マハーバーラタ/1-6.アンバーの復讐

1-6.アンバーの復讐

アンバーは苦行の日々を続けていた。
森を出て他の場所へ向かい、最低限のものさえ拒んで苦行を続けた。
シャンカラの息子シャンムカが目の前に現れた。
「アンバーよ、この花輪を受け取りなさい。この永遠に瑞々しい蓮の花輪を首に掛けた者がビーシュマを殺す者となるでしょう」
この贈り物を受け取ったアンバーは復讐を叶えてくれる者を探す旅に出た。
あらゆる力強い王たちを訪問したが、ビーシュマを敵に回そうという勇敢なクシャットリヤは誰一人見つからなかった。この花輪は神から与えられたものなので失敗することはないと説得しても無駄であった。
最後の希望をもって次に訪問したのがパーンチャーラの王ドゥルパダであった。
「他の者ならともかく、彼は力強く、しかも正義の人だ。申し訳ないが、私はビーシュマと戦う理由が見つからない」
アンバーは絶望し、持っていた花輪を大広間の柱に投げつけ、怒り狂ったまま宮廷から出て行ってしまった。ドゥルパダはその様子に肝をつぶし、誰もその花輪に触れる勇気のある者はおらず、柱に花輪がかかったままになった大広間は厳重に施錠されることになった。

アンバーは森へ行き、修行を再開した。彼女の心にあったのはただ一つ、ビーシュマへの憎しみ。彼の死を見届けたいという、それだけが望みであった。
修行を続けていると、今度はシャンカラが現れた。
「アンバーよ、もう悲しまなくてよい。あなたが生まれ変わった時、あなた自身がビーシュマを殺す者となるであろう」
アンバーはその言葉に満足しなかった。
「いいえ、私は今世のうちに彼を殺したいのです。来世ではこの気持ちを覚えていないかもしれないわ。たとえ彼を殺したとしても復讐を遂げた達成感を味わえないでしょう?」
シャンカラは微笑んだ。
「心配は無用だ。あなたはパーンチャーラのドゥルパダ王の娘として生まれ変わるが、今世のたくさんの出来事を全て思い出すでしょう。そしてあなたは男性になり、復讐が達成されます。私が保証しよう。ビーシュマを殺すのは間違いなくあなただ」
それを聞いたアンバーは大きな火を起こし、自らその身を投じた。
そして彼女はドゥルパダ王の娘として再び生を受けた。

ある日、シカンディニーの名でドゥルパダの娘として生まれたアンバーは、例の大広間に入り込んで遊んでいた。彼女は柱に掛かっている花輪を見つけ、自らの首に掛けた。
慌てて駆け込んできたドゥルパダはその姿を見て肝をつぶし、恐怖に打ちのめされた。
「あの花輪を・・・なんてことだ・・・!!」
アンバーは父とは対照的に澄み渡った笑顔であった。
「お父様、驚かないで。私はこの花輪を自分に掛ける為にあなたの子供として生まれたのよ。これでお父様は平和に生きられるし、私の心も落ち着くの」

彼女はドローナ先生の下で学び始めたが、誰もが彼女をシカンディーと呼び、男性だと思いこんでいた。

年月が流れ、あるヤクシャの好意によってシカンディニーは女性を失って男性となり、堂々とシカンディーと名乗れるようになった。
そしてビーシュマへの憎悪を心に燃やし続けながらドゥルパダ王の家で育てられていった。

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