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妹のオセロに勝てない。

妹の話をしよう。

二つ違いの妹がいる。

彼女はとても賢い。

オセロやトランプをしたとき、

妹なのに勝てない。

きっとわたしよりも頭がいい。

小学生のうちから気づいていた。


ところが、彼女自身は

自分のもって生まれたものに気づいていなかったようだ。

いつも男の子にまじってゲームばかりしていたし、

冬休みの宿題をやっていなくて

かわりに仕上げてあげたこともあった。

(後から母に怒られた)


妹が本気で勉強したら、きっと負ける。

だからわたしは勝てるときに勝っておこう。

残念ながら負けず嫌いの性格だったので、

コツコツ勉強した。

中学生になるまでは、姉の方が勉強のできる姉妹だと思われていたはずだ。


妹も中学生になり、塾に通うようになった。

母が勉強しないのを見かねて塾に入れたのだった。

その次の定期テストで、彼女はあっさりと学年1位を取った。

悔しいと同時に、ついにこの日がきたかと思った。

ここからはもう太刀打ちできない。


そのあと高校に進み、大学に行った。

過程で、わたしは将来の夢を失った。

とくに希望もなく、やりたいこともなく大学に進んだ。

行きたい大学でもなければ、学部でもない。

ゆるゆると毎日を消化していた。

一方で妹も、第一志望には進めなかった。

でも夢を叶えるための学部には進学していた。

わたしとちがって単位もたくさん取らないといけなかったし、

実習や研究で外出することも多かった。


大学を卒業したわたしは、実家を出た。

だから、大学後半の妹を知らない。

彼女はその間も必死に夢を追い続け、

倍率20倍になるとも言われる試験を通過して、夢をかなえた。


さすがにこんな難関をくぐりぬけるのに、

サラッと準備したわけではないだろう。

ずっと叶えたかった憧れの職業につくために、

大学4年間(高校の時からかも)を費やしてきたのだ。


きっと、わたしのしらない場所で

もっと努力していただろう。

疲れる日も、しんどくなった日もあっただろう。

それでも夢を追い続けた妹を、尊敬している。


わたしも時間がかかったけれど、

社会に出てから自分のやりたいことに気づいた。

やってることも業界も、全然違う。

でも今は、姉妹揃ってやりたいことを仕事にしている。

お盆とお正月くらいしか会えないけれど、

話すといつも楽しそうだ。


ちなみに今も、オセロは勝てない。


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