FavariteLife(1)

人生を片付けた。部屋はまだない。自由に生きたつけが廻ってきたのだ。
僕に不自由はない。仕事はある。歴史の上に僕は立っている。あの変化で未来が閉ざされた。
夢はもう追わない。現実感のある世界がある。このまま突き進む。

彼女が暮らす部屋にきた。次の仕事が見つかるまでここに住めと言われている。仕方なく僕は床に座った。思いのままテレビを付ける。お笑いタレントが有名な美人と一緒にわいわいお茶の間をにぎわしている。
普段からこの番組は見ないけれど、なかなか面白い話題だ。「あなたの夢は何ですか?」と街行く通行人に問うている。馬鹿けた芸のタレントが言った。「こんな夢叶うわけないっしょ!?ねえみんな、どう思う?」著名人に名を連ねる霧山先生が答えた。「どんな夢だろうと持つ夢はひとしく価値があります。どうしたら夢が叶うか、皆さんで考えてみませんか」
チキショー。なんていう番組だ。勢い余って床に置いていたチャンネル変換機に手をやったが、思いがけず彼女が帰ってきたのでそ知らぬ振りをしてチャンネルを続けた。
「なんなの、この雑誌。競馬に車にYAKUZAな新書。みんな私のお小遣いから出ているんじゃない!少しは節約してよね、まったく」彼女が苛苛して夕御飯を作り始めた。当てつけてるのかと思ったが少し違う。芸能週刊誌を買うあのアラサーOLは僕の趣味が許せないのだろうと思う。
「悪かったよ。近頃無駄遣い多いのわかるし、なにかと罪悪感ある。オレのポケットマネーから何か買ってやるから、こればっかりは許して」
そういってオレは先生の本に手をやった。
琴山壱五郎写真作品集。表紙には先生の顔と自由人実業家として名を馳せる山崎晴紀の決めポーズが写っている。
「いつまで足掻いてるんだか。まあとにかく、ご飯にしよっか」
そういって茶髪の彼女は食卓に箸を置いた。

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