先日のサマソニでおよそ100人が体調不良で手当てを受け、熱中症によるものとみられるとして話題になった件。少なくとも夏フェスの歴史における1つの転換点として語られる日になるのは間違いないだろうな、と思ってしまう。

100人という数字のインパクトも凄いのだけど、このニュースがネットに出たのは14時16分。思いきりフェス真っ只中だし、100人という数字は当然この時間よりも前まで、恐らく13時とか13時半ぐらいの時点での人数なわけで、これはフェス史上聞いた事がないレベルだと思う。

しかもサマソニは屋内と屋外で同時開催していて、熱中症になる人って屋外にいる事が大半ですよね。となると、あのマリンスタジアムの周辺にいた人が、たったの2～3時間でバタバタとダウンしてそれが100人にもなってしまったというのは、改めて考えてみても大変な事態である。1～2分に1人ダウンしてるレベルって、ちょっとすごくないか？

11:00のSUMMIT All Starsからマリンステージのスタンディングエリアにいた身として、非常に暑かったのは事実である。どのフェスに行っても暑いけれど、この時は確かに特に暑かった気がする。ライブが進む度にNewJeans待ちの観客が増えてきて、中には人波かき分けて無理矢理前に来ようとする人もいた。そうするとどんどん人口密度が高くなって、まあ身動きは取りづらくなるわけで、こまめに汗を拭いたり水分補給をしたりでなんとか立っていられる状態。帽子をかぶってない人、飲み物を没収されてしまった人、そりゃきついでしょうよ。熱中症対策として時々スタッフが観客目がけて放水を行うのだけど、それがチョロチョロではなく豪雨レベルの量で、汗と混じってびしょびしょになってしまったのも、精神的にしんどかった。

NewJeansのライブが始まった後、自分の近くで抱えられて運ばれていく人を見かけて、ああこの暑さは危険なヤツだなと悟った。自発的に離脱する人も何人かいたし、ダウンした人の周りで救護を呼ぶ声も聞こえていた。ライブは「Ditto」から始まって次々にキラーチューンがバンドセットで鳴らされる様には大興奮だったし、そりゃ盛り上がりはするけれど、こんなもんじゃないんじゃないかという気もする。動画を撮るのと暑さに耐えるの必死な感もあったし、本来起き得る歓声の何割かにはなっていたと思う。ちなみに前半がバンドセット、後半がオケでのパフォーマンスで、その間メンバーがステージからハケる時間が数分あった。その数分がすごく長く感じて、改めて暑さにやられてしまった人、結構いたんではないだろうか。後半のETAとか、もっと盛り上がってもいいぐらいだったし。

ライブが終わって出口に向かう時、身体を屈めてちょっと辛そうにしてる人を見たので、大丈夫？と声をかけてみた。救護を呼ぶか聞いたら僅かに頷いたように見えたので「すいませーん！救護の人～！」と叫ぶと、来てはくれたものの、もう救護室はいっぱいだと言われてしまって、これは只事じゃないんだなと気付いた。事態を察知した人達が駆け寄って来て、寝そべる彼を仰いだり、大丈夫？と声をかけたり、水を分けてあげた人もいた。救護による十分な手当が期待できない中、観客同士が助け合わないともはや乗り切れない状況だった。自分の持っていた飲み物はもうほぼ切らしていたので分けてあげる余裕はなく、スタジアムを出てから並んでようやく買えたスポーツドリンクに、生き返るような思いがした。

スタジアムの周りを歩いていると、救急車が少なくとも3台スタンバイしていたのが見えた。

一応万が一に備えて待機はしているんだなと思ったけれど、後で同じ場所に行ってみると、その3台ともが停まっていなかった。出動したんだろうか。車椅子を押されて移動する人の姿も何回か見た。フェスでは見た事のない光景だったけれど、あれは一体何台用意されていたんだろう。

ちなみにこの日の気温は13時頃までがピークで、その後は暑いけれどもまあこれぐらいはあるよねレベルだった。本当にあの時間の暑さが突出していて、それが大人気のNewJeansにぶち当たってしまったという、事故のような側面もなくはない。

とは言えこれ、放っておくわけにもいかないのである。様々な意見が飛び交っているといっても、現時点で来年の開催について話が進んでいないわけはないのですぐには無理だろう。熱中症はとにかく暑さが問題なので開催日をずらせば一発で解決するのだが、それでは他のフェスの日程にも影響が出るし、そもそもマリンスタジアムは野球場なのでいつでもいいというわけにはいかない。スタンディングブロックにおけるスポーツドリンクの許可は人工芝の保護という観点からNGだし、何かやらかした場合に今度はスタジアムを借りられなくなる恐れがある。

では一番暑い日中の時間を避けて夕方からの開催にしてはどうか、となるとラインナップは大幅に縮小し、現在のようなビジネスモデルは成り立たなくなる。それに屋内は午前から始めたとしても特に問題がないわけで、幕張メッセだけを先に始めようとすれば当然そちらに人が集中してしまう。

それならいっそ、とマリンスタジアム自体の不使用も最終手段としては考えられるが、そうなるとビーチステージも廃止になってしまうだろうし、夏フェスとしての風情がなくなる上に面子も一気にしょぼくなる。全てを円満に解決する方法、もはやないんじゃないかと思う。

個人的にはサマソニよりもフジロック派ではあるのだけれど、特に今年はサウナが至福の時間で、改めてサマソニの価値を見直す機会にもなった。(日が落ちていくビーチを眺めながらととのったあの時間はマジで最高...)

これからも続いてほしいけれど、近い将来、現在と同じような開催が難しくなっていく事は十分に考えられる。細かな事情はそれぞれ違えど、そろそろ夏フェス全体で、昨今の猛暑に対する何らかの方針やメッセージを発してもいい頃なのかも知れない。昔ハロプロがやっていた”熱っちぃ地球を冷ますんだっ”という言葉の重みを、今更ながら身に沁みて感じる夏である。