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カクシンハン・プロデュース2023『シン・タイタス REBORN』

シェイクスピアの原作に新らしい視点を加えて展開する芝居。
木下歌舞伎とか、万葉集を令和言葉奈良弁で訳した「愛するよりも愛されたい」とか、古典を優れた解釈で読み解き表現してくれるものは大好きなのだけれど、この作品は本当におもしろかった。
劇場ではなく、あえて倉庫という場所を選んでくれたのはものすごく嬉しくて、ひとりひとりが実に魅力的な演者を肌で感じられる距離は、自分が否が応でもその世界に食い込まれていくのを感じる。カクシンハンのコンセプト「演劇から得られるそのすべては、 誰しもが持つ希望を叶える力になる〜そしてそれは、 みんなが主人公になれる世界へとつながる大きな物語をつくるのでは」にまんまとハマってしまった。

先日、立て続けに「スリルミー」「アナスタシア」を見たばかりで、もちろんミュージカルとの違いはあるけれど、この作品における平本正宏さんの音楽は圧巻で、芝居と音楽の関わり方を改めて考えさせられた。
最近クラシックの作品を演奏することがやたらと増えて、その度に何百年もの間、その存在を知らしめてきた古典の持つ可能性を改めて考えさせられる。
谷戸基岩さんプロデュースの「風の時代のクラシック音楽〜音楽史を神棚から降ろして」にもたくさんのヒントが隠されていた。
音楽の場合には新たな解釈とかアヴァンギャルドなアレンジをしなくとも普通に演奏しても十分わかりやすいし魅力的ではあるだけに、その距離をどんな形で今の自分たちに近づけるか、そしてどう送り出すべきなのか…。

谷戸基岩プロデュース「風の時代のクラシック音楽〜音楽史を神棚から降ろして」フライヤー

この作品を知ったのは、エアジンで落語と音楽のユニット「I she 遊」のライブをご一緒している三遊亭遊かりさんが出演されているからなのだけれど、もし知らないまま見逃していたらと思うとゾッとしてしまう。
どんな時代であっても当事者にとってはきっと混迷の渦の中にいたのかもしれない、その中で生きてきたということ、これからも生きていくということ。『シン・タイタス REBORN』は人間がいかに生きるべきかを考えさせてくれた。
そもそも、なんとなくメメントモリに引っ張られて作曲する傾向にあるのだけれど、これからは、危険をはらみながらも素敵だったり、楽しく美しく、未来に向かってみるのもありなのだな。

カクシンハン・プロデュース2023
『シン・タイタン REBORN』

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