つながらない権利

つながらない権利は、長時間労働の抑制につながる一方で、柔軟な働き方を阻害する可能性がある。

夜10時以降はだめとしても、10時以降に仕事をしたい人がいるかもしれないから、たしかに、一律にルールを制定するだけでは意味がない。

ただ、つながらない権利が生活の質というか、従業員の幸福感を高めることにつながるのではないか。空いた時間を自分のため、家族のために使ったり、その時間を自己研鑽に当てることもできるだろう。

といっても、つながらない権利はメールをみるとか、電話をするとかを制限するのみで、多くの業務時間を削減するわけではない(そのメールや電話によって仕事をしなければならないということもあるだろうが)。

そのため、権利を保障したとしてもわずかな時間が増えるだけだろう。

しかし、休日にも関わらず仕事の電話が来て、せっかくの趣味の時間を潰されたりしたら、イライラするだろうし、その日の休日が台無しになる可能性もある。

そもそも、どれほどの人が休日のメールや電話に悩まされているのだろうか。従業員が特に疑問に思わないのであれば、改善しなくてもいい。

また、つながらない権利があることで、幸福感の増加につながるのか、生産性の増加につながるのか、など関係性は見られるのか。

休日に仕事の電話があることで、余裕をもって月曜日を迎えられる人がいるかもしれない。外国で導入されているから、という理由で一律に似たようなルールを導入すると、かえって従業員からの反発があるかもしれない。

重要なメールや電話だとしても、その重要度をどう判断するのか。結局は送り手の判断になってしまい、受け取る側の事情は考慮されない。「これは重要ではない」と思って、月曜に送ったら、意外と重要なメールだった、ということもあり得る。緊急対応が必要なのに対応しなかったら、顧客からの信頼を失いかねない。部署や、上司と部下の間で、重要なメールの定義を定め、つながらない権利の例外規定を設けることも必要になると思う。

従業員のウェルビーングやQOL、会社の健康経営などが重視される中で、従業員の生活に仕事を持ち込まないようにする、つながらない権利は一定の支持を得ている。実際、欧州をはじめ諸外国でも法律に盛り込まれているようだ。

ただ、ここまでみてきたように、つながらない権利といっても、その定義をしっかりする・従業員の働き方に合わせないといけない、などの問題があり、早急の導入は難しいのではないか。

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