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魔美パパ・佐倉十朗の下手歌セットリスト!/音痴選手権④

「音痴選手権」と題して、「オバQ」「ドラえもん」「パーマン」の各作品から音痴代表を一人ずつ選出した。3名とも甲乙つけがたい酷い歌声を披露し、聞く人の生死すら関わる事態に陥った。

本稿では、「エスパー魔美」からあの人を選出するのだが、さすがに今までの3名と比べては可哀想である。少なくとも気絶したりはしない。

ただ、作中では音痴扱いされ、隣人から飼い犬の食欲を奪っているというクレームを受ける。それなりの歌声のようである。

そこで本稿では、その方の歌遍歴(レパートリー)を紹介することにしたい。


「エスパー魔美」の音痴キング、それは魔美のパパ、佐倉十朗氏である。

十朗は、魔美をモデルにして絵をたびたび描いているが、筆が乗ってくると歌いだすことで知られている。魔美は作中でこう語っている。

「歌が出る時はパパが乗っているときなのよ。レパートリーは広いんだけど、どの歌も同じに聞こえるのは不思議ね」

「どこかでだれかが」

この後全曲を紹介していくが、確かにレパートリーは広い。そして、さらに魔美は解説してくれる。

「歌がナツメロにうつったのは、本式に調子が出始めた証拠だわ」

「どこかでだれかが」

集中度が増すと、ナツメロ、つまり十朗氏の青春期の流行歌を歌いだすというのである。魔美は連作「少女」のモデルとして、長い時間を一緒に過ごしているからよくわかるのである。


そこでまず、魔美のモデル史を簡単に振り返ってみる。

魔美がモデルとして働いていることは、一作目の『エスパーはだれ?』で既に明らかになっている。高畑が初めて魔美の家に行き、魔美のヌード画を見て赤面している。

パパは個展に向けて作品を描きためていた。4話目『名画と鬼ババ』で個展が開かれる。6話目『くたばれ評論家』で、パパの個展を見た評論家剣氏とのバトルが描かれる。

7話目『春の嵐』では、ポンコツというエンジン音の車を運転して、スケッチ旅行に出掛けている。その後も風景画を描きにたびたび外出している。

8話目『一千万円・3時間』では、魔美の絵がなんと1000万円で売れる。

そして9話目『どこかでだれかが・・・』にて、初めて魔美が実際にモデルとなっているシーンが描かれる。この時にパパの歌の設定が明らかとなり、幅広いレパートリーが明かされる。


それではここから、佐倉十朗の全曲紹介(セットリスト)といきたい。歌った部分の歌詞を抜粋しつつ、曲名を紹介していく。そのミーハーさにご注目してもらいたい。


①「失恋レストラン」(清水健太郎・1976年)
「つくってやってよ 涙わすれるカクテル」

『どこかでだれかが・・・』

「東京娘」(桜たまこ・1976年)
「ちょっぴりの しあわせが好き~」

『どこかでだれかが・・・』

「あばよ」(研ナオコ・1976年)
「あの人は あの人は おまえににあわない」

『どこかでだれかが・・・』

「あんたが大将」(海援隊・1977年)
「あんたが大将~」

『どこかでだれかが・・・』

「湖畔の宿」(高峰三枝子・1940年)
「山のさびしい湖に ひとりきたのは・・」

『どこかでだれかが・・・』

乗ってきた時のナツメロソングである。


「北の宿から」(都はるみ・1975年)
「あなたかわりはないですか~」

『どこかでだれかが・・・』

「酒は涙か溜息か」(藤山一郎・1931年)
「酒~は~涙か~ため息か~」

『天才少女・魔美』

せっかく乗ってきた証拠のナツメロだったのに、魔美に気が散ると非難されて、歌うのを止められてしまう。


「マンボ・カバ」(斉藤こず恵)
「どうしてわたしはカバなのよ」
「カバ カバ カバ カバ  カバ カバマンボ」

「エスパークリスマス」

作曲は小林亜星。珍しく二小節を歌っている。


「雪の降る街を」(内村直也作詞、中田喜直作曲・1952年)
「雪の降る街を 雪の降る街を 想い出だけが 通り過ぎていく 雪の降る街を」
「遠い国から落ちてくる この想い出を この想い出を いつの日か包まん あたたかき幸福のほほえみ」
「雪の降る街を 雪の降る街を 足音だけが追いかけていく 雪の降る街を」
「ひとり心に満ちてくる この哀しみを いつの日か解さん」
「緑なす 春の日のそよかぜ~」
「雪の降る街を 雪の降る街を 息吹とともにこみあげてくる 雪の降る街を この空しさを この空しさを いつの日か祈らん」
「新しき光ふる 鐘の音」

『雪の降る街を』

ずばりパパの歌がメインテーマとなっている感動作『雪の降る街を』での楽曲。こちらについては、軽く触れた記事も書いているが、いつかがっつりと考察したいと考えている。なので、今回は詳細な解説は省略したい。


⑩「透明人間」(ピンクレディー・1978年)
「透明人間 あらわる あらわる~」

『魔美が主演女優!?』

魔美が大ピンチに陥ったところで、気持ちを逆なでするような楽曲となってしまい、魔美にその歌止めて、と言われてしまう。


「ドラえもん絵描き歌」(大山のぶ代・1979年)
「丸かいてチョン 丸かいてチョン」

『スター志願』

この歌が歌われた『スター志願』は1980年の作品で、その前年に「ドラえもん」(大山版)がTVアニメ化されている。「ドラえもん絵描き歌」は挿入歌的な楽曲だった。なお、作詞は藤子F先生ではない。しかし、十朗氏のレパートリーは本当に広い。


⑫「ハッとして!Good」(田原俊彦・1980年)
「ハッとして グッとして・・」

『まいもどった赤太郎』

またしても流行歌から。この楽曲で佐倉十朗氏の歌は終了となる。

アニメでも佐倉氏は絵を描きながら歌っているのだが、今回はそこまでは触れることができなかった。

そして・・

番外篇
任紀高志「思い出雲」
「あんなユメ こんなユメ~ 乗せてエ~ 流れ~るゥ~ 思い出エエエ 雲は~」

『スランプ』

レコード大賞を取った名曲(という設定)で、歌を聞いた魔美が「パパが歌っても素敵に聞こえるから元の歌はよっぽど素晴らしかったのね」と感想を述べている。

逆説的に言えば、パパの歌は基本的に音痴なのは間違いないようである。



「エスパー魔美」の全作品を考察中


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