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50億円を見つける超能力犬!?『ここ掘れフヤンフヤン』/名犬コンポコ②

「エスパー魔美」の名相棒・コンポコ。ただの可愛いペットではない。完璧に魔美の言葉を理解し、自ら意志を伝えようとする能力もある優れた名犬なのである。

藤子Fノートでは、「エスパー魔美」の全62話の全てを解説していこうと頑張っているが、一通り終えたら、コンポコの活躍部分だけ抜粋した記事を書いてもいいかもしれない。

それほどに各話、多彩な活躍をみせるキャラクターなのだ。


さて、「名犬コンポコ」と題して、コンポコの愛すべきキャラクターが発揮されているエピソードを紹介する記事の第二弾。前回の記事は下ですので、こちらもどうぞご一読下さい。


『ここ掘れフヤンフヤン』
「少年ビックコミック」1980年4号/大全集4巻

本作はコンポコを主人公にしたようなタイトルではあるが、前回紹介した『名犬コンポコポン』の時のような活躍を見せるわけではない。ただし、特殊な能力を発揮しつつ、お間抜けな行動も取ってしまうコンポコの魅力は最大限に発揮できている作品である。


冒頭、急いで帰宅する魔美にいつもの念波が届く。テレポートすると男が恨めしそうに歩いていて、魔美は強力な恨みを感じるが、急ぎの用ではないということで、その場を離れる。

家に帰ると、魔美はパパにモデルの用はないかと「営業」をかける。魔美は4500円の素敵なジャンパースカートが欲しいのである。ところがそこにTVから景気の悪いニュースが流れてくる。

原油が値上がりし、電気料金やその他の物価を押し上げるインフレの波がくるというのである。これを聞いたパパは、「無駄遣いはいかんよ」と魔美のモデルの要請をかわすのであった。

ちなみに本作が掲載された1980年初頭は、昨年からのインフレの波に苦しめられていた時期であった。


部屋に戻る魔美は、スカートを諦めきれない。そこで、本棚の本の間にお札をしまっているのでは、と一縷の望みを願うと、コンポコがフヤンフヤンと一冊の本を示し、そこから500円札が見つかる。

でもそれではお金が足りない。そこで次なる頼みの綱は・・・と、高畑君が思い浮かぶが、お金はとても縁があるようには思えない・・。


魔美は高畑の家に出向き、「溺れる者はワラをも掴むというので一応相談に来た」という酷い言い草で、お金の話題を振る。高畑はムッとしつつも、「ドーンと50億円手に入れないか」と大変に大きな話をしてくる。

50億円と聞いて、文字通りひっくり返る魔美。高畑の言う50億とは、戦国時代の豪族の埋蔵金のことであった。

魔美たちが住む佐間丘陵地帯には、細山田正輝という豪族が砦を築いており、砦には50億円相当の黄金が隠されていた。砦が北條氏に攻め落とされた後も、黄金は丘のどこかに眠り続けているという。

もちろんこれはただの民間伝承かも知れない、これまでアタックした人はいたが見つかっていない。とフォローに入ろうとしたところで、既に魔美の姿はない。魔美は、この話を真に受けて、本気で宝探しに挑もうという訳である。

なお、高畑が語る佐間丘陵地帯、細山田正輝といった名称は、架空のものである。佐間は多摩のモジリ。そして、北條氏が戦国時代に多摩地区を勢力下においたのは事実である。


さてここからが、コンポコの出番。先ほど本の中から500円札を見つけ出す芸当を見せた。魔美は、コンポコの「霊感」を借りて、ここ掘れワンワンとやってほしいと言い出す。

最初は「フン」と鼻で笑うコンポコだったが、「50億円であぶらげが何枚買えると思うの」とけしかけられ、あっと言う間にやる気になる。ドラえもんがどら焼きに釣られるのとよく似ている。

まずはコンポコのお金を探す能力を強力にするべく訓練開始。庭で10円を埋めて試すが、ものの見事に見つけ出す。お金をケースに入れて深く埋めてもすぐに探し当てる。やっぱりコンポコは、花咲かじじいの犬のような嗅覚を持っているのだろうか。


それではもっと広い場所で本格的に訓練しようということで、家からだいぶ離れた広い野原にテレポートする。魔美はお金を隠すまで、コンポコに遠くまで行っておくように指示を出す。コンポコもやる気満々である。

と、そこへ念波が魔美を捉える。発している場所は近くの丘の上に立つ家のようだ。テレポートして向かうと、その家は思っていた以上に崖っぷちに立っており、何かの拍子に落っこちてしまうように思える。

魔美は玄関を開けようとしても開かない。すると中から声がかかり、用事があるなら庭に回って欲しいという。家がかしいで、庭に面したガラス戸しか開かなくなっているのだ。


家の中の人は、物語冒頭で恨みの念波を送っていた男性であった。それを踏まえて、「何か嫌なことでも?」と尋ねると、「どうしてわかった」と驚きつつ、この家の置かれている状況を説明し出す。

・退職金やら貯金やら人生の全てをつぎこんで買った家だが、ひどい欠陥住宅だった
・手抜き工事、地盤もフニャフニャ
・崖が少しずつ崩れていて、このままでは家ごとひっくり返る
・危険なので妻と子は実家に避難させている

家の中を歩くのも危険という状況なのだが、工事を請け負った業者は取り合ってくれず、逆に暴力団みたいに脅してくるのだという。ろくに調べずに買った、買い手の責任ということになっているのだ。


すっかり気を落としている男性。魔美は家に帰り、このことを家族に話す。悪徳業者に騙されるケースがあるのだ、などと会話をしていると、コンポコの姿がないことに気付く。先ほどの原っぱに置き去りにしてしまっていたのである・・。

迎えに行くと、フガッと大泣きしているコンポコ。・・・申し訳ないが、可愛い姿ではある。


さて、埋蔵金発掘準備は着々と進んでいる(魔美談)。でも一つ気がかりなのは、50億円を見つけた場合に、自分のものになるのだろうかということだ。

物知りの高畑に相談すると、民法241条「埋蔵金の発見」について、条文をそらんじて見せる。本作では高畑は文語体で条文を引用していたので、ここでは2004年以降にできた民法現代語化後の規定を抜き出しておこう。

第241条【埋蔵物の発見】
埋蔵物は、遺失物法の定めるところに従い公告をした後6箇月以内にその所有者が判明しないときは、これを発見した者がその所有権を取得する。ただし、他人の所有する物の中から発見された埋蔵物については、これを発見した者及びその他人が等しい割合でその所有権を取得する。

高畑は二つのポイントに絞って解説している。
・埋蔵金を埋めた者の先祖が名乗り出た場合、宝はその人のもの。ただし、時代が古くなると系図の証明などもできなくなる。
・発掘した土地の地主がいる場合は半分こ。

極めて端的な説明で、それを聞いた魔美は「少なくとも25億円!」と喜んで、鼻歌まじりに去っていく。


魔美は帰宅後、「訓練の仕上げをする」とコンポコに通達。しかし昨日置いてきぼりにされたことにヘソを曲げている。ところが、「山のようなあぶらげ!」という魔美の悪魔の誘いに、結局興奮して、訓練を続けることに同意してしまう。

仕上げと言うことで、魔美は全財産の500円札(先日本の間からコンポコが見つけた札)を埋めることに。

・・・ ・・・

ところが、夕暮れ時まで探しても、結局500円は見つからずじまい。全財産を失った魔美と、自尊心を失ったコンポコは二人して大泣きするのであった。


さて、ここで今回のコンポコの主たる出番は終了・・。お金を見つけることができるという、利便性抜群の超能力を発揮しつつあったコンポコであったが、結局モノにはならなかった模様。

少額だったり、部屋に隠されているヘソクリを見つけるくらいならできそうだが、とても50億の埋蔵金を探し出せるような能力はなかったと思われる。・・残念!


さて、お話はもう少し続く。

その夜は大雨がが降っていたが、魔美は何かを察知してガバと起き上がる。昨日お邪魔した崖の脇の家へと向かうと、豪雨の中、家が大きく傾いている。

そして崖の下へと家が崩れ落ちた刹那、とっさに中のおじさんだけをテレポートさせる。ところが一命を取り留めたおじさんは、「あのまま埋まった方が良かった!!」と口にする。彼の人生全てが、泥の中に埋まってしまったからである。

「生きてさえいれば・・」と魔美は慰める。すると土砂の中に何かを感じる。崩れ落ちた崖を見ていくと、空洞ができていて、中を魔美が覗くと・・・。魔美は、ワ!ワッワッと声なき声を出して驚愕する。


翌朝。がけ崩れの家に住んでいた男が、幻の少女に命を救われ、50億円の財宝まで見つけてくれたという、ビックニュースが流れる。高畑これを聞きつけ、少女とは魔美ではないかと話しかける。

おじさんは少女を探しており、名乗り出れば宝を半分差し上げたいと言っているらしい。しかし、当然、エスパーであることもバレてしまうので、名乗り出られるわけもなく・・。

それどころか、昨晩、雨に打たれたり土砂を被ったりしたせいで、すっかり魔美は風邪を引いてしまう。そのため、帰宅後、久しぶりにパパが連作「少女」に取り組みたいと、モデルの仕事を振ってくるのだが、残念ながら風邪をこじらせ、その役目は務まらない。

そんな悲惨な魔美の様子を、離れた場所で見ているコンポコなのであった。



さて、コンポコが活躍するエスパー魔美のお話は、まだまだ存在する。ただ、「名犬コンポコ」での切り口はここまで。また、別の作品紹介にて、コンポコの活躍についても触れてみたいと思う。


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