏み出す許可を得たのだ。今日は見習い冒険者としての記録に最初の1ページを書き加える日となる。


「やっと俺も本格的に動き出せるぜ!」レイナの脇を歩くモウリーという名の小さなスライム型の火の精霊が、熱気を含んだ声で呟いた。


レイナはモウリーに頷き返す。この世界には精霊たちが住んでいる。幼い頃からモウリーとは深い絆で結ばれていた。


街のゲートを通り抜けると、遠くに山々が裾野を広げる景色が広がっていた。レイナの足取りは自然と迷いの小道に向かった。初めての依頼は、近くの村で毒キノコの駆除だという。


途中、岩穴から飛び出した野生のワイルドボアに襲われたが、モウリーの熱い炎が撃退した。


ワイルドボアが飛び出してきた時、レイナは動じる余裕はなかった。咆哮を上げて襲い掛かる鋭い牙とモウリーの炎が交錯した。


「おい!邪魔すんな!」モウリーの怒声が響く。だがレイナには別の考えがあった。


「モウリー!ワイルドボアを気絶させるくらいの火力を放てばいい」


「なになに?てめぇ、食らうつもりかよ!?」


レイナは笑みを浮かべながら、すでに鞘から抜き放たれた剣を振るった。ワイルドボアの強靭な体が燃え上がり、やがてその巨体が地面に転がり落ちた。


「もちろんだとも。こんな状態なら、きっと柔らかく火が通るはずさ」



ワイルドボアの巨体を何とか運びながら

やっとの思いで村に辿り着くと、年寄りの村長が心配そうな表情で二人を出迎えた。



村に着くなり、レイナはすぐさま調理に取り掛かった。ワイルドボアの肉を中度の熱風で30分ロースト。そして香り付けに薬草を使い、ワインビネガーをかけて数時間寝かせる。


「うまい!この火力に助けられて柔らかな肉質になったぜ」



村人たちもこの肉のうまさに酔いしれていた。レイナとモウリーがこうして注目を浴びるようになったのは、単なる偶然ではなかったのかもしれない。



きっとこれから数々の試練が待っているだろう。しかし、新たな世界への冒険に、レイナの目は冴えわたっていた。

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