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勝又

もう解散してしまいましたが兄弟コンビ勝又のナンセンスやペーソスやシュールを煮詰めて天日干しにしてさらにそれを砕いて粉末状にしたかのような種類の笑いは他に類を見ない面白さと完成度でした。


感覚にのみ訴えかけてくるようなニュアンスや雰囲気そのものを構造や設定の土台に組み込んでそれに対しての説明をほとんどせず極めてシンプルなデザインのみで構築するようなコントの数々は美しさすらありました。スタイルやテーマ自体へのブランディングにもあまり手を付けていなかったように感じます。面白さそのものを追求するタイプのネタでありながら、ネタそのものも面白さの追及のみで組み立てられていてその核心部分を剥き出しのまま洗練させるというかなりストイックなやり方だったのではないでしょうか。

だからこそ到達していた領域があり勝又のコントはテレビのネタ番組の中にしてはかなり言語感覚の解体を成功させた上で客前で成立させるというけっこう難しい事を何度も成し遂げていたと思います。このテイストの笑いは単独ライブ的な場所や初期のオンエアバトルがまだ深夜の若手芸人のライブシーンを再現するという文脈を持ち合わせていた中でラーメンズやバカリズムが求心力を生みながら行っていたり、もしくは分かりやすさやキャッチーさを求められるがままにワンフレーズギャグ化、ショートコントのブリッジ化が介入し一発屋っぽいシステムを取り入れがちな傾向にあるように感じます(それを上手く利用した上で使い分けたのがオリラジや永野だとも思います)が勝又はそのどちらでもなくカルトとポップのバランスを高い次元で維持していました。


そのセンシティブさを表現するリズム的なものや語感的なものや身体性に関しては兄弟ならではのあうんの呼吸がそこにはあり、勝又aniさんが以前組んでいたマチコというコンビでも同じような内容の追求をしていましたが、テンポやフィーリングに関しては勝又のコンビ芸の方がパッケージングはされていたと感じます(マチコはマチコでその異様性がより強く出ていたところも好きだったのですが)。

弟さんの間合いというかaniさんに対しての距離感やボケ方のタイミングが非常にちょうど良く、またaniさんも自分に注目度が上がった時の寝技への持ち込み方、声や表情のなんとも言えない面白さとしてのシズル感のようなものへ引き込む手腕がありその役割分担は鮮やかだったのを覚えています。

今はそのフォーメーションと近い形ではダーリンハニーの長嶋さんとのYouTubeチャンネルでのトークがそれを彷彿とさせていると感じます。ボケツッコミ的なものが分かりやすく緩やかで聞き心地の良いお喋りをしています。

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