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「ブービーちゃん、優しいのね」『白ネコが犯人』/ブービーだって大変よ③

パーマン仲間のコンビネーションが好きである。
1号=平凡な男の子
2号=サル
3号=謎の女の子
4号=関西人
5号=赤ちゃん

この中でやはりパーマン2号のサル、ブービーの存在感は際立っている。何せ動物なわけだから。動物と人間が混じったヒーローものというのは、古今東西見渡しても珍しいような気がする。

最近新作映画も公開となったマーベルの「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」が最も近い感じだろうか。アライグマのヒーローだったり、木のヒーローなども出てくるので・・・。


今回「ブービーだって大変よ」という名称で、パーマン2号が主役のエピソードを「旧パーマン」「新パーマン」から1本ずつ取り上げた。前者は猿知恵ともいうべきブービーの愛らしさが発揮しているお話、後者ではブービーの知られざる日常が垣間見れるお話だった。


本稿では、前作『2号の正体がばれた』で明らかになったブービーの日常が、さらに深掘りされるお話となっている。ブービーが実はパーマン仲間の中で最も忙しいのでは?という話題だったり、前作でも示したブービーの優しさが際立つ内容となっている。

個人的にかなりの良作だと思っていて、今回の小特集の目玉的作品と考えている。


『白ネコが犯人』
「小学三年生、四年生」1984年7月号/大全集8巻

本作はほとんどブービーしか出てこない珍しいエピソード。基本的に動物語がそのまま日本語のセリフで吹き替えられて描かれている。

冒頭、パーマン2号がパトロールへと飛び出していく。まず隣の家の番犬ジョンが夏バテしている様子を見て、いつか夜中に海水浴に連れていくよと約束する。

犬猿の仲だったジョンとの相克と和解については、『2号の正体がばれた』でたっぷりと描かれているので、こちらのチェックもお忘れなく。


2号は小鳥からすぐ来てと助けを求められる。タマゴがヘビに盗まれそうになっているというのだ。2号はすぐに飛んで行って、いたずらヘビを掴まえて、もう盗まないと誓わせる。2号は言う。

「動物の世界にもけっこう事件があるんだよな。パーマン仲間じゃ僕が一番忙しいかもしれない」

何とブービーは、人間社会の悪者退治と並行して、動物世界の日常的な事件も解決していたというのである。


さて、とある家の屋根の上で近所の猫たちが集会をしている。数匹の猫が言い合いとなっていて、何やら事件の予感。2号が立ち寄ってみると・・・

最近近所で、白猫が魚などを盗んでいる事件が頻発しているらしく、そのことで人間たちが怒っているのだという。ペットの猫は部屋に中に繋いでおけなどという話がでており、猫たちは迷惑を被っているらしい。

猫の輪の中で、ピュアそうな見た目の白猫が、「ドロボーなんて一度もしたことがない」と弁解しているが、集まった中で、白猫は一匹のみ。もはや弁解の余地はない状況となっており、リーダー格の黒猫に「町内からの追放」を命じられてしまう。猫世界の村八分である。


2号は一人立ち去っていく白猫にどうして盗みをしたのか聞いてみる。すると、白猫は犯行を完全否定。いつもどっさりご飯を食べているので、盗んだことはないのだと言う。確かに犯行動機がないので、話の筋は通っている。

白猫が思わず涙を零しているのを見て、2号はこの子が嘘をついていないと直感する。そして「真犯人を探してあげよう」と2号は事件解決に名乗りを上げる。

真犯人を見つけるには、現行犯で取り押さえるしかない。目を皿のようにして見張ろうと決意する2号なのであった。


白猫の名前はミー。近所から泥棒扱いされてしまい、台所でテーブルに繋がれてしまう。自由が信条のネコにとって、非常に耐えられない仕打ちである。

2号は一生懸命に見回りをしているが、なかなか見つからない。どの家でも晩ご飯の支度が始まり、いい匂いが空腹を刺激する。自分もご飯を食べに戻ろうかと一瞬思うが、こんな時こそ、ドロボーネコの活躍する時間帯だと鼓舞する。

するとこの勘があたり、「こらっ、ドロボーネコ!!」という声が上がる。声の方向に向かうと、何かおかずをくわえた白猫が家から飛び出してくる。やっぱり犯人はミーだったのか・・・?


するとここで夕立が降ってくる。雨が白猫に当たると、見る見るうちに黒猫に変化する。それはミーを町から追放だと言ったノラ猫のクロである。2号はすかさずクロを取り押さえるが、証拠もなしに言いがかりをつけるなと強く反論してくる。

そしてコロッケをまたあの白猫に盗まれたという人間の声が聞こえてくる。今度こそ許さないといきり立つ女性。2号がすかさず間に入るものの、何よこのサルと言って殴られてしまう。


ここで2号はパーマン仲間に助けを求める。2号からしても、持つべき者は仲間なのである。話を聞いた3号は黒猫を追い回して写真でも撮るしかないと考える。

一方の黒猫は「あんなコロッケ一個じゃ足りない、でっかい魚でも盗んでやろう」などと企んでいる。そして周囲を念入りに見渡してから、古い倉庫の破れた窓から中へと入っていく。

食べ物などないはず・・・と思っていると、クロが真っ白な粉まみれで倉庫から出てくる。そして、よその家の台所に入って、お魚をくわえて逃げていく。

どうやらノラ猫のクロの手口は、倉庫にある白い粉を使って白猫に扮装して、盗みを働くということであったようだ。白猫のミーに冤罪を押し付けていたのである。


白猫を飼っている家に、泥棒されている家の人たちが押しかけて、「今度こそ捨ててきてもらいましょう」と詰め寄っている。そこへ冤罪を晴らす証拠写真を持って、パーマンたちも集まってくる。

ネコたちの集会にも顔を出し、証拠写真を提示する。白猫に悪いことをしたと皆も反省する。逆に犯行がバレてしまった黒猫は、「この町から出ていけば良いんだろう」と啖呵を切る。

しかし、威勢がいいのはそこまで。黒猫は一人トボトボと歩きながら「これから先、どこでどうやって食っていこう」と酷く落ち込んでいる。考えて見れば、ノラ猫が食べ物を確保するのは難しい。サバイバルのために、他の猫のことなど構っていられないのも理解はできる。


そんな黒猫の前に、2号が姿を見せる。黒猫は「まだ何か文句あるのかよ!!」と警戒するが、2号は何と言っても「優しいブービーちゃん」(Byパー子)である。

ブービーは黒猫を背に乗せて飛んでいく。

「となりの町に大きなレストランがあるんだ。そこのゴミバケツには、毎日美味いものがたっぷりと・・・」

『2号の正体がばれた』に続いて、ブービーの信条「罪を憎んで人(猫)を憎まず」が発揮されたラストシーン。人の物を盗むのは良くないことだが、盗んでしまう方の事情も無視できない。犯行動機が明らかなのであれば、その動機となっている問題を解決するのが、真っ当な更生社会と言うものだ。


黒猫は思わず、ブービーの優しさに涙をこぼす。本当の優しさを知って彼は、きっと隣の町で更生するに違いない。



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