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和亀よどこへゆく

日本にしか生息しないカメが各地から消えてゆく

ニホンイシガメと呼ばれる日本固有種である

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人間の手によって

多くの人に知られることもなく、様々な地域からいなくなっている

人間が引き起こした直接的, 間接的な影響によって, この貴重な固有種が絶滅しつつあるのに、多くの人はその事実を知らずにいる


だからこそ、この問題を社会へと発信し、多くの人たちがこの問題を認識し, 適切な対策を検討・実施することにより, この問題を解決する必要がある.

では一体、このカメがいなくなっている原因は何なのか

まずはこの点を整理し、適切な対策案を検討していかなければならない


このカメがいなくなる大きな原因は大きく5つある

生息地の破壊

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生息地となる河川や水路の川岸はコンクリート護岸が施され、湿地は埋め立てられることによって生息地が消えていく. 重機を用いた工事により直接的にカメの死亡率が高まるとともに, 改変された生息地は生息上不適となるために環境収容力が激的に低下してしまう. これにより, 改変された環境ではニホンイシガメが少なくなってしまう.

これが最も重大な問題であり, 人間にとっては最も理解しやすい原因であるだろう. 人間が安全に生活するために必要なこともあるが, カメたちにも優しい改変に抑えられないものか.


外来カメ類との競合

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日本には, ニホンイシガメと競合する同じカメ類は, ニホンスッポンを除き, 全く生息していなかった. 

しかしながら, 様々な目的のために移入された外来のカメ類が野外へと放逐され, 各地で個体数を急激に増加させていった.

北米原産のミシシッピアカミミガメと中国及び韓国原産のクサガメである

この2種のカメ類はニホンイシガメと生態が似ており, 資源競争を介して大きな負の影響を与えている.

まず, 餌資源の競争により, ニホンイシガメの餌生物を減少させてしまう.

また, 体温調節や体表面の乾燥による健康維持に必要な日光浴を行うための日光浴場所を独占し, ニホンイシガメが日光浴を行いにくくなるため, 本種の健康維持に悪影響を与えている.

しかしながら, この外来カメ類がニホンイシガメを減少させている証拠を示した研究が非常に少ないため, ニホンイシガメに与える影響にはよくわかっていない点が多く残されている. そのため, ニホンイシガメの保全を目的とした外来カメ類の防除対策はあまり進んでいない.


近縁外来種(クサガメ)との交雑

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中国及び韓国から移入された外来種であるクサガメは, ニホンイシガメと交雑することにより大きな影響を与えている.

交雑により稔性のある交雑個体が生まれることで, クサガメによる遺伝子浸透が進行していると懸念されている.

また, クサガメの♂とニホンイシガメの♀が交雑することで, 本来ニホンイシガメが生むべきニホンイシガメが生まれにくくなっている, といった別の問題も認識されている.

このように, クサガメが侵入した環境ではクサガメによる遺伝子浸透が生じたり, ニホンイシガメが子孫を残しにくくなっているため, ニホンイシガメをこれ以上減少させないためにはクサガメを取り除く必要がある.


外来捕食者アライグマによる捕食

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日本には大人にまで育ったこのカメを食べる在来の捕食者はいなかった. 卵や若齢個体を捕食する在来捕食者はたくさんいたが, 大人になったこのカメは天敵がいないために無敵であった. しかしながら, 北米より連れてこられた可愛いペットが, 新たにこのカメの捕食者となってしまった. 

それは, 特定外来生物アライグマである

アライグマは原産地において, 在来のカメ類を食べる捕食者であるため, 移入された日本においてもその能力を発揮して, ニホンイシガメを簡単に捕まえて捕食する.

アライグマが侵入する以前は, このカメは卵や小さな個体のほとんどが在来捕食者によって食い尽くされたとしても, 成体の長い寿命と天敵がいないという無敵な状況から, 生涯の間で複数の子孫を残すことが出来ていたため, 個体群を安定的に維持することが出来ていた.

しかしながら, アライグマはこのカメたちが個体群を維持するために進化させてきたこの戦略をぶち壊してしまった. 無敵だったはずの大人までも簡単に捕食してしまうため, どんどん, ニホンイシガメの生息数が減少していく.

このように, 野外に生息するニホンイシガメを絶滅させないためには, 無敵だった大人のカメまでも捕食してしまうアライグマをなんとしても取り除かなくてはならないのだ. 


商業目的の乱獲

越冬調査

このカメはペット用に販売するために乱獲されてしまう. 大した需要があるわけでもないのに, 捕獲された個体がごっそり持っていかれてしまう. この乱獲は非常に問題だ. 

カメは成熟するまでにかなりの時間がかかる. そして, 卵や産まれたばかりの個体のほとんどが捕食者に食われてしまうため, 卵が産めるお母さんになるまで生き残れる個体は非常に少ない. 

だからこそ, 一度でも個体数が激減してしまうと, もとの生息数にまで回復させるのは非常に難しい.

カメの乱獲はやめてほしい…

今となっては, ニホンイシガメの商業利用に規制をかけないと, 乱獲は無くならないだろう. 

運がいいことに, 愛好家によって, 本種の飼育繁殖が上手くいっているのだから, 乱獲はやめて繁殖個体だけを販売してくれないだろうか.


こんな感じで, ニホンイシガメを減少させる原因はいくつもある. どれか一つだけが問題なのではない. どの要因もそれぞれが本種を絶滅に追い込む重大な問題なのだ. この可愛いくて貴重なカメを, このカメが野外でわちゃわちゃしている日本の風景を次世代へと繋げていくために, 我々は上記の減少要因の1つ1つに焦点を当てた対策を実施していかなくてはならない.


いし

絶滅させはしない

俺が死ぬまで続ける仕事はこれだ

と誓った, あの時の忘れていた気持ちを最近になって思い出した


ここから先は2020/1/4に追加しました.

だいぶ前にも似たようなことをまとめており, そちらでは参考文献を整理してありましたので, 気になる方はこちらをご覧ください.









カメは売らずにカメでお金を稼ぎたい。そんなお年頃です。