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ダイスプールと防御ペナルティの素敵な関係/『シャドウラン 5th Edition』コラム13


01 前口上

 この記事は新紀元社から発売されている『シャドウラン 5th Edition』日本語版ユーザーに向けた言い訳です。
 記事の閲覧・利用に関する前置きは下の記事を参照してください。

02 ダイスプールと防御ペナルティの素敵な関係


 当初の予定では新東京セッティング向けのバランス調整ルールの掲載が先だったのですが、タイムリーなポストがXであったのでざっくり解説を。


 武器の【精度】の話とも関係するのですが、『シャドウラン 5th Edition』に元々存在する「ダイスプールが全体的に大きすぎる」問題を解決しようとした時に、『ガンドッグ』でいう「高度な技」(自分の判定にペナルティを与える代わりに、達成値を上昇させる)みたいなルールでなんとかならんかと模索したことがあります。
 結論としては、この試みは上手く行きませんでした。ダイスプールと防御ペナルティの間に素敵な関係は生まれなかったのです。

 ルールの仕組みとしては、こう言うものです。

「対抗テストの時、自分のテストに-xの修正を与えるごとに、対抗側のテストにも-yの修正を与える」

 これによって、攻撃側は自分の(【精度】で頭打ちされるせいで余る)ダイスプールを減らす代わりに、相手に防御ペナルティを与えることができる訳です。問題は、このxとyをどういう比率で設定するかでした。
 当然のことですが、1:1以下だと攻撃側が純粋に有利になります。2:1以上だと攻撃側のメリットが低すぎて特殊なケースでしか使われません。3:2から4:3の微妙なところにスイートスポットがあるように見られました。しかしながら、「戦闘中に割り算を含む期待値計算を強いられる」のはどう考えてもやり過ぎです。

 かつて筆者は『真・女神転生TRPG覚醒篇』で「1~100の判定値について、予めクリティカル期待値を含めた相手の回避判定値との最適化を計算したチャートを作り、そのチャートを暗記して自分のペナルティを決めていた」ということがありましたが、今思えば若気の至りでした

 計算を単純化するために、「双方のダイスプールを半分にする」「ダイスプールの合計が10以上の時にその増えた分を減らしてペナルティとする(14DPなら振るのは最大10個で、代わりに相手に-4ペナ)」というようなプランも検討したのですが、結局のところ「そこにメリットがあるのかどうかを判断するには、エッジ・ポイントの使用を含めてゲーム中に複雑な計算を強いられる」という点でゲーム体験を損なうものと見なされました。

(実際のところ、このプランが放棄された真の理由は「〈召喚〉技能で悪用されるから」だったのですが、そこは言わぬが花でしょう)

 一般論として、プレーヤーは自分の行動が邪魔されることを好みません。相手の防御にペナルティを与えるルールが存在する場合、可能な限り大きなペナルティを与えるためにあらゆる努力をします。そしてそれ以外の行動を取らなくなります。
 ゲームを提供する側としては「(それが余計なお世話と言われる場合もあることは重々承知の上で)状況に応じて行動を選択してほしい」のであって、単独の行動のために尖ったビルドをことさらに優遇したい訳ではないのです。

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