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サルもおだてりゃ・・『ムキキの社長』/ブービーだって大変よ①

久しぶりのパーマン特集。今回はパーマン2号ことブービーが大活躍(?)するエピソードを立て続けに紹介していく!

いかにも間に合わせといった感じでパーマンに抜擢されたみつ夫。スーパーマンはあと一人も急ぎ見つけなきゃと2号を探したようだが、なんと選ばれたのは動物園のサル。

一体どんなつもりなんだスーパーマン!とかって思うけれど、僕は敢えて言いたい。一体どういうつもりだったのだ、藤子F先生!と。


少年とサルという藤子先生の天才的な発想でコンビとなったパーマン1号と2号。みつ夫はともかく、おサルをヒーローとするのはかなり心許なく見えるわけだが、しかしこのサル、失礼、パーマン2号は思いの外有能で、1号となかなかの名コンビぶりを発揮するのである。

具体的に、人間の言葉を完全理解しているブービーは、最初は身の回りの物やジェスチャーを駆使してコミュニケーションを取っていたが、徐々に聞き手のパーマンたちもそれに慣れてきて、最終的には普通に会話ができるようになる。

また探し物の名人として、訪ね人や犯人の居場所などを見つけ出す能力にも長けている。

さらに、この特集内でも書いていくが、他の動物たちの言葉を聞き取ることができるので、もしかしたら、日々動物ネットワークで情報を集めているのかもしれない。


まず取り上げるのは、1960年代の「旧パーマン」の中から、お猿のパーマンだとバカにした悪い奴らに利用されそうになるお話。ブービーの弱点が露わとなる展開が待ち受けている・・・!


『ムキキの社長』
「週刊少年サンデー」1967年38号

まあ誰がどう考えてもサルがヒーローになるというのは、かなりリスキーなことである。知能の問題もあるし、言葉の問題も、体力の問題もある。何より、悪者たちがサルの弱点を突いて、パーマンセットを盗んでしまうかもしれない。

実際に2号は、眠り薬入りのバナナを与えられて眠ってしまったこともある。コミュニケーションがうまくいかず、頼りにならないこともあった。そして今回も何やら悪事に利用されそうな気配が濃厚な立ち上がりとなっている。


冒頭、なぜかブービーが会社の社長を拝命する。会社名は板田木商事株式会社。何かを板田木(いただき)する会社ということだろう。スーツに蝶ネクタイ姿にさせられ、名刺を持たされ、葉巻なども与えられる(むせて大変なことになるが)。

2号はすっかりその気になっているわけだが、社長就任をお願いしてきた二人組はどうも怪しい雰囲気を漂わせている。二人の内一人は、ブービーにうやうやしい態度を取っているが、弟分の方の男はサル呼ばわりしているのだ。


2号が社長になったと聞いて、パーマンもパー子も驚き、そして感心する。本作は二人がブービーに感心するという場面が最初と最後に出てくる構成となっている。

で、具体的にどんな仕事をしているのか尋ねると、仕事はないという。それはおかしいということで、会社に向かうパーマンとブービー。

会社では下っ端の方が一人留守番していたのだが、社長であるブービーを見て「なんだサルか」と完全に見下した態度をとる。何か仕事をさせろ言っているとパーマンが翻訳して伝えると、お茶くみやら掃除やら男のシャツとパンツの選択を命じてくる。

それを見たパーマンは、お手伝いのなり手がいないので社長という肩書で雇ったんだと喝破し、こんな会社辞めちまえということで、ブービーと共に退社する。


ところが下っ端がアニキに報告をすると、「ブービーを怒らせたら、俺たちの計画はどうするんだ」と激昂する。そして社員教育がなってないと言い訳してブービーを呼び戻し、ハンコを押す(だけ)の仕事を与える。

また部下に電話をさせて、ブービーに対応させたりする。この時、2号が受話器を出て「モヒモヒ」と受け答えしているのがカワイイ。

パーマンは「ここは何をする会社なのか」と尋ねると、会社の秘密は外部に漏らせないと却下。そしてブービーをチヤホヤする社員を見て、パーマンは付き合っていられないということで、会社を後にする。


さて、パーマンがいなくなると、怪しい二人の社員は腹案の「計画」についての打ち合わせを始める。ちなみにブービーは昼寝中・・・。

そして真夜中になり、社長もお帰りの時間だと告げられる。そして「社長らしい立派なお屋敷を用意してあるので、そこに住んでもらいたい」などと言い出す。

「ウホ!!」と喜ぶ2号。男たちに連れられて、夜中の住宅街を歩き出す。そこへ巡回中の警官が職務質問をしてくるのだが、パーマン2号だとわかると「彼なら悪いことするはずない」ということで、逆に活躍を労ってもらう。


そして、とうとう男たちの狙いが判明する。ブービーを社長宅だと言って紹介した家は、彼らが強盗したいと考えていた金持ちの家・・。要はブービーを騙して強盗を手伝わせる作戦だったのである。

ドアが固いと騙して入り口の鍵を壊させて住居侵入に成功。家の中で住人が寝ているのを見て、他にも屋敷があると言い出し、盗まれないようにと金庫だけは持っていきましょうと言って、金庫を盗みだす。

1軒目に続き、2軒目でも金庫泥棒に加担するブービー。ここまでは完全にブービーの浅はかさが悪用されている。

ところがここでパーマンバッジが鳴る。2号は咄嗟に金庫を投げ捨て、呼び出された場所へ行くと、そこは金庫を持ち出した1軒目のお屋敷。ブービーはここで全てを理解し、「アヒー、ウキャキャ」と大慌て。

そのまま元の泥棒のところへと飛んでいくと、先ほど投げ出した金庫の下敷きになっている。パーマンとパー子は、泥棒だと見破っていたのかと感心しきり。一人恥ずかしがるパーマン2号であった。


本作はブービーの弱点が出てしまった一作。その弱点とは、知能でも体力でもなくて、単純におだてられるのに弱かったのである。サルもおだてりゃ木に登る。本作の隠れテーマは、そういうことなのである。




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