マハーバーラタ/6-4.バガヴァッドギーター②~知識~

6-4.バガヴァッドギーター②~知識~

サンジャヤは言った。
「同情の気持ちに圧倒され、苦痛で涙をいっぱいにためた目で悲しむ彼に、マドゥスーダナ(クリシュナ)が話しました」

シュリーバガヴァーン(クリシュナ)が言った。
「アルジュナよ! 今はこんなに重大な局面なのに、一体どこからそんな絶望感が起きてくるんだ? それは全く正義の人のすることではないし、あなたの輝かしい名声を上げるものでもない。天界へ導くような行いでもない。

敵を滅ぼす者パールタ(アルジュナ)よ。女々しくしているのはあなたにふさわしくない。卑しく弱虫な心を捨てて立ちなさい」

アルジュナが言った。
「妖怪マドゥを殺した者(クリシュナ)よ。どうすれば尊敬に値するビーシュマやドローナに対して、この戦場で矢を放てるというのか? 

この偉大な先生達を殺すくらいなら、この世界で施し物を食べて生きる方がましだ。もし彼らを殺すなら、これから私が体験する安全や喜びは血に染まったものとなるだろう。

私達が彼らを滅ぼす方がよいのか、彼らが私達を滅ぼす方がよいのか、どちらがよいのか、もう分からないんだ。敵として目の前に立っているドゥリタラーシュトラの息子達を殺してまで生きていたくはない。

私は自分自身の義務に混乱し、弱い心に圧倒されています。私にとってどちらが良いのかあなたに聞きたいのです。どうか教えてください。私はあなたのシッシャ(生徒)です。あなたに救いを求めている私にどうか教えをください。

たとえライバルのいないほど繁栄した王国を手に入れようとも、天界の統括者となろうとも、この悲しみ、私の感覚を乾かしてしまうほどの悲しみを取り除いてはくれるものはありません」

サンジャヤは言った。
「敵を焼き払う者グダーケーシャ(アルジュナ)は、このようにフリシーケーシャ(クリシュナ)に話し、『私は、戦いません』とゴーヴィンダ(クリシュナ)に言って沈黙しました。

おお、バーラタの子孫(ドゥリタラーシュトラ)よ。両軍の真ん中で座り込んでしまった彼に向かって、フリシーケーシャ(クリシュナ)はまるで微笑みかけるかのようにこのような言葉をかけました」

シュリーバガヴァーン(クリシュナ)は言った。
「あなたは悲しまれるべきでないものを悲しんでいる。知恵に満ちた言葉を話しているようだが。知識を得た者というのは生きている者にも、死んだ者にも悲しまない。

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