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祝!生誕89歳! 藤子不二雄A先生のこと、プロゴルファー猿のこと。

本日は3月11日。未曽有の大災害となった東北の大地震から12年たった。地震本体の揺れによる被害、津波による被害、そして人災とも言える福島原発の被害と、三重苦の震災で、今なお色々な形で苦しめられている方々がいらっしゃる。

風化させてはならないと、口を酸っぱくして言い続けないと、私たちはあっと言う間に災害のこと、被害者のことを忘れてしまう。

災害はいつ何時自分のところに襲い掛かってくるかわからない。私たちは、困っている人を助ける、協力し合うという気持ちを持ち続けなくてはならない。

3月11日の大震災は、いつも間近な自分ごととして、考えておかねばならないのだ。



そんな今年の3月11日は、藤子F先生のパートナーであり、盟友だった藤子不二雄Aこと、安孫子素雄先生の89回目の誕生日である。

昨年4月に亡くなってしまった記憶がまだ鮮明で、ショックも抜け切れていないが、まずはこの日を喜びたい。

A先生の作品を取り上げる機会は少ないが、今でも時間を見つけてはパラパラとA作品を読んでいる。好きな作品はいくつもあるのだが、ここでは「プロゴルファー猿」について、思い出めいたことも含めて語ってみたい。


「プロゴルファー猿」はアニメ化されてから本格的に好きになった作品。当時は10歳くらいだったと思う。僕の実家は山深い地域にあり、「猿」に出てきそうな山々に囲まれた場所だった。

また、一時期「さる」とあだ名を付けられていた時もあって、本作の主人公「猿丸」には少ならからず共感を寄せていた。

都会の方には信じられないかも知れないが、我が家では庭が十分に広かったので、ゴルフの真似事みたいなことが可能だった。庭の中央に芝生の一角があって、そこに1カ所穴(ホール)を掘り、後は打つ場所を変えて、9コースを設定した。

それはちょっとしたミニゴルフ場の趣きで、親のお下がりのゴルフクラブとゴルフボールを使って、それこそ毎日のように庭ゴルフを楽しんでいた。

庭ゴルフのきっかけはもちろん、「プロゴルファー猿」であった。


「プロゴルファー猿」の作品としての魅力は、主人公・猿の活躍ぶりもさることながら、個性豊かな敵キャラにある。

なぜか覆面で毎日過ごしている怪しすぎる男ミスターXを筆頭に、なぜか肩にインコを乗せている美女・紅蜂や、明らかにブルース・リーそのまんまなカンフーゴルファー・ドラゴンなど、濃いキャラが次々と刺客として送られてくる。

またゴルフコースの設計が荒唐無稽で、ほぼ90度の崖を打ち上げなくてはならないホールや、ドラゴンの背という細い峰を伝うようなホールなど、子供ながらに無茶だなあと思いつつ、ハラハラして読み進めたものだった。

また、影のプロゴルファーとして活躍していた猿が、本当のプロになるべく、プロテストを受けるお話があって、そこは本格的に燃えた。プロテスト中に殺し屋(死神)の意外な正体が明らかになる展開など、かなりの胸アツである。

未読の方は、必ず読んでおくべき漫画だと断言できる。


ところで、作中のドライバーショットの描写において、「ドギャ」などというハードヒットでボールを飛ばすのだが、自分の中ではこの打ち方が正しいドライバーショットであるとイメージが刷り込まれていた。

実際大きくなって初めてドライバーを使ってゴルフの練習をした時に、このドギャ・ショットを理想としていたがために、極度なアッパーショットになってしまい、その修正にかなり苦しんだ思い出がある。

ドライバーの基本は、上から叩きつけるようなスイングが求めらることを知って、やはり「プロゴルファー猿」だけの知識では本当のゴルフには通用しないのか、と残念に思った記憶がある。

けれど、「プロゴルファー猿」は、僕と同年代の人たちを大勢ゴルフ好きにさせてくれたのではないかと思う。ゴルフを実際に始めてから読み返すと、ルールにはきちんとこだわってプレイしていることも分かる。

荒唐無稽ではあるが、真摯にゴルフと向き合った漫画なのだ。


ちなみに安孫子先生には「PARマンの情熱的な日々」というエッセイ集があるが、このPARとはゴルフのパーから取られている。パーを量産していたことからこの名前にしていたようで、それはつまり、シングルクラス、かなりの腕前だったものと想像できる。

また、パーマンと耳だけ聞くと、藤子F作品のことを思い浮かべてしまうものだが、実際には「パーマン」とは安孫子先生にとっても、大事な命名だったのである。



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