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グリッチ・ルールの変更/『シャドウラン 5th Edition』ハウス・ルール19

01 前口上

 この記事は新紀元社から発売されている『シャドウラン 5th Edition』日本語版ユーザーに向けた、「非公式」のルール調整案(Tweaks)です。
 記事の閲覧・利用に関する前置きは下の記事を参照してください。

02 グリッチ・ルールの変更

 この調整では基本ルールの“1の目"のルールを変更します。新しいルールでは、テストの際の「1」の目は何らかの問題が発生したことを意味します。しかし、キャラクターの技量が充分なら(つまりヒットがたくさん出ているなら)、「1」の目は何の問題も起こしません。多くのダイスを振るキャラクターは、よりリスクの高い選択肢を選ぶことができ、その分多くの問題に直面します。技量の低いキャラクターにはそれが分からないだけです。


(1). 新しい「1」の目のルール(無理をする)

 テストの際、「1」の目が2つ以上出ていた場合、「1」の目2つをヒット(5の目として扱います)1つに置き換えることができます。この時、「無理をした」結果として、テストを行うキャラクターは1マスの抵抗できない身体ダメージを受けます。

例:ダイス5個を振り、出た目が1,1,3,5,6だった。このままでは2ヒットだが、1が2つ出ているので1マスのダメージを受ける代わりに1ヒットに置き換え、合計で3ヒットにできる。

 エッジ・ポイントを使用して「6」の目を振り足した場合、新しい出目が「1」だったならやはり置き換えに使用できます。エッジ・ポイントを振り直しに使用した場合、「1」の目が出ていてもすべて振り直しになります。「1」の目を置き換えた後では振り直しできません。

(追記)
 無理をした結果ダメージを受けるのは、その動作が終わった直後のタイミングになります。ダメージが身体リミットを超えている場合は転倒します。結果的に意識を失うなどがあったとしても、テストそのものは成立します。

(2). 新しいグリッチのルール(クリフハンガー)

「1」の数が振ったダイスプールの半分を超えていた場合(従来のルールの「グリッチ」や「クリティカル・グリッチ」の時)、キャラクターはヒットへの置き換えを行って「1」の目の数を減らし、(元々の)ダイスプールの半分以下になるようにしなければなりません。そうしたくない場合、残りのヒット数に関わらず、あなたは装備をひとつ喪失します(「装備の消耗と喪失」を参照)。これはあなたが何らかの致命的な問題に直面し、装備を喪う代わりにピンチを切り抜けたことを表します(切り抜けていないかも知れません)。これを「クリフハンガー」と呼びます。
 クリフハンガーは残りのダイスのヒット数に関係なく起こり、テストの成否には直接影響しません。装備を喪失したがテストは成功だったということもあり得ます。
 エッジ・ポイントを使用すると、(グリッチやクリティカル・グリッチを無効にする際のように)この効果を無視できます。逆に、「1」の目を置き換えず、エッジ・ポイントも使わずに装備の喪失を受け入れた場合は「クリティカル・グリッチを受け入れた」ものと見なし、エッジ・ポイントを1点回復します。

例:再びダイスを5個振り、1,1,1,2,4だった。おお神よ! クリフハンガーだ! だが恐るなかれ、「1」2つをヒットに置き換えれば恐ろしい運命からは逃れられる。例えそれが、キャラクターの意識を繋ぐ最後の1マスだったとしても……。

「グリッチの際の1の数が少なくなる」(グレムリンのような)資質や効果はそのまま適用されます。レーティング1の「グレムリン」でダイスを2個振り、片方が1だった場合は(もう片方も1でない限り、1の目を置き換えられないので)クリフハンガーになります。
 炸裂弾やモノフィラメント・ウィップ等、グリッチやクリティカル・グリッチで起きる効果は、クリフハンガーの際にも適用されます。グリッチとクリティカル・グリッチで異なる効果が指定されている場合、クリティカル・グリッチが優先されます。ヒットの有無は考慮しません。

(追記)
「Did You Just Call Me Dumb?」(Run Faster)など通常のグリッチをクリティカル・グリッチにする効果は、1の目が過半数だった際に置き換えができず、常にクリフハンガーになる効果となります。

(3). 防御的なテストの特例(こっちが本命)

「防御テスト」や「ダメージ抵抗テスト」では、1マスの身体ダメージを受ける代わりに、手に持っているか、身につけているか、またはテストに使用した装備を「消耗する」ことを選択できます。これにはマトリックス動作に対する防御テストや呪文などへの抵抗テストを含みます。

(追記)
〈忍び歩き〉テストと〈知覚〉テストなど、防御的かどうか不明なテストでも装備を消耗させることができますが、この場合「テストに使用した装備」に限られます。つまり、〈忍び歩き〉であればルテニウム・ポリマー・コーティングなどの自分に有利な修正か、相手に不利な修正を与える装備が該当します。装備を消耗しても当該のテストには影響しません。しかし状況によっては、装備を消耗した結果見つかってしまうなどの不利益を受ける可能性があります。


(4). 装備の消耗と喪失

 消耗する装備は、そのテストのダイスプールやリミットに有利な影響を与える装備、直接手で保持している装備、防具として身につけている装備、活性化している収束具のいずれかでなければなりません。GMは、なぜその装備が代わりにダメージを受けるのか説明がつかない場合にはダメージを肩代わりできないとしても構いません。

 装備の消耗状態は、装備の種別によって以下のレーティングを減少させることで表します。レーティングが0になった場合、その装備は故障し、修理するまで使用不能になります。複数の種別を持つ(武器収束具や盾など)装備は、いずれか1つのタイプとして消耗されます。例えばカタナを武器収束具にしていた場合、カタナとしての【精度】か武器収束具の【フォース】のどちらか一方でしか消耗させられません(通常は【精度】を選ぶでしょう)。一度消耗させるレーティングを選んだら、完全に修理するまでは変更できません(バリスティック・シールドの【精度】と装甲値修正をバランス良く消耗すると言うわけにはいきません。残念でしたね)。該当するレーティングは0になるまで下げられますが、マイナスにはできません。ひとつのテストで消耗させられる装備はひとつだけですが、身体ダメージとは自由に振り分けられます。

 クリフハンガーで喪失する装備もこれらの装備の中から(その目を振ったプレイヤーが)選択します。「喪失」とは基本的には選んだレーティングが0になり、修理するまで使用できない状態を表しますが、文字通り永遠にキャラクターの手から喪われる場合もあります。GMは、走行するヴィークルの上や断崖絶壁などキャラクターが不安定な場所にいる場合、該当するレーティングを0にする代わりにキャラクターの手から離れてしまうとしても構いません。もし必要があれば離れる距離を1d6メートルとし、着弾誤差表を用いて方向を決めます。

武器:【精度】(身体リミットから【精度】を算出する武器を除く)
防具:装甲値/装甲値修正
収束具:【フォース】
その他の装備:ダイスプールまたはリミットに与える修正値

 消耗した装備は、1時間の修理によって適切な整備技能で(ヒット数分まで)修理できます。まだ故障していない(レーティングが0になっていない)なら、修理費用はかかりません。故障している場合、喪われたレーティング×本体価格の3%の修理費用がかかります。収束具の場合、何もしなくても1時間に1点ずつ【フォース】が復活します。【フォース】が0になった場合、不活性状態となり、1日の間は【フォース】も復活しません。

(5). 補足事項

VR状態:あなたがVR状態の場合、身体ダメージを受ける代わりに、あなたがオーナーであり、あなたのペルソナを実行している機器またはあなたがジャンプ・インしているヴィークルにダメージを肩代わりしてもらうことができます。これはマトリックス・ダメージとなり、これによる生体信号フィードバックは発生しません(ダンプショックが発生することはあり得ます)。このようにして受けたダメージの回復には、消耗した装備と同じく1時間が必要です。

アストラル投射:あなたがアストラル投射中の場合、あなたの肉体がどんな装備をしていようと、消耗できるのはあなたが活性化した収束具だけです。

ドレイン抵抗テスト:ドレイン抵抗テストで消耗できるのは活性化中の収束具だけです。

精霊/ミニオン/ヴィークル/ドローン/エージェント:キャラクターの命令で動く自律的な存在は、命令されても無理をしません。たとえその結果自分が死ぬと分かっていてもです。クリフハンガーの場合は代わりに3点の身体ダメージを受けます。

ダメージの回復:無理をした、またはクリフハンガーの結果として受けたダメージには抵抗できず、血小板工場などでも減少できません。回復は自然回復のみ可能で、応急処置や《治癒》《再生》《Transmit Damage》《Noble Sacrifice》などの回復したり移し替えたりする効果はすべて無効です。

マイナスの修正値:相手に不利な修正を与える装備を消耗しても構いません。この場合はレーティングを「ゼロに近づけるように」変更します。

防具の改造:断熱や絶縁などの防具改造効果は、その改造が適用されるような攻撃を受けた際にのみ消耗できます。これらのレーティングは防具とは別の装備として扱います。0になった場合はその機能のみが失われ、本体の装甲値や他の改造には影響しません。しかし防具本体の装甲値または装甲値修正が0になった場合、防具の改造の効果も失われます(ポケットの中のものやホルスターに収めた武器などは無事です)。GMが認めるなら、容量値を消費して搭載した全方位ジャマーなどのツール類は防具から取り外して再利用できるとしても良いでしょう。

複数のモードを持つ武器:銃剣つきのアサルトライフルなど、ひとつの武器が複数のデータを持つ場合、その内のひとつを選んで【精度】を消耗させます。これは全体でひとつの装備と見なし、消耗するレーティングを振り分けたりはできません。

身体強化:残念ですが、ゲーム上の煩雑さ(特にサイバーリム)を防ぐため、キャラクターに埋め込まれた身体強化やその他のドラッグ、呪文、パワーなどによる強化は消耗できません。ただし、埋め込み式の武器は準備している状態ならば消耗可能です。またGMは、クリッターが生来持つ装甲や武器のうち身体リミットを用いないものは消耗可能だとしても構いません。

ヒットの購入:ヒットを購入した場合は「1」の目は発生しないため、無理はできません。

NPC:NPCが無理をするかどうかはGMが決定する事項です。しかし、グラントは無理をしないことをお勧めします。またコンタクトやPCに雇われたNPCは原則として(PCの要請によるテストでは)無理をしません。

(6). オプション・ルール

いつでも装備を消耗可能:防御的なテストの特例をすべてのテストに適用します。

もっと無理をする:「1」の目2つではなく1つを1ヒットに置き換えられます。

消耗状態:消耗した装備はレーティングを1点ずつ減少するのではなく、単に半分(切上)にします。元々レーティングが1の装備は1回の消耗で故障した扱いになります。それ以外の装備は2回まで消耗させることができ、2回目の消耗では故障(レーティングが0まで落ちた扱い)になります。

キー・アイテム:GMは、シナリオ上重要なアイテムや高価な略奪品を消耗可能な装備として設定できます。GMはキー・アイテムが他の装備よりも優先的に消耗させられることにしても構いません。また、消耗する代わりにキャラクターの手から離れるとしても構いません。

身体強化の消耗:煩雑さを畏れないプレイグループなら、キャラクターの体内に埋め込まれたサイバーウェアを消耗可能だとしても良いでしょう。サイバーリムの場合、その強化(筋力強化、敏捷力強化、装甲値)のいずれかを選んで消耗できますが、リムが故障した場合、そのリムを使用するすべての行動に-3のダイスプール修正を受けます。複数のリムが故障した場合この修正は累積します。反応力強化など、キャラクターの能力値を変更するサイバーウェアが消耗した場合、そのレーティング分能力値への強化も減少します。【イニシアティブ】などの各種数値への変更を忘れないようにしてください。消耗したサイバーウェアの修理には〈サイバー技術〉の技能かImplant Medic(Chrome Flesh)が必要です。

問題のあるウェア:GMは、プレイヤーが「無理をした」結果として、ダメージを受けたり装備を消耗する代わりに元々問題のある装備や身体強化が故障することにしても構いません。これはOmegaグレードの身体強化(Chrome Flesh)や、リファビッシュ品のPI-Tacシステムなどが該当します。

回復可能:無理をしたダメージは通常のルールに従って回復可能とします。血小板工場や《Noble Sacrifice》など受けるダメージを直接減少させたり移し替えたりする効果は無効ですが、ダメージを受けた後での《再生》や《Transmit Damage》、《Empathic Healing》などによる回復や移し替えは可能になります。

03 ゲーム・バランスへの影響

 このルールは従来のグリッチ・ルールを置き換え、プレイヤーにとって損害を受け入れつつテスト自体は成功する選択肢を与えます。
 このルールを適用したヒットの期待値はDP×0.4少々になり、エッジ・ポイントによるダイスの追加をした際に近い効果があります。しかし実際の運用上、プレイヤーは自分のキャラクターが負傷修正を受けない程度の範囲でダメージを受けようとするため、セッションを通じてプレイヤーがこのルールから受ける利得は(防御テストを除くと)エッジ2~3点の範囲に収まります。
 総じて、このルールは全PCの【エッジ】を底上げするに等しい効果があり、PC全体の強化、および生存性の向上に寄与するとともに、【エッジ】能力値の差やキャラクターの職能――特にゲーム序盤から中盤にかけて、エッジ・ポイントを消費させられるハッカーや偵察系キャラクターなど――による格差を是正する効果があると期待されます。

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