見出し画像

自分は小説読みでいたい

映画「花束のような恋をした」は印象的なセリフやシーンが多いけれど、僕がフムフムと思ったシーンの一つに、菅田将暉(麦)が就職して、読む本が変わった場面がある。

それまで今村夏子とか舞城王太郎とかの小説を愛読していたのに、急に本屋では自己啓発本を手に取るようになる。

有村架純(絹)とはお互いに、相手の本棚に並ぶラインナップを見て、「自分と同じ本棚がある」と感想を述べていた。同じようなものを読んでいるという事実が、二人の関係性を一気に縮めたのである。

ところが、それまで読んでもいない方面に読書の対象が変わったシーンを見て、二人の現在地や向かう先が決定的に食い違っていることが明示されてしまう。

それは何とも切ないシーンだし、双方の気持ちも良くわかるので、何とも居た堪れない気持ちになるのである。


noteやブログ界隈において、読者を趣味だと公言している人はかなり多い印象だが、実際にどんな本を読んでいるのかというと、かなりの割合でビジネス本だったり、自己啓発本だったりする。

それこそ今村夏子を愛読してますみたいな人は滅多にお目に掛かれない。圧倒的に小説読みの読書家の方が少ないように思われる。


では僕はどういう人物かと言えば、そもそもほとんど読書をしてない人間となっていて、ビジネス本も小説もあまり読めていないのが実情である。

つまり、「ビジネス本ばかり読んでないで小説を読もうよ」などと、口が裂けても言ってはならない人間であり、麦クンを笑えない立場なのだ。


とは言いつつも、ビジネス本か小説かのいずれかが好きかと言えば、圧倒的に小説の方である。元来物語が好きだし、ストーリーを語る文章が好きなのである。

もちろん、必要に迫られてビジネス書にも手を出すし、何ならそっちの方が読みやすくて気楽なのだが、それではいけないと戒める自分がいる。

別に本の種類に優劣はないし、活字でなくてもマンガを読むことでも立派な読書の内だと思う。

そういう事実は全部認めつつも、自分はいつまでも「小説読み」でいたいと思う。うまく言語化できないプライドがそう思わせている。

なので、そのよくわからないプライドを守るために、月に数冊は絶対に小説を読むようにしていたりする。

昔から小説や物語を読むのが好きだった。それを捨てたくないという気持ち、変わりたくないという気持ちがそうさせるのかも知れない。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?