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最低賃金が都道府県で異なるのは何故

こんちは!副業社労士まさゆきです
中学校の出前授業で盛り上がるのは最低賃金です。将来アルバイトでいくら貰えるのか、大きな関心時です。「東京都の最低賃金は1,113円、埼玉県は1,028円、都道府県で最低賃金は違います。一番低いのは岩手県で893円です」と話すと「じゃあ東京で働こう」「都道府県で違うのは何故?」多くの質問が出ます(最低賃金:2023年10月~の数字)。今日はこれらの質問に答えます。

《最低賃金はどのように決まる?都道府県で違う理由》
都道府県別(地域別)最低賃金は毎年10月に改正されます。厚労省の中央最低賃金審議会(以下「中央審議会」)で最低賃金を引上げるか否かその額を審議し「目安引上額」を決定、各県の地方最低賃金審議会(以下「地方審議会」)に答申、地方審議会で最低賃金を決めます。
中央審議会には、「低賃金審議会目安に関する小委員会(以下「小委員会)」があり、小委員会で以下“3要素”を検討し目安引上額を決定、中央審議会に答申します。小委員会は「労働者代表」「使用者代表」「公益委員(第3者)」で構成されます。

1)賃金上昇率:春闘の妥結賃金上昇率や、有期・短時間・契約等労働者の賃上げ額を加味
2)通常の事業の賃金支払能力:
①法人企業統計の企業利益率②日銀短観の業況判断DI③中小企業景況調査の前年と今年を比較
3)労働者の生計費:消費者物価指数を総合的に判断、生活必需品の物価指数を重視

目安引上額は値域の経済状況を鑑みA,B,Cの3ランクに分けられ、ランク毎に答申されます。

地方審議会は域内の“3要素”と目安引上額を元に最低賃金を決定します。農水畜産物が豊富で生活必需品が安い県では「労働者の生計費」が低い。”兼業農家で会社員”勤務は「賃金上昇率」が抑えられる傾向がありました。都道府県により最低賃金に差が出る理由です。

《紛糾した2023年の最低賃金目安引上額》
2023年は、小委員会で目安引上額の労使合意ができず、公益委員“見解”が中央審議会に示され、目安引上額が決定しました。何があったのでしょうか?

2023年の“3要素”は下記。
1)賃金;春季賃上げにおける賃金上昇率は全体で3.58%、中小で3.23%
2)通常の事業の賃金支払能力
・法人企業統計における企業利益率:令和3年6.3%⇒令和4年6.6%と安定
・日銀短観業況判断DI:令和4年6月+2⇒令和5年6月+8と上昇
・中小企業景況調査:令和4年4~6月▲19.4⇒令和5年4~6月▲10.5と改善
3)労働者の生計費:消費者物価指数の対前年同期比は4.3%

小委員会での労使の主張は下記。
(労働者側)
30年振りの賃上げの流れと下記事由により「誰でも時給1,000円」を実現すべき
・現在の最低賃金の水準は、2,000時間働いても年収200万円程度、国際比較で低すぎる
・連合「最低限必要な賃金水準」試算では、最も低い県でも時給が990円以上なければ生活できない
・都道府県の最低賃金格差を放置すれば、労働力流出による地域経済への悪影響が懸念され、B・Cランクの最低賃金を引上げて是正すべき。
(使用者側)
価格転嫁が進まず、人手不足の為利益を圧迫しながら賃上げせざるを得なかった中小企業が未だ多い。負担能力を超える最低賃金引上を実施すれば、中小企業の倒産・廃業を促進し、地方経済悪化に繋がりかねない。

各ランクの最低賃金目安引上額は、「Aランク:41円、Bランク:40円、Cランク:39円」で各県地方審議会に答申されました。結果、2023年10月改定で、R4年全国加重平均は961円⇒1002円(+4.3%)と上昇しました。消費者物価指数を決め手に、使用者側の懸念を押し切った形です。

《東北4県は何故、最低賃金引上目安額を上回る最低賃金を決定したか》
2023年、目安引上額を上回る最低賃金改定を実施した県が多くあります。東北地方の例です。

6県中4県が目安引上額を上回る最低賃金改定を実施しました。県外への雇用流出を止める為です。

人材需給がバランスしている時、最低賃金を低く設定する事は雇用確保に有効でした。企業は低コストで人員確保、労働者が生活に困らなければ、低い最低賃金は企業誘致に有利です。
人手不足の現在、低い最低賃金は、物価上昇に困る労働者流出の動機となる
為、東北4県は決断しました。九州沖縄では全県が同様の決断をしています。

ではまた次回



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